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第162話 vs超越種(2人)

 目が覚めたら知ってる天井だった。そういえばテレポートで帰ってきたんだっけか。休んだとはいえまだ本調子じゃないな。どことなく気怠さも残っているけど、マリアンヌがどうなったか気になるしそろそろ起きるか。


 そんなことを考えていると、天井からニョキっと可愛い顔が出てきた。実体化できるんだから普通にドアから入ればいいのにこの子は。


「あ、お兄ちゃん起きたの〜」


 どうやら心配して様子を見に来てくれたみたいだ。ココは優しいなぁ……。


「おう、おはよう。ちょうど起きたところだ。一緒にみんなのとこ行くか」


 俺の提案にココは「あう〜」と言葉を濁す。どうしたんだと俺が聞く前に『念力(ポルターガイスト)』でベッドまで押し戻された。


「今はよくないかもなの〜」


「ん? 何で?」


「えーっとね……えっちな話してたの」


 何してんだあいつら……。というか、ココは心配して来てくれたんじゃなくて気まずくなってこっち来たのね。まぁでもありがとうな。


「あのね、ココだけ経験がないからあの会話に混ざれないの」


「ココさん!?」


 なんか不穏なワードが飛び出したぞ、と思った瞬間にはもう念力で無理やり押し倒されマウントポジションを取られた。


「おいちょっと待てココ! てか念力強ぇな!」


 本気で逃げようとしてるのに全く身動きが取れないんだが? そういえば超越種だっけ? なんか俺の魔力を吸収しまくってめっちゃ強くなってるんだったな。いや、それにしても強すぎだろ。

 しかしココも俺が逃げないようにと念力での拘束に集中していて身動きが取れていない。


「観念するの!」


「うぉぉ、まだそんな余力を残してたのか」


 ヤバい、ゴリゴリにMPを消費している。お互い魔力が垂れ流しになっているが、そんなことを気にしている場合じゃない。テレポートで消耗してる分だけ俺の方が不利だ。


「も、もうダメなの……」


 1分にも満たない攻防戦の勝者は俺だった。もうMPはすっからかんだけど何とか気合いと根性で耐えた。あと10秒あったら俺の方が負けていたな。


「うぅぅ……」


 そのココはというと目に涙を浮かべていた。


「お兄ちゃんはココのこと嫌いになっちゃったの?」


 そう言われて俺はハッと気付いた。俺が本気で拒絶するもんだからココは嫌われたと思ってショックを受けてしまったんだ。闘争本能で頭に上っていた血がサーっと引いていくのが分かる。


「そんなことない! 俺はココのこと大好きだぞ!」


 その瞬間、まるで計ったかのように俺の告白と同時に部屋のドアが勢いよく開いた。


「アホみたいに魔力を放出して何をしてるのかと思えば……主様は本当に何をやっとるんじゃ……」


 ただならぬ雰囲気を感じて様子を見に来てくれたみたいだ。うん、出来ればもうちょっと早く来て欲しかったかな。

 俺はクーコにどうしてこんなことになったのか状況を説明し、ココットにもちゃんと大好きであることを力説すると、クーコは「なるほどのぉ」と頷いた。ふぅ……分かってくれたか。


「それは主様が悪いのぉ」


 安心したのも束の間だった。まずい、と思った時にはすでに手遅れだった。


「『愛縛の邪眼』じゃ。普段の主様ならともかく、今の主様には抗えんじゃろう」


「どうして」


 逃げようと思っているのに身体が動かない。それどころか俺の意思に反してクーコを求めるように手を伸ばしていた。


「ココットが勇気を出したんじゃ。ワシももう逃げるのはやめということじゃ」


 これまでクーコはすでに操を捧げた身だからと本番行為に関しては一線を引いていた。そんなクーコが服を脱ぎ始めている。


「そうじゃ。ココットよ、やり方は教えるから手伝ってくれんか? 『叡智の継承』『魔力譲渡(マナ・ギフト)』」


「ありがとうなの! 愛縛の邪眼なの!」


「ぐっ……」


 魔力を譲渡して何をするのかと思ったらココットまで邪眼を使ってきた。ほんととんでもねぇことしてくれるわ。


「待て待て待て待て!」


 ココットは必死に我慢している俺に無防備に近づいてくると、動けない俺にちゅっと口付けをしてきた。あ、理性が……。


「主様よ。この邪眼は相手の好意を増幅させるものじゃ。その気になってしまった時点で抜け出せないんじゃよ。まぁこちらも対象に好意を持っていることが発動条件じゃが……ってもう聞いておらんか」




