第157話 聖女(性女)
つい先日まで一応戦争をしていた敵国ということもあったので、聖国には俺とマリアンヌの2人だけで行くことにした。こういう情勢でもなければ旅行気分でみんなで行っても良かったのかもしれないけど、まぁそれは仕方ない。
それを伝えると一部のメンバーからは不満の声があがった。
「2人旅なんて許せるわけないでしょ! 絶対手出すやつじゃん!」
「そうだそうだ!」
「お兄様、浮気です」
毎度毎度のことだけど君たち俺のことなんだと思ってるの? 誰か俺を擁護してくれる人はいないのか?
「まぁ拾ってきた時点でそういうことになるのは……」
「致し方ないよねぇ」
え、もはや諦められてるレベル?
「そうじゃな、多少の火遊びを許してやるのが良い女というものじゃ」
うーん、たしかにそれは良い女かもしれない。でも良い男はそもそも火遊びをしないと思うから最初からそういう相手を選ぼうな。ん? 俺自分で自分を刺してる?
「主人殿が一度1人で聖国まで行って、テレポートで行けば解決なのでは?」
「鬼畜じゃのぉ。一応向こうでは何があるか分からんのじゃからそれは許してやれ」
テレポートを使うと数時間はダウンするからな。というか、今までよりも距離が長いからどんだけキツいかも分からない。道中もそうだけど、国内も安全とは限らないから動けなくなるのはダメだな。まぁでもやっぱり1番はキツいから勘弁してください。
「まぁみんなが心配してるようなそんな展開にはならんだろ」
と、思っていた時期がありました。
「お、おはようございます……昨日はすごかったですね……」
「あれ……?」
聖国へ向かってから数日目のことだ。朝起きたらテントの中でとんでもないことが起こっていた。
「なんで裸で寝てるんだ?」
待て、一回冷静になろう。こういう時は順番に思い出せばいい。昨日の夜はマリアンヌがご飯を作るというからそれを食べて……。そう思案していると、ふと寝袋の横に落ちていた空きビンが目に入った。気になったので鑑定してみる。
『惚れ薬(特級)』
は? 惚れ薬!? まさか飯に盛られた!? しかも特級ってなんだこれ!?
「状態異常耐性があるのにこういうの効くのか……?」
「せ、聖女になると薬の効きを良くすることができるんです。あ、あとは状態異常を回復するだけじゃなくて、状態異常にかかりやすくすることも……」
ほー、じゃあ回復しそうになったそばからデバフを撃ちまくったのか……って何してくれてんの!? っていうかレベル差とか状態異常耐性とか色々全部覆されたのか?
「何が目的だ?」
「も、目的ですか? やっぱりお礼とかした方がいいかなと思いまして……迷惑でしたか?」
「迷惑っていうかさあ……俺記憶無いし」
とんでもない押し売りじゃないか……。どこの世界にデバフを撃ちまくるお礼があるんだよ。というか記憶がないのにお礼もクソもなくね?
「ご、ごめんなさい! 効果が強すぎたみたいですね……。テンマ様、獣みたいになっちゃってましたから……」
それはなんかもうこの惨状を見れば分かるわ。なんか色々湿ってるし……。マリアンヌの首にキスマークめっちゃついてんじゃん。俺そんなことしてたの?
あー、でもこれは不可抗力だって言い訳させて欲しい。これ皆んなには黙っててもいいかな……。いや、自分から正直に言おう、隠し通せる気がしない。
「つ、次はもうちょっと量を減らして……」
なんかブツブツと怖いこと言ってるけどダメだぞ。そのやべぇ薬は没収だ。何が聖女だよ、とんだ性女じゃねぇか。
そして次の日の夜。もうご飯は俺が作ることにした。なんでこっちが薬を盛られる心配をしなきゃならんのだ。最初から最後まで手を加えさせなかったから今日は大丈夫だろ。
ご飯を食べ終えて、よし、なんとも無さそうだ。
さぁもう寝る準備をしようとテントに入ったところで、異変に気付いた。
「なんだこの匂い?」
嗅いだことのない香りがテント内に充満している。不快な匂いではないが、嗅いでいるとなんだか頭がフラッとしてきた。
もしかしてこれ状態異常か!?
そう言えば調香も出来るって言ってたな。お香の居場所は分からんが今の自分の状態なら分かる。
『魅了』『興奮』『色欲』
アホかな? ほんと何してくれてんの!? とりあえず回復して状態異常耐性のバフだ。
「待て待て! 『キュア』『クリアマインド』」
「『マインドジャック』『ヒュプノ』『ハイパーセンシティブ』『バーサク』」
お前!? こんなことしてたのか!? どんだけデバフをかけ………て………………。
「はっ……!?」
意識が戻った時にはすでに何回戦も終わった後で、なんなら今も現在進行形でマリアンヌに乗っかって身動きが取れないようにガチガチに組み伏せているところだった。
「ふ、ふぇ〜!? も、もう『狂乱』状態が治っちゃったんですか!?」
「その前に離してくれないか?」
マウンティングポジションを取ってるのは俺だが、マリアンヌにギュッと足で抱きつかれているせいで離れられない。俺が滅茶苦茶していたのではなく、滅茶苦茶するように誘導されていたのだ。
「……やめちゃうんですか?」
マリアンヌの媚びるような甘ったるい声が脳に響く。
蟲惑的な誘いに思わず身を委ねそうになるが、何とか踏みとどまれた。
「ここまでやっちゃったんですから……あ、赤ちゃんができる確率も変わらないですし、いまさら一緒じゃないですか?」
もうこいつ悪魔だろ。やらせたのは誰だよ。そもそも子供ができたから責任を取るとか、できなかったら責任を取らなくていいとか、そういう問題でもないだろう。完全に嵌められたみたいなもんだけど、腹を括るしかないかぁ……。
「今更だからなぁ……責任は取るよ。帰ったらみんなにも報告するから」
「せ、責任だなんて……そんな申し訳ないです……私のことはただの性欲処理の道具だと思ってください……」
「いや俺が気にするんだよ。暴走しやがって」
「す、すみましぇん!」
乱暴に扱うと嬉しそうに腰を揺らす。誘い受けってやつだろうか、そういう態度にもイライラさせられる。
その後、俺は浮気だなんてことも忘れてマリアンヌのことを滅茶苦茶に犯してしまうのだった。




