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第35話 3人で

「嘘でしょ……」


「本当に1人で倒してしまうとは……」


とりあえず2人には終わるまで端の方で見ててと言っておいたのだが、討伐が終わったというのに何故かぼーっと呆けた顔をして突っ立っている。


「61階層もこのスタイルで行けたからな。マンティコアくらいなら余裕だ」


「あぁ……もしかしてとは思っていたが61階層もお前だったのか……」


「なんていうかもうめちゃくちゃだよね。本当に人間……?」


酷い言い草だけど確かに今の俺はモンスターに金を投げつける妖怪のほうが近いかもしれない。


「他人事みたいに言ってるところ悪いけど、ミーナにも出来るようになってもらうからな?」


というか、最上級職への転職条件がマンティコアをソロで狩ることだからな。つまりこの世界のシステム的にはマンティコアをソロで狩るのは通過点ということになる。


「わ、わたしにも出来るのか?」


「そんなに難しいことじゃないからな。フィーはどうする? まさかミーナを見捨てたりしないよな?」


「うっ……。はぁ、分かったわよ。やります。やらせていただきます」


よし、じゃあ俺はその間に魔法を試そうかな。



バトルマスターに転職するには、『剣士』『戦士』『武闘家』をレベル30にしなければならない。剣士が終わっているミーナを武闘家に、フィーは上記の3つは手付かずなので攻撃ボーナスが貰える剣士から始めさせることにした。


「うわっ! 素早さガタ落ちじゃん!」


「私も攻撃がかなり不安だな……。これで戦えるのか」


まぁ上級職から基本職に転職したらそうなるだろうな。でもスライム狩りにステータスは必要ないから。あとは『剛体』を使えるようになっておくと便利だからスライムリングが取れればいいな。


「ハードスライムなら倒したぞ?」


「え? マジ?」


「お前に教えてもらってから数日探して見つけたんだ。あれは確かに世界が変わるな」

 

数日探したって、俺みたいな怪しい男の言葉を妄言と取らずに探したのか? 1日2日やって遭遇できなかったら嘘と思って諦めるだろ。俺の言うことを無条件で信じてくれたのは嬉しいけど悪い話に騙されそうで心配になる。


「ミーナが数日会わない間にめちゃくちゃ強くなっててビックリしたけど……そっかー、それが理由だったのか〜」


「まぁその強さは分かって貰えただろう。とりあえず1週間でレベル30にしつつ、ついでにスライムリングをフィーの分も狙っていこう」


パーティプレイになってもスライム狩りがやめられないんだな。そんなわけでディメンジョンにはもう用はない。またお金が少なくなったら来るとしよう。


「分かった。それで拠点はどうするんだ? ディメンジョンから離れるとなるとやはり王都か?」


「いや、王都は街の構造上狩りに行くまで時間がかかるからな。王都の近くの村でいい感じの場所があればいいな」


「じゃあとりあえず王都の方面に向かう馬車に乗るのが良さそうだね〜」



フィーが言ったように王都に向かう馬車に乗ったわけだが、馬車での移動はどうしても他の人と相乗りになる。特に冒険者の稼ぎ場でもあるディメンジョンは冒険者の出入りが激しい。自然と馬車を利用する冒険者は多くなる。するとどうなるか……。


「ねえ彼女、そんな男より俺たちとパーティ組もうよ」

「俺たちCランクだから、結構ベテランよ。わかんない事とか何でも教えてあげてるよ」

「もちろんそっちの子も一緒にね」


こうなるんだよなぁ。こいつら俺のミーナに気安く話しかけやがってと思っていたけど、隣でミーナが青筋立てているのを見て何故か俺の怒りは収まった。自分よりも怒っている人を見ると自分の熱が引くあの現象だ。


「仮にも冒険者を名乗るなら、彼我の実力差くらいは分かるようになれ」


「だね〜。あんまり人を舐めてると痛い目見るよ〜? まぁ君たちみたいなのは一度痛い目みないと分かんないか」


「お前らそう熱くなるなよ。俺も手を出されるまでは抑えてるんだから」


Cランク冒険者というだけでだいたいステータスは把握できる。今の俺だとつい本気でやったら下手をすると殺してしまうだろう。今や俺とそこら辺の冒険者ではそのくらいのステータス差がある。