 愛縛の邪眼の効果が切れた時にはもう全て終わっていた。なんかマリアンヌの時といい似たようなことばっかだな。右腕にココ、左腕にクーコと両手に花だ。2人して満足そうに寝ている。


 起こすのも可哀想なのでしばらくそのままで2人の寝顔を堪能していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。これはトワだな。


「テンマ様、お疲れ様でした」


「……うちの奥さんたちは仲が良くていいね」


 最中には誰も部屋に来なかったみたいだし、今回のこれも全員が協力してるんだろ? 


「最強のアンデッドも伝説の九尾も、テンマ様の手にかかればただのメスですか」


「いや、メスて」


 そんなクーコたちを獣みたいな。


「理性を失うほどセックスに没入するなんて発情期の獣みたいなものでは?」


 あ、これは俺がオスって言われてんのか。なにその間接的に皮肉するテクニック。俺バカだから言われないと分かんないよ?


「理性に関しては不可抗力だ。なんか邪眼とか使われたんだぞ」


「また状態異常ですか……。まぁいいです。これでテンマ様の状態異常対策が最優先だと再認識できました。となると、耐性アップのスキルの効果量を増やすためにマリアンヌさんのレベリングが急務ですね」


 あぁ……俺のせいでマリアンヌに流れ弾が。聖国に行く前にクーコに血反吐を吐かさせるくらいの訓練をさせられたのに補習になっちゃったよ。けどそうか、トワがこう言ってるってことはマリアンヌは認められたみたいだな。


 トワの報告を聞いていると、右腕のココがモゾモゾと動き出した。


「んぅ、寝ちゃってたの」


「あぁ、すみません。起こしてしまいましたか?」


「まぁ流石にの……」


 いつの間にかクーコも起きていたみたいだ。何もアクションが無かったから全く気が付かなかった。


「起きてたのか」


「うむ……」


 ??? なんだかクーコの態度がどこかよそよそしいぞ? どこか調子が悪かったりするのだろうか?


「いつまでもそんな格好ではなんですからお風呂にでも入ってきてください。シーツも洗濯が必要みたいですね」


「……これまた凄い惨状だな」


 無意識の俺はいったい何をしたのか。なんかベッドに水たまりができてるんだけど。シーツの洗濯っていうかこれもう全部じゃね?


「すまんのじゃ……けどやめよと言うのに聞いとくれんかった主様も悪いんじゃぞ?」


「テンマ様は理性がある時ですら普通に辱めてきますから、そんなので止まるわけないですよ」


「意外と鬼畜じゃのぉ……」


 こっちはお前ら複数人を相手にしてるから必死なんだよ。こうでもして少しでも体力を削らないと何回戦まで行くかも分からないし俺の身が持たんのだわ。負けるわけにはいかんのじゃい。


「お兄ちゃんたち、ちゃんと愛し合わなきゃダメなの」


 たしかに、俺は勝ち負けばかりに囚われて本質を疎かにしていたかもしれない。あんまり好き好き言う男もどうかと思うけど、全く伝えないのもダメだよな。そういえば最後に好意を伝えたのっていつだっけな。


「永らく一緒におるとだんだんとそれが当たり前になって自然と愛を伝えることが減るからのぉ」


 ごめんじゃん。俺の場合そんな永らくってほどでもないからよりごめんじゃん。

 でもなんか今更何でもない日に言うのも何か照れ臭いな。特別なイベントでもあればいいんだが。

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