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第33話 高級ホテルで

 俺たちはディメンジョンの街で一番高いホテルに入る。ミーナを連れているのでなるべくプライバシーを保護してくれる場所を選びたかったからだ。最初ホテルと聞いた時にミーナは顔を赤くして「そ、そういうことがしたいなら私なんかじゃなくもっと綺麗な女性がいるだろう」なんて言っていたがそんなつもりはない。まぁ下心はあるが、それは今日ではない。


「一番良いのを頼む。あと、すぐにつまめるやつも」


 今ミーナに必要なのは食事と休息だ。食事はルームサービスで持ってきて貰うことにした。


「お、おい。本当にこんなところいいのか?」


「そんなこと気にしなくていいからそれより今は栄養を取れ。体重落ちてるだろ」


 死なないように必要最低限のカロリーだけを与えられていただけでまともな食事にありつけなかったのだろう。顔がやつれて健康的でない痩せ方をしている。


「あ、あぁ……」


 俺はコンシェルジュから受け取ったパンをミーナに手渡す。ミーナはそれを一口食べると涙を流し始めた。


「うまい……うまいな……」


 良い大人が泣きながらパンを食べているところをジロジロ見るのは申し訳なかったが、ミーナを助けられたことを強く実感できてなんだか満たされた気がした。



 俺も一緒のメニューの注文をしたのだが、確かに美味かった。こっちに来てから初めて柔らかい肉を食べたかもしれない。俺がよく食べるホーンラビットは確かに美味いんだが、どちらかというと鶏肉のような淡白さがあって牛肉とは違う。畜産業がそこまで栄えていなさそうだからこのレベルの肉はなかなかお目にかかれないと思う。値段相応のクオリティだった。


 豪勢な食事に舌鼓を打ったあとはもう寝るだけだったのだが、二つベッドがあるというのにミーナは俺のベッドに入ってきた。


「すまない。正直まだこれが夢なのか現実なのかが分かっていなくてな……明日目が覚めた時にまたあの檻の中にいるんじゃないかと思うと怖いんだ。だから、夢でも良いからせめて今だけは人の温もりを感じさせてくれ」


 ミーナのやつ相当参っているな……。まぁ夢じゃないんだけどな。まぁ今は何を言っても都合の良い妄想だと思うだけで効果がないか。明日になれば落ち着くだろう。


「抱きしめてくれないか?」


「はいはい」


 弱みにつけこんでいるみたいだ。いや奴隷だからあんなことやこんなことをしてもいいんだけどね。けど、こんな弱った姿を見せられていかがわしい気分になれるほど俺は畜生でないつもりだ。なんなら健康的な前のミーナの方が抱きたい。


「寝たか」


 5分も経たずに規則的な寝息を立て始めた。疲労が溜まっていたんだろうな。質の良い睡眠も取れなかっただろうし当然か。


「俺も寝るか」


 これが夢じゃないとわかったミーナはどんな反応をするのか楽しみで仕方がない。これが充実感ってやつなのだろうか。これまでの人生で感じたことのない感覚だ。


 これは余談だが、この日の朝のミーナの「な、な、な」という声で目が覚めた。



 冷静さを取り戻したミーナと朝食をとりつつ現状を報告する。


「さて、これが現実だと分かったか?」


「う、うむ。昨日は取り乱してすまなかった。つまり私はお前の奴隷になったということだな……」


「悪いな、これ以外の方法が思い付かなかった」


 正確には何パターンか思いついていたが、どれも犯罪が主軸になってしまったので真っ当な手段を選んだ。後ろ暗いところもなく誰にも難癖をつけられないのが結局一番強い。


「文句を言っているわけではないんだ。むしろ大金をはたいてまで私を助けてくれたのが嬉しい。買ってくれたのがお前で良かった」


 まぁゲーチスみたいなやつに買われてたらどうなるか分からないし、むしろこの世界の奴隷の扱いなんてゲーチスの方が一般的なのかもしれないな。そう考えると幾分はマシだろうが、それでも俺が無害というわけではないはずなんだが。


「心底安心しているところ悪いが、俺だって男だからな。俺にもそういう欲求はあるぞ」


 昨日だって一緒のベッドに入ってこられて正直溜まっている。自分が良い女だという自覚がないのだろうか。まぁ別に強要するつもりはないが……。


「し、知っている……今朝もその、男は生理現象でそうなるものだと聞いたことはあったが……あれが固くなっていた……」


「ぶっ……!」


「あぁぁ!!! すまない! わざとではないんだ!」


 まさか朝の元気なところを確認されていたとは……。そういえば先に起きていたな。そういえば朝に「な、な、な」とか言ってたのはこれのせいか、くっそ恥ずかしいな。


「ま、まぁ俺もそういう欲求があるから、別にミーナにとって無害とはいえないってことだ」


「そう言っても私に手を出してこないんだろう? あ、あのな……私に気を使う必要なくてだな。というのも私はお前のことを憎からず思っていてだな……」


 はい? 憎からず思っている? それって好きってことだよな? 誰が、誰を? 


「まぁ、そのなんだ……そういうことをされても良いと言うかなんというか、むしろそれが嬉しいというか」


「待て! ミーナ落ち着け! お前は今凄いカミングアウトをしている!」


「う、うるさい! 仕方がないだろう! 絶望の淵から救い出してくれた英雄をかっこいいと思って何が悪い!」


 英雄て、そういえばミーナって英雄譚好きだったな。というか、なんで俺はキレながら告白されてるんだ?


「わ、分かったなら遠慮せずに私を抱け! それとも、私では欲情しないか?」


「いや……」


 あー! ここまで言われて何もしないなんて無理だ!

 据え膳食わぬは男の恥、覚悟を決めろ俺!


 このあと朝から3回戦までいった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミーナさんの好意と反応がかわいすぎるし、 変にきょどらないテンマもいいよなぁ。。 [一言] まだ途中ですが、ここまで読んでよかったです
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