「すまない。お前のことを馬鹿にされたと思うとついな」


「俺のことで怒ってくれるのは嬉しいけど、もっと建設的なことに頭を使おうか。こんな奴らに構ったところで何にもならないし」


「ご主人様がそう言うのなら従おう」


急にご主人様とか言われるとドキッとするからやめてくれませんかねぇ。


「ねぇご主人様〜こっち向いて〜」


いや、お前は違うだろ……っておい……。


「あっ! おいフィー、ずるいぞ!」


ミーナが声を上げたのはフィーが俺にキスしてきたからだ。しかも舌を絡めたディープなやつで。


「ふふっ、悪いけど私たちラブラブなのよね〜」


口元のよだれを拭いながら妖艶な笑みを浮かべている。くそ、ミーナはともかくフィーにドキッとさせられるなんて屈辱だ。だぁぁぁ! 腕を絡めるな小悪魔。何が目的だお前。


「見せつけてくれるねぇ……!」

「俺キレちまったよ」

「特に理由は無いがこのガキに教育したくなってきたなぁ! 特に理由は無いが!」


ほらみたことか火に油注いだだけじゃねぇか! 仕方ない。このままでは他の乗客の迷惑になるしここで降りるか。


先にミーナとフィーは走行中の馬車から降りてもらった。普通に飛び出して行くもんだからナンパしてきた男たちはポカンと口を開けていた。


さて、降りるにしても運賃は払わないとな。無賃乗車になってしまう。なので俺は降りる前に御者に挨拶に行った。


「うぉぉい! お客さん! 天幕に乗ったら危ねぇぜ!」


「あー、すまん。俺たちはここで降りるから、お代はこれで頼む。釣りはいらない」


とりあえず3倍くらい払えばいいだろう。運賃を払って俺も馬車を飛び降りた。


「フィー」


「あはは〜、ごめんね〜」


「まぁいいんだけどさぁ」


悔しいけどめちゃくちゃ興奮したし。あとミーナ。お前ずるいぞって言ってなかったか? 聞き逃してないからな。


「とりあえず出会ったモンスターを狩りつつ近くの村に向かうか」


「おー!」



道中では特に危険なこともなく日が暮れる前には街に着いた。とりあえずギルドで浴槽付きの宿を教えてもらってその宿を借りる。なんでも街で1番ランクの高い宿だそうだ。


「3部屋空いてるか?」


「ん? 2部屋でいいだろう?」


あぁそうか。ミーナとフィーは別に一緒でもいいか。

そして隣同士の部屋を二つ借りると俺とミーナ、フィーで別れた。あれ? 想像と違う分け方だ。


「私はお前の奴隷だからな」


まぁ俺はどっちでも良かったけど。いや嘘だ、こっちに来る方が嬉しい。


「とりあえず一緒に風呂入るか」


「あぁ……」


うーん、俺はこんな幸せすぎていいのだろうか。好きに生きるって最高だな。


風呂場でイチャイチャを楽しんだ後、オーソドックスにベッドで楽しんでいると、部屋をドンドンとノックされる。ノックはフィーのもので、扉の外からミーナ! と声が聞こえてくる。お互い裸なので服を着ないといけないのだが、恐ろしいことに30秒くらいしたら勝手に鍵が開いた。お前これ魔法錠だぞ!?


「マスターシーフの本気の解錠を甘くみないで欲しいねぇ」


解錠はいいけど情事の真っ最中に乱入してくるなんて無法が過ぎるだろ。お前何しに来たんだよ。そう思ったらなんかフィーも脱ぎ始めたんだけど。え? 何してんのこの人。


「私も混ぜて」


「フィー!?」


「だって、やってるかなぁって思って壁に耳を当ててみたらミーナの気持ち良さそうな声が聞こえてくるんだもん。そんなに凄いのかなぁって……」


えぇ……、盗み聞きして発情してるよこの人……。すっかり出来上がっているようにも見えた。


「テンマ……」


うん、でも俺にはミーナがいるからダメだ。


「抱いてやれ。王族や貴族は多妻、多側室、多愛妾が普通だ。有力な冒険者でもその制度は認められている」


え!? 止めるんじゃないの!? 何、多妻多側室多愛妾って呪文。万年発情期でもないから普通そんなにいらねぇよ!

偉くなるとエロくなんのか?


ってそんなこと考えてる場合じゃない。い、いいのか? なんかミーナの横で他の女を抱くってすっごく悪いことしてる気分なんだけど。


「ほら、早くおいで。年上のお姉さんの魅力を分からせてあげる」


「テンマ、分からせてやれ」


まぁミーナが良いならいいか。男冥利に尽きるけど、取らなきゃいけない責任が増えていくなぁ……。

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