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第142話 ほんまごめん

 翌日の昼にもなると、普段はおちゃらけているギャル姉妹にも緊張感が出始めた。なんかシリアスとは無縁な存在だと思ってたわ。


「ミーナ」


「うむ」


 要塞付近の大峡谷を抜けたとはいえ、そう地学的性質が変わるわけもなく、進路上には時より数十メートル級の大きな一枚岩などが散見された。

 急斜面の岩山ではあるが、『天空闊歩』を用いれば道具も使わずに登頂することができる。こういったオブジェクトは遮蔽物になる天然の物見櫓としても有用だ。


「ここから5キロほどの位置に数百人ほどの集団と、30キロほど先にもっと大きな集団がいるな」


 見通しの悪い地形ではあるが、数百人もいれば発見は容易だ。クーコの理論で言えば、すぐ近くまで来ている集団が補給部隊だろう。


「となると、そろそろ斥候にも注意が必要っすね

「予定より早く接敵しちゃうっすから、後退もありなんじゃないっすか?」


 まだ太陽は南中高度とは言わないが、日没までは時間がある。このままでは日が落ちる前に接敵してしまうだろう。ララとナナは少し戻って調整することを提案してきた。

 たしかに作戦としては日没後に仕掛けるというのが一般的だろう。しかし、誰でも思いつくような作戦というのは裏を返せば警戒されているということだ。

 それに出来れば少人数の利点を活かしていきたい。


「いや、ここからは各自で行動しよう。騒ぎを起こすのは相手方が寝静まった後だ」


 固まって動くよりも個人で動いた方が発見のリスクは少なくなる。単独行動なら多少は大胆な動きも許容されるはずだ。

 不確定要素の多いセオリー外の行動にはなるが、これが大きなミスに繋がるとは思わない。なぜならゲリラ戦に突入しても何とかするくらいの実力はあると信頼しているからだ。



 さて、個人で動くことになった俺たちだが、集団で動くにしても個人で動くにしても、相手に見つからないという大前提は変わらない。

 その際に何に注意するべきかと言えば斥候だ。相手もバカではないので情報を得るべく斥候を出しているし、その斥候が戻ってこなければ異変を感じる。


 つまりは見つかった時点でアウトというわけだ。


 そんな中、俺は敵の補給部隊が形成している陣地のすぐ真横、ちょっと茂みになっているところの木の上に潜伏して日が暮れるのを待っていた。灯台下暗しではないが、こんな近くに潜んでいるなんて誰も思わないだろう。


「ん?」


 余裕な感じで日没を待っていると、フルフェイスの兜を装着した兵士がこっちに向かってきた。見た感じバレている様子はないのでそのままやり過ごそう。

 そんなことを考えていたら茂みに入ってきた兵士はその兜を外した。


「うんしょ……はぅ……もう敵さんが近くまで来てるんだよね……私が小隊長なんて上手く出来るのかなぁ……」


 兜の下からどんな厳ついおっさんが出てくるかと思ったら俺とそう年が変わらなそうな女の子だった。

 何をしにきたのか、そんな事を考える間もなくその子はズボンを脱ぎ始めた。そう、お花摘み(意味深)である。


「……」


 いやまぁそうか。こんな茂みにやってきてすることなんて相場は決まってるよな。

 水音を聞きながらどういうプレイだよと心の中で冷静にツッコミをいれるが、どう取り繕っても気まずいことには変わりない。

 早く終わらせてどこかへ行ってくれ、と念じたのがいけなかったのか、絶対たまたまだとは思うが何故か女の子が上を見上げた。


「「あ」」


 うん、目が合ってしまった。普通なら仲間を呼ぶなりするために叫んだりするのだろうが、咄嗟のことだったからか、あるいは下半身丸出しの現状に躊躇したのか、そのおかげで仲間を呼ばれる前に動くことができた。


「『スリープ』」


 魔法抵抗力が高い相手には効かないが、なんとか効いてくれた。俺も判断が甘かったな。行動抑制を考えるなら魔法抵抗力の条件が多少緩和される『パラライズ』を選択した方が無難だったかもしれない。


「まぁ効いたから結果オーライだろう」


 しかし問題は依然として残っている。この子どうすんのよ。


「何をやってるんだお前は……」


「うぉ、ミーナか……驚かせるなよ」


 背後から急に声をかけられたからマジでビビった。

 俺と同じ発想に至っていたのか、ミーナも近くで日没を待っていたらしい。そこで俺がわちゃわちゃやってたから出てきちゃったと。ほんと申し訳ありませんでした。


「で、どうする?」


 なんか独り言で小隊長とか言ってたし、いなくなったら分かっちゃうよな。放置するわけにもいかないけど、見られた以上は戻すわけにもいかないしなぁ。


「仕方ない。テンマはその子を連れて後ろに戻れ。捕虜として丁重に扱うしかないだろう」


「ミーナ、その捕虜に何してんの?」


 ミーナは丁重に扱うと言いながら女の子の鎧を脱がしていく。いやもう肝心なところは隠せてないから別に丁重もクソもないんだけどさ。

 そのミーナはあっという間に鎧を脱がせると、その鎧を着て最後にフルフェイスの兜まで装着した。


「私はこのまま潜入する」


 うぇぇ!!!??? ミーナさん大胆すぎぃ!!!



 ミーナと別れて俺は一度別部隊の方まで戻る。あ、服はちゃんとミーナが着せてあげたよ。

 まさか俺がそんなヘマをしてくるとは思っていなかった騎士団連中の視線が痛かった。


「バルムンク殿、一体どうしたんですか?」


 言いたくねぇ、敵陣の近くで余裕ぶっこいてイキり散らかしてたら見つかったとか言いたくねぇよ。

 でも情報共有は大事だから正直に話した。


「バルムンク殿……」 


「ほんまごめん」


 いやマジで、俺が全面的に悪いからこれ以上は許してくれ。


 騎士団の連中には捕虜の女の子を丁重に扱うように通達する。やらかした戦犯の俺が何を偉そうにと思うかもしれないが、一応俺が上官だから仕方がない。これ何かの罰ゲーム?

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