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第30話 40階層

 ミーナとフィーが2人で攻略したことで一気に有名になったのがこの40階層。Bランク冒険者6人で挑むのが適正とされているこのフロアに俺は1人で挑む。


「ここまでは1時間でこれるな」


 31階層からボス部屋の前までは1時間で到着したのだが、ボス部屋の前に待機しているグループが2つあった。


「うーん、待ち時間があるのは効率が悪いな」


 タイミングによってはこれ以上待つ可能性もあるだろうし、周回向けではないかもしれない。それか皆んなが活動していない深夜に回るかだ。ダンジョンの街ということもあってディメンジョンは24時間稼働している。素材の買取所はもちろんのこと、武器屋、防具屋、雑貨屋、そして食事処までもが24時間営業しているところがある。もちろん同じような考えの人もいるだろうが、まぁ昼よりはマシだろう。


 20分くらい待って俺の番がやってくる。ちなみに攻略を諦めてパーティがボス部屋から出てくることもある。勝てなかったら死ぬみたいな設定だったらダンジョンがこんなに人気なわけがないか。


「おい、今誰かいたか?」

「わかんねぇ、勝手に扉が開いたよな?」


 なぜか俺が扉を開けると後から来ていたグループの人たちが驚いていた。「次でようやく俺たちの番だな」とか言っていたので気付いてないんだろうなということは薄々察していた。流石は隠密レベル3だ。


 40階層のボスは『ライトニングタイガー』という雷を身に纏ったデカいトラだった。帯電して全身の体毛が逆立つというビジュアルからして強者感が溢れ出ている。……ってか、これと戦うの?


 最近薄々と人間卒業したなぁって思ってたけど、ついにこんなのとも戦うのね。


「とりあえずスラッシュ!」


 開幕、まだ気付かれていないうちに不意打ちで斬撃をお見舞いする。ダメージは少しでも稼いでいた方がいい。更にもう一発……。


「スラ……」


「グガアアアアァァァァァァ!!!!!!」


 いこうと思ったところでライトニングタイガー……長いからトラでいいか、トラが大きく吠えた。大気が震えるほどの大きな咆哮と、それに合わせて雷鳴が劈く。


「青い電気……?」


 トラは体中から青い電気を発しながら俺を睨みつける。威圧感ぱねぇ! 俺とトラには数メートル以上距離がある。もう一発スラッシュをお見舞いしようと思った瞬間にトラが動いた。


「ガァァ!」


「まじか!」


 トラがその場でその大きな腕を振るうと、電撃が俺に向かって飛んでくる。遠距離攻撃出来るのかよ。


 まともに食らって25ダメージほど。それほど痛くはないが……。


「素早さが落ちてるな……」


 思うように身体が動かないといういやらしい追加効果が俺を襲った。狡猾にもこのタイミングでトラは飛びかかってくる。


「剛体!」


 中心線を避けつつ念のため剛体を使う。カウンターで連続切りを入れるのを忘れない。


「ギァァア!!!」


 のけぞるくらいには効いているみたいだ。更にこっちは痺れが治った。すかさず追い討ちをかける。


「連続切り!」


「ガアァァァ!!!!!!」


 トラが吠えると電気が鎧のようになって俺の攻撃を防ぐ。しかも、剣を通じて俺の手がまた麻痺させられた。


「クソ!」


 無駄に帯電してしまった剣を手放す。まさか防御までできるとは思わなかった。


「ミーナはよく倒せたな……」


 もしかして剣豪の心眼スキルがあれば防御無視で殴れたのか? そしたらさっきの行動がボーナスタイムになるな。しかし今は無い物ねだりしてもしょうがない。


「仕方ない、奥の手を使うか……」


 あんまりやりたくなかったが仕方がない。これが一番DPS、つまり継続的な火力が出る。


「銭投げ! 銭投げ! 銭投げ! 銭投げ!」


 バトルマスターの超高威力連続銭投げだ。商人の時より400近く攻撃力が上がっている上に、バトルマスターのレベルも9になって『ダメージ+45%』というパッシブがついた。更に会心攻撃が出れば『会心時ダメージ+50%』というもう訳がわからないくらいの威力になっている。


 最初からこうしていればよかったな。10回で倒せて良かった。銭投げは1秒に1回発動出来るので10秒と10万ゴールドで倒せることが判明した。銭投げが強すぎる。


【バトルマスターのレベルが10に上がりました。ダメージ+45%はダメージ+55パーセントになりました】


 あー、もうぶっ壊れちゃってるよこれ。このペースでいったらレベル30でダメージ+480%だよ。夢が広がるな。


「さて、換金に行くか」


 倒したトラはアイテムボックスにギリギリ入った。早速魔法陣から地上に帰って先程行った買取所にいく。担当はさっきの女性のままだった。


「素材の買取を頼む」


「あれ、さっき来た時から2時間も経ってないですけどもうですか?」


 余裕そうな表情をしているなぁ、この顔がどうなるのか楽しみで仕方がない。みさらせ……これが俺の2時間じゃい!


 受付さんの前にライトニングタイガーが鎮座する。うーん、死んでいても威圧感があるなぁ。


「なっ……えっ、えっ?」


 いい反応するなぁ。この反応が見たかったんだよなぁ。


「ただのライトニングタイガーだが、どうかしたか?」


「い、いえ……査定いたします」


 査定の結果、ライトニングタイガーは100万ゴールドだった。


「あ、全部現金でください」


「えっ!?」


 流石に50階層は銭投げをめちゃくちゃ使わないと厳しいだろうから手持ちのお金をたくさん持っておきたい。Aランク冒険者が6人がかりで倒すようなモンスターと考えると相当体力があることが予想される。

 31〜40階層を少周回してバトルマスターのレベルを30にしてから挑むべきかもしれない。

 ダメージが増えた方が消費するお金も少なくて済むしな。下手したら10分の1まで抑えられる。というか、万が一にも銭投げを100発ぶち込んで倒せない可能性があるのでレベルは最大限まで上げていくべきだろう。よし、まずはトラを周回だ。


「じゃ、また1時間ちょっとしたらライトニングタイガーの精算よろしく」


「な、何を言っているんですか?」


 トラ周回するって言ってんだろ!

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[一言] バトルマスター×銭投げ この組み合わせを思いついた人が過去どれくらいいただろうか(賞賛
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