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第4話 アルフの街

 そのあとは女剣士さん(ミーナと言うらしい)と自己紹介を交えつつ世間話をしながらアルフの街を目指した。


「冒険者って誰でもなれるものなのか?」


「あぁ、登録料の1000ゴールドさえ払えば15歳以上であれば誰でも冒険者ギルドに登録することができる」


 お金かかるのかぁ……。1000ゴールドが高いのか安いのかも分からん。ちなみにミーナは今20歳で、15の時から冒険者をやっているらしい。


「まさか金も無いとは言わんよな?」


「そのまさかね」


「お前……それでどうやって生活するつもりだったんだ?」


 それは天使さんに言ってくれ。俺を無一文で放り出した、責任はアレにある。


「物々交換でなんとかなるかと思っていた」


「ぶふっ!! お前、物々交換て! 田舎者にもほどがあるだろ!」


 思いっきり笑われた。というか田舎者じゃないんだが?(2回目) まぁ警戒されているうちは見れなかった表情が見られたと思えば溜飲が下がる。


「あと最悪このジャケットとか売ればいいかなって」


「ジャケット……? たしかに素材は上質なものに見えるな……綿や絹ではない。モンスターの素材というわけでもなさそうな……」


 そう、合成樹脂ポリエステル様だ。さらに撥水性もあって急な雨に降られても濡れにくい。


「なるほど。これなら数日分の生活費くらいにはなりそうだな。しかしこんな上等なものを身につけているくせに金が無いとは……」


 そんなに金が無い金が無いって連呼されるとまるで俺の甲斐性がないみたいじゃないか。というかもうこの際だからミーナになんでも聞こう。


「モンスターの素材もお金になるのか?」


「当然だ。というか、それが冒険者の収益源だからな」


「じゃあこれってお金になる?」


 俺は先ほど倒したホーンラビットの角を見せる。弱いモンスターだからそこまでのお金にはならないだろうが、1回の食費くらいになってくれれば上等だ。


「ホーンラビットの角か。ホーンラビットの角は2000ゴールドくらいだったはずだが、よく手に入ったな。ホーンラビットは過剰な攻撃で倒すと角は粉々に砕け散ってしまうんだ」


 おお、これならギルドに登録しても更にお釣りがくる。ホーンラビット様々だ。


「まぁ、ホーンラビットのあの速度に対応できるようになれば角の取得自体は簡単だがな。そこまで出現頻度の高いモンスターではないからこの価格だ。そしてあれは肉も美味い。駆け出しの冒険者なんかはホーンラビット目当てに狩りをするんだ」


 ウサギだもんなぁ。獣肉が忌避されていた時代にそれでも食べたいからウサギは鳥って扱いにして1羽2羽で数えるようにしたくらいだもんなぁ。肉まで持って帰るのが正解だったか、ファッキンホーンラビット! 


「じゃあウルフは?」


「ウルフ? あれは不味いから金にならん。素材も大したものじゃないし、依頼でも受けていなきゃ倒しても旨味がない。ハズレモンスターだ」


 なんか散々な言われようだな。ウルフの皮は剥ぎ取らないで正解だったな。とりあえずホーンラビットが金になることは分かった。しかし出現頻度が低いとなると安定して稼げるか確実性が担保できない。


「ウルフやスライムのようなモンスターの討伐依頼はギルドが常設してくれている。期限も定められていないし、街から出る時は常に受注しておくといい。ウルフは5体で200ゴールド、スライムは10匹で100ゴールドだ。少ないが1食分くらいにはなる」


 うわ、ホーンラビットとは雲泥の差だな。となるとホーンラビットは見つけたら時間をかけてでも捕まえた方が良いかもしれない。


「街が見えてきたぞ」


「おお」


 とりあえずリアクションはしたけど全然ぼやけていて見えない。視力1.0の弊害が出た。


「どうりで人の往来が激しくなってきたと思ったよ」


「こういう街の近くならともかく、街から離れると野盗だって出るからな。腕に覚えがないなら1人で出歩くのはやめた方がいい」


 1人で出歩いていたのはお互い様だとは思うが、きっとミーナは腕に自信があるということなんだろう。ミーナは他の冒険者らしき人とすれ違う度に「よっ」と挨拶されている。


「顔が広いんだな」


「まぁこんなことを長いことやっているとな」


 そうこう言っているうちにアルフの街についた。街全体が高さ3メートルくらいのレンガ? の壁に囲まれている。そしてここはアルフの街の北の門で、この門を抜けた草原地帯一帯、つまりさっきまで俺がいたところを北の草原というらしい。そのままだな。


「ギルドまで案内してもらって助かったよ」


「なに、私もついでだ」


 北の門から歩いて10分、冒険者ギルドに到着した。あとは受付で登録をするだけなのでミーナとはここでお別れだ。


「何かお礼をしたいんだが……」


「ははっ、無一文なのは分かってるさ。それよりも今は自分の生活の心配したらどうだ?」


 聖人か? しかし俺も男だ。施された恩は何が何でも返す。たとえ今は無理だとしても、1年、いや半年後はどうなっているかわからない。


「すまん。いつか恩返しさせてくれ」


「あぁ、期待しないで待っておくよ」


 言ったな? 多分ミーナはこれで終わりだと思っているんだろうけど俺は忘れるつもりはない。

 この世界で初めて会ったのがミーナで良かった。おかげで目標が出来たよ。

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