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第150話 籠城戦

 サクラたちの視線が俺に向いたところで、俺はアイテムボックスから弓を取り出して構える。職業は純白魔道士に設定しているが、別に他の職業の武器やスキルが全く使えなくなるというわけではない。職業補正がかからなくなるとか、職業によっては下降補正がかかるというデメリットはあるが、純白魔道士ならば同じ魔法使い派生の上級職である魔弓術師のスキルはデメリット無しで使用できる。


「魔弓術師のスキルの威力や射程は、魔力と器用さに依存している」


「た、たしかにそうだが……200メートルはあるぞ!? いけるのか!?」


 ここにいる面々には今更の話だったな。期待してくれてるところ悪いけど、ダンジョン攻略ばかりしていると長距離射撃なんて使わないから絶対って自信はない。ぶっつけ本番もいいところだが、格好悪いところは見せるわけにはいかない。あー、こんなことになるなら王国の宝物庫から聖剣じゃないけどなにかレジェンダリーな弓を拝借しておくんだった。こんなそこら辺の装備屋で買った弓じゃステータスの上昇が心許ない。


「まぁでもやるしかないわな」


 弓なんてまともに練習したことはないが、そこはスキルと器用さが補正してくれる。まぁ魔弓術を弓と言っていいかは微妙だが。

 さて、カタパルトは木製か……なら火属性がいいかな。飛距離が出るように極力空気抵抗を受けない形に炎の矢を構成する。


「『フレイムアロー』」


 魔力を込めただけあって通常の弓矢の何倍も速度が出る。亜音速まで加速された矢はスキルの補正もあって的確にカタパルトめがけて飛んでいく。

 発射から2秒にも満たずに的中し、爆炎が巻き起こった。ちょっとやり過ぎ感が否めない。


「おおっ!!」

「「さ、流石っす!」」


 カタパルトが粉々になって吹っ飛んでいる様はなかなかスペクタクルな光景だけど、向こうからしたらたまったものじゃないだろうな。


 長射程からの有効打を失った聖国軍は要塞に向けて再び進軍を始めた。まぁとどまっていても一方的にやられるだけの的にしかならないから動くしかないんだけど、にしてももっと逃げるやつとかいると思ったけどな。


「統率が取れていると見るべきか……、あるいは何かがあるのか……」


 例えばこれがあの三国志の曹操軍とかなら分かるんだけどな、いや、実際は曹操軍にも脱走兵とか沢山いたんだろうけどさ。むしろそんな日頃鍛錬を欠かさない精強な軍隊ですら統率が取れないんだから、ただ徴兵されただけの一般人なら尚更って話で。


「寄せ付けるな!」


 城壁の上から岩を落としたり、弓や魔法で聖国軍が城門に張り付いてくるのを防ぐ。それに対して聖国軍はゾンビ映画のごとく押し寄せてくる。


「梯子をかけさせるな! すぐに落とせ! 城門、破城槌だ! あれを集中して狙え! しかし防御スキルは常に忘れるな!」


「『グレーターシールド』」


 ひたすら守りに徹するが、城門をこじ開けられたら一気に敵が雪崩れ込んでくるので破城槌などの攻城兵器は狙って潰さなければならない。その間も、敵の弓隊が城内に一斉に火矢を放ってきたりと嫌がらせをしてくる。


「弓や魔法に気をつけろ! 負傷者のカバーを忘れるな!」


 城壁の上にも攻撃は飛んでくるが、これらの攻撃は散発的なら特に怖くはない。負傷したものもすぐに治してやればすぐに戦線復帰も可能だ。


「『エクスヒール』、はい次」


「治療してすぐに戦場に送り返すのは悪魔の所業っすよね」


「おーい、口じゃなくて手を動かせ」


 負傷者を運搬する衛生兵として動いていたナナから軽口が飛んでくる。その悪魔の所業のおかげでみんなが安心して戦えるんじゃないか。


「テンマ殿が回復役を担ってくれるだけでも白魔道士100人分の働きだな」


「攻撃に参加しない分はな」


「まぁ実際、テンマ殿に単身特攻させる作戦を提案したバカな貴族はいたんだが……」


「あぁ、それはバカだな」


 そんな無茶をさせて俺が聖国に寝返るとか考えないのだろうか? きっと勘違いしているんだろうけど、俺は別に帝国に対してそこまで帰属意識はない。たしかに皇帝から卿としての地位を与えられたりと良好な関係を築いてはいるが、その義務を大きく逸脱するような命令には従う理由がない。

 ベネトナシュに対する義理があるので多少のサービスはするが、それ以上を要求するようなら俺は帝国を見限ると、ベネトナシュとはすでに話し合って納得してもらっている。


「テンマ殿を侮っている連中もこの働きを見たら文句は言えまい。引き続き頼む」


 そう言うとサクラは近くの隊長格の数人にいくつかの指示を出し、城壁の連中に檄を飛ばしに行った。指揮官は大変そうだな……。


 他人事のように思っていたが俺の大変さもなかなかだった。聖国の攻撃は深夜も続いたのだ。


「初日だからとかじゃないよな?」


 そんなマラソンの大会でスタートダッシュするお調子者じゃあるまいし、ちゃんとペース配分はしてるだろう。けど人間なんだから休まなきゃ倒れるだろ、なんであの人たち戦えてんの?

 そんなことを思っているとげっそりとした顔のサクラがやってきた。


「テンマ殿、休憩だ」


「え? でもまだ攻撃は続いてるよな?」


「あぁ、しかし最初ほどの勢いはないからおそらく向こうは軍を分割していると思われる。攻撃するグループと休憩するグループ、それを適宜交代して24時間攻め続ける作戦だろう。すまない、もっと早くに気付くべきだった」


 マジかよ、かなりえげつないことをしてくるな。


「危ねぇ、気付いていなかったら連日ぶっ続けで戦ってたってことか?」


「いや、夜襲に備えて一部の部隊には休息を取らせていたからそんなことにはならないんだが……隊長格にはこの可能性も伝えていたし……いや、なんかすまん」


「……」


 俺がド素人すぎたせいで気まずい雰囲気になってしまった。もしかしなくても昼間に話してたあれか、ちゃんと想定してたんだな。


「む? どうしたんだ2人して黙ってそんなところで、休憩しないのか?」


 そんな気まずい空気はミーナがぶち壊してくれた。あー、休む休む。俺たちに割り当てられてる部屋はどこだ?


「で、どこで休めばいいんだ?」


「一般兵は大部屋で雑魚寝だが……たしかに竜殺しのバルムンク卿をそんな雑には扱うわけにはいかんか……。テンマ殿とミーナ殿も私と同室でいいか?」


 まぁ変に特別待遇をしたら騎士団の連中はともかく俺たちのことをよく知らない兵は面白くないだろう。いたずらに軍規を乱したいわけじゃないから厚意に甘えよう。


「あぁ、ミーナと一緒ならどこでもいいぞ」


「……ちゃんと休むんだろうな? 私がいることを忘れるなよ?」


 俺たちのこと何だと思ってんの?

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私はGoogle翻訳を使ってこれを読んでおり、日本語はほとんど話したり読んだりできないので、何か見逃していたら申し訳ありません。 Why is he going through so much tr…
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