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第37話 正義のヒーロー……?

 トワが国家反逆罪で処刑される。なんでもその報は一昨日発表されたらしい。貴族のためでなく庶民のための市政を常に考えるトワは市民からの信望が厚い、そんなトワの国家反逆という罪状に一部で暴動が起きたというのが今の王都の物々しさの原因となっているそうだ。


「それで、処刑の日時は?」


「明日の正午です」


「うわ〜、仮にも王族だっていうのに日取りが早過ぎじゃない?」


 たしかに、死刑判決が出たにしても数日で死刑執行はやり過ぎだろう。人権意識の低いこの世界で死刑執行が迅速なのは分からないでもない。死刑囚を生かし続けるのにも金が必要だからな。にしても3日は早過ぎる。


「おっしゃる通りです。これはトワイライト様の兄である王子達による陰謀だそうですから」


「ふむ……政権争いに巻き込まれたということか……」


 政権争いねぇ……あれ、でもトワは王位継承権は放棄していたはずだよな?


「トワイライト様を味方に引き込めば中立派も一気に傾きますからね。つい先日までは第一王子と第二王子の御二方ともなんとしても自分の閥にと画策していたみたいですが……相手方に取り込まれるのを恐れたということだそうです」


「えらく詳しいな」


「貴族も一枚岩ではないということです。トワイライト様を支持している中立派の方々が情報を流してくれるんですよ」


 初めはトワが国家の転覆を目論んでいたという情報しかなかったため、裏切られたと落胆する者や憤る者が現れたそうだが、この中立派の情報によって矛先は王子達に向くことになり、それが暴動に繋がったみたいだ。中立派の動きというのも気になるところではある。


「公開処刑が広場で行われます。暴動が起きる可能性もあるみたいなので、明日は広場には近付かないことをお勧めします」


「ありがとう。さて、どうしたものかなぁ」


 って、そうは言ってもやることは決まっているか。たった1日の付き合いだったとはいえ、トワみたいな頑張っている子が理不尽に殺されるなんてそんなのは間違っている。


 リルルちゃんが出て行ってから行動方針を話す。とりあえず俺はトワを助けにいくが、それに2人を巻き込むわけにはいかないだろう。


「明日はみんな自由行動にしよう。休憩してても良いしレベル上げをしてもいいし」


 そんなヘマをすることはないだろうが、場合によっては王都から脱出する必要があるな。非常時の連絡方法とか、行動マニュアルとかそのうち必要かもしれん。


「ふむ……つまりお前は第三王女を助けに行くのか?」


「なら、荷物持ってどこかの街に先行しときますか。逃走経路の確保は君には必要ないよね〜?」


 何でこう言っただけで俺がトワのこと助けに行くって分かるのだろうか。


「理解のある仲間に恵まれて幸せだ。じゃあ転職したら先に近くの街まで馬車で向かってくれ。俺は追手を巻きつつ向かう」


「はいはーい。レベル上げしながら待ってるよ〜」


「……」


 フィーからは返事を貰えたが、ミーナの反応は鈍い。正義感の強いミーナが渋るとは思わなかった。


「あれ? ミーナは反対なの?」


「ん? あぁすまない。少し考え事をしていた。第三王女を助けることには賛成なんだが、救出劇を特等席で鑑賞できないのが残念だと思ってな。一国の姫を救い出す伝説の瞬間をこの目で見たいと思うのは当たり前だろう?」


 違ったわ。何が伝説の瞬間だ、もしかしてミーナの中では大好きな英雄譚がフラッシュバックしてるのか? お前作り話は最後に愛が勝つかも知らないけど現実は全てがハッピーエンドになるとは限らないんだぞこの脳みそハッピー女。


「ミーナは相変わらず好きだねぇ〜」


「ほっとけ! 別にいいだろそういうのが好きでも」


「まぁテンマ君がリアル正義のヒーローだってのは否定しないけどね〜。そりゃミーナもお熱になっちゃいますわな〜」


「なっ! それを言うならフィーもだろう!? 毎度毎度抜け駆けして、しかも抜け駆けしたと思ったらすぐ返り討ちにあって気持ち良さそうに喘いでるあれは何だ!? そういう性癖か!?」


「う、ううう、うっさい! すぐ負けるのはミーナも一緒でしょうが!?」


 なんて酷い口喧嘩だ。リルルちゃんが出て行った後で良かった。こんなん聞かせたら出禁になってしまうかもしれない。そういえばこの宿でお楽しみはしていいのだろうか? 若い男女を同じ部屋で寝泊まりするのを認めている辺り大丈夫っぽいが。よし、これから別行動になるしその前に2人を可愛がっておこうかな。


「なら今日はお前ら同時にかかって来い」


「「え!?」」


 この後、2人をダブルノックアウトした。俺は正義のヒーローよりも性技のヒーローの方が向いているかもしれない。

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