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第145話

 最悪のタイミングでミーナが帰ってきて、なんか浮気の現場を押さえられたみたいになってしまった。なんとか言い訳を……。

 俺がミーナにどう言い訳をしようと考えていたら、なんか急に下半身が涼しくなった。


「わ、わぁ……お、おっきい! こ、これが男の人の……!」


「いや続けようとするな!」


 ミーナに気を取られたせいで抵抗が疎かになっていたところを狙われた。というか、なんでこの状況で続けられると思った?


「人の旦那を誘惑するとは、良い度胸じゃないか」


「あわ、あわわわ……ご、ごめんなさい……!」


 怖えぇ……。蛇に睨まれたカエルみたいになるのも分かるよ。


「テンマもテンマだ! 私たち以外でそんなになるなんてみっともない! 節操がないぞ!」


「これ生理現象だから! コントロール出来ないから!」


 人の愚息をダメな子扱いするのはやめてくれ!? これでも拒否したんだよ!? 


「言い訳の余地があると思うか?」


「そう言いたくなる気持ちも分かる。けど少しくらい弁解させてくれ」


「閉廷!」


 なんでだよ! たとえどんな凶悪犯罪でも被告人が喋るターンはあるだろ! 


「あ、あの……て、テンマ様の奥様でしょうか……?」


「む? 奥様……奥様か……」


 奥様と呼ばれたミーナは一瞬だけどだらしなく頬を緩ませた。あんまりそう呼ばれないから嬉しかったんだろうな。

 マリアンヌがそれに気付いたかどうかは分からないが、更にマジックワードである奥様を用いてたたみかける。


「お、奥様には大変ご不快な思いをさせてしまったことをお詫び申し上げます……。少しお話を聞いていただけますでしょうか……」


「ま、まぁ……少しくらいならいいだろう」


 ちょろい! ちょろいぞミーナ! まぁでもなんだ、奥様と呼ばれて喜んでいるのを見ると夫として悪い気はしない。

 そのチョロ可愛いミーナはというと、マリアンヌの酷な境遇を聞いてわなわなと拳を震わせていた。


「おいテンマ! マリアンヌが帝国で暮らせるようサポートしてやろうじゃないか!」


 ミーナは義憤に駆られるタイプだからな。なんかこうなるの分かってたよ。


「何をしているテンマ! マリアンヌは帝国で暮らす覚悟を決めたのだろう? なら早く行くぞ!」


「まぁ落ち着け。せめて要塞に戻ってサクラに伝えてからな……っていうかミーナ、聖国の陣地に潜入してたのになんでここにいんの?」


 あと、ついでに補給物資を狙う作戦がどうなったとか全く知らないんだけど。


「あー、奇襲と火計は上手くいってたんだがな……。だが、ナナとララがな……」


「2人に何かあったのか?」


 あの2人はバカだけど悪い奴らではない。クソ、俺が現場に出ていれば防げた事故だったか? 采配ミスの可能性も否めない。

 どちらにせよ俺のやらかしの皺寄せが2人に行ってしまった。


「いや、2人はフルアーマーの正体が私だと分からず私に攻撃を仕掛けてきたんだ。それを撃退しただけだから大した怪我はしていない」


 訂正。やっぱただのバカだったわ。隠密行動しろって言ったのに手柄欲しさにやりやがったな。俺の心配を返せ。

 あいつらに対する評価を改めるべきか? なんてことを考えていたら、当事者の2人が飛び込むように天幕の中に入ってきた。


「なんかヤバい強いのが向こうにいたんすけど!」

「仇とってくださいっす!」


 よほどショッキングな出来事だったのだろう。天幕に入ってくるや否やその話題が出てきた。こっちはそのことで説教しなくちゃいけないんだけどな。そんなことを露ほども知らない2人はそのフルアーマーがいかにヤバかったかを捲し立てる。


「というか、フルアーマーの奴こっちに来てないんすか?」

「めちゃくちゃ追ってきたから隠れてやり過ごしたんすよ。うちらのことを抜いて行ったはずなんすけど」


「そのフルアーマーって、あれだろ?」


 ミーナの方を指差すと、2人の視線がミーナの方を向く。ちゃんと見覚えのある甲冑が目に入ったみたいだ。


「「あぁぁぁぁぁ!!!」」


 うわ、うるせぇ! 


「討ち取ったんすか!?」

「流石はミーナの姐さん!」


 これでフルアーマーの正体に気付くだろうと思ったら、何故かミーナが敵討ちしてくれたんだと勘違いしている。


 一方で、ナナとララが『討ち取った』と嬉しそうにに何度も言うものだから、本来その対象であったマリアンヌがビクッとして俺の背中に隠れた。なんか小動物みたいだな……。


 そのマリアンヌは俺と目が合うと小さく「ごめんなさい」と言って恥ずかしそうに顔を赤らめていた。新鮮な反応でこっちもなんか気まずい。

 しかしそんなラブコメみたいなことをしてナナとララの2人が見逃すはずがない。なんなら俺をからかってやろうというのがもろ顔に出ていた。


「あれ〜? その子なんなんすか?」

「ミーナさ〜ん。この反応はちょっと危険っすよ〜。もう落ちかけっす。秒読みっす。トワさんに報告必須っす」


 おいお前ら、トワに報告するのはいいけどあることないこと吹聴するのはやめろ? というか、お前らの中でトワに報告するのが一番効くって認識なの? 

 お前らトワのことなんだと思ってんだ。お前らがこう言ってたってことをトワに言うぞ?


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