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第137話 作戦会議

 トワたちの尽力のおかげもあって、どうやら王国と敵対する心配はしなくても良くなったみたいだ。まぁ俺は寝てただけで後から報告を聞いただけなんですけどね。


 そして俺たちが王都入りをして数日後、聖国から同盟の書簡を持った使者がやってきた。割と紙一重の差で危ないところだったな。


 そして、王国は約束通りこの申し出を拒否した。理由を問われた際に、第一王子と第二王子がバカをやったせいで国が混乱しているのを知っているだろうと言えば、使者は渋々ながらも納得したそうだ。


「それでも公国軍が王国の領地を通過する許可は出しているのです。十分歩み寄っていると言えるでしょう」


 地理的な関係上、公国が帝国領に向かって進軍するには王国を跨いで行く必要がある。他国の軍隊に領地を通過させるなんて普通はあり得ないのだが、王国はこれを許可した。


「お姉様、領地を通過する許可を出すことが歩み寄っているというのはどういうことですか? 私たちもそうですし、商人さんたちも好きに国を行き来していますよね?」


「そうですね。基本的に善良な市民であれば出入国を制限されることはありませんが、それが他国の軍ともなれば話は別です。本来なら武器の携帯や入国の人数に制限をかけ、さらにその上で通行料を徴収しますが、今回そのどちらの措置もしないのです。まぁでも、そう上手くはいかないものですよ」


 トワは商人の往来とはわけが違う理由を語る。集団が移動する際、もっとも重要になるのが兵站だという。しかし、数日から数ヶ月分の食糧を輸送するのは現実的ではなく、どこぞの街や村で随時補給するタイミングが生じてくる。この補給に多くの問題が付き纏うという。


「いくら規律が厳しくても、無秩序な略奪や強姦といった犯罪行為が発生する可能性はゼロとは言い切れません」


 王国側もそれは想定しているのか、犯罪行為が発覚した場合は公国軍の後背を問答無用で攻撃すると宣言した。もしそうなった場合、公国軍は挟撃される形となるため壊滅的な被害を受けることになる。流石にここまで言って狼藉を働くようなことはないと思うが、数千人も集まれば1人2人くらいは超ド級の馬鹿をやらかす奴が出てきてもおかしくはない。聖国としては管理の手が届かない公国軍に頼るのは不安なところがあるだろうが、それでも公国の戦力は頼りになる。


「しかし、あちこちから攻められるのは厄介だぞ」


「そうだよね〜。戦力を分散することになるし……」


 俺たちの中で、聖国を代表とした連合軍の用いる策は、二面作戦や三面作戦、あるいはそれ以上の多方面作戦が本命となっている。というのも、連合軍側も突貫的に組まれた連合なだけに、各国の軍隊が一同に集結して足並みを揃えるというのは難しい。それならば、バラバラに動いて指揮系統を各国の軍に任せる方が十全に戦えるということだ。


「聖国に誤算があったとすれば、帝国には主様がおることじゃな」


「ちょっと待ちたまえ。もちろんテンマ君が参戦してくれたら心強いが、ボクはテンマ君にそんな兵器みたいな真似をさせるつもりはないよ」


 俺も流石に人を殺すのは忌避感がある。もちろん状況がそれしか許してくれないならばそういう選択もするだろうが、何も自分から進んでその道を選ぼうとは思わない。しかしクーコには何か作戦があるみたいだった。


「まぁ案ずるな。何も人を殺すだけが戦の勝ち方ではない」


「そんな都合の良い方法があるのか?」


「ある。むしろこの方法ならば殺さない方が効果があるかもしれんのぉ」


 殺さない方が効果的? もしかして地雷みたいな話をしているのか? 地雷ってたしか殺すことが目的じゃなくて、地雷を踏んで負傷した兵士を他の兵士に運ばせて敵の数を減らすんだよな。なるほど、ちょっと痛い思いはさせてしまうけど、これなら命までは取らなくても良さそうだ。


「なるほど、つまり俺がやるべきは……」


「うむ、徹底して補給部隊を狙うんじゃ」


 うん、全然違ったわ。地雷を使うとか殺さないってだけで普通に残虐だもんな。なんか感覚バグってたわ。で、何? 補給部隊だって?


「補給部隊? それってどういう部隊なんですか?」


「主に兵站や物資の運搬を目的とした部隊ですね。ただ、戦争においてはこれが1番重要と言っても過言ではありません」


「もちろん頭数を集めるのも大切じゃがな。しかし、人が増えれば当然物資も必要になる。現地調達するわけにもいかんから、遠征する側は気を配る必要があるんじゃ」


「あぁ、なるほど。兵糧攻めか」


 そうか。どうしても戦争って聞くと敵を倒すことばかり考えてしまうけど、たしかに兵糧攻めって言葉もあったな。


「補給部隊って言うけどさ、みんなアイテムボックスを使って運ぶんじゃないの? 誰が補給部隊って分かるもんなの?」


「そうじゃな。しかし容量の問題が出てくる以上全部が全部をアイテムボックスというわけにはいかん。そして補給部隊の見分け方じゃが、例えば野戦の際に陣を構築するのは補給部隊の仕事じゃ。本隊から先行して目的地に向かう部隊があれば、それは陣地形成のために出発した工作員というわけじゃ」


「なるほどねぇ。じゃあそれを妨害すればいいってわけだ。陣地が完成するまでは本隊も安心して合流出来ないからどうしても待ちの時間が発生する。つまりそれもまた兵糧攻めに繋がっているというわけだねぇ」


 あー、そうか。ただ単に食糧を燃やしたりするだけじゃなくて時間を浪費させることも兵糧攻めか。こんなこと今まで考えたことなかったな。


「時間を稼ぐことにも意味があるんですよ。連合軍といっても各国の士気にはばらつきがあります。盟主の聖国はまぁやる気に満ち溢れているでしょうが、公国はそういうわけでもありません。自分たちの攻めもそうですが、聖国の攻撃が上手くいっていないという報告が入る度に士気は落ちます。もとより退路がなく決死の覚悟で戦うしかない防衛戦というわけではないですからね。そうなると公国軍には損切りして撤退する選択肢が出てくるわけです」


「あ、逃げ道があるせいで迷いが生まれるんですね。勉強になります」


「相手の指揮官はともかく、一兵卒の中には機を見て逃走を図る者も現れるだろうな。統率を取るのも大変そうだ」


「たしかに。そう考えると色々なストレスを押し付けられるんだな」


 別に積極的に相手を倒しているわけでもなく、補給部隊に対して嫌がらせをしてあとは専守防衛に徹しているだけなんだけどな。そんなんで勝てるのかと思ったけど、なんか話を聞く分には全然現実的な気がする。おーけー、これで俺たちのやることは決まったな。


「早速この作戦を父や軍部に伝えたいのだけれど……」


 ……ってまた俺は移動要員か!

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