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第126話 パーティとサプライズ

 準備の期間を経て1ヶ月、ついにパーティの当日を迎えた。といっても招待状の郵送から料理の手配ともう何から何までをエッセンス商会に任せているので俺たちの仕事といえば招待客との挨拶くらいなものだが。


 ただその挨拶も適当な格好でするわけにはいかない。そんなわけで商会のスタイリストやメイクさんが女性陣を着飾ってくれている。


「なぁテンマ……やっぱりこれ着なきゃダメか?」


「なんで? めちゃくちゃ似合ってるぞ」


 ミーナのドレス姿なんてこんな機会でもなければ見られないからな。本人は似合っていないと思っているみたいだけど、今日は化粧のせいか微かに残っていた少女の面影が消えて一段と美人になっている。


「ドレスなんて私たちには分不相応だよねー」


 そう言いながらフィーはマーメイドドレスでやってくる。身体のラインがはっきりと出るのでスタイルの良さが際立っている。ミーナと同様に綺麗ではあるのだが、ミーナと違うのはフィーには可愛さが残っていてなんとなく親しみやすい雰囲気がある。こんなお姉さんが近所にいたら間違いなく子供たちの初恋は奪われるだろうな。でもごめんな、俺の奥さんなんだ。


「わわっ……! すみませんトワさん」


「おっと、大丈夫ですか? 慣れていないと転びますので普段よりも歩幅を小さく意識するといいですよ」


「大丈夫なの! ココも初めは慣れなかったの!」


 アロエは初めてのドレスで着られている感じがあるな。まぁそこも可愛いが。一方でトワは慣れたものだと着こなしている。ココは自信満々という感じだがまだちょっと着られているな。お姉さんぶっているのが可愛い。


 そして意外だったのはクーコとミツキの2人だ。2人とも普段全く着ていないはずのドレスを自然に着こなしている。


「何度か着る機会があっただけじゃ」


「これでも1000年近く、タマモ様に至っては3000年近く人の世界に紛れているわけだからな」


 なるほど、年の功というやつか。トワが言うには今の帝国の流行をしっかり抑えているそうだ。知識をアップデートしているあたり経験値が高い。


 そうしているうちにぼちぼちと招待客が屋敷にやってきた。数人の貴族と社交辞令的な会話をしたが、もうすでに顔と名前が一致していない。きっとトワとクーコは覚えているんだろうな。


「テンマ様、そろそろ開始のご挨拶を」


 招待客がある程度集まったところで開始時刻となったみたいだ。何がそろそろなのかはよく分からないがトワに従っていれば間違いないので言われるがままに動く。


「えー、みなさま、本日はお集まり頂きありがとうございます。このたび皇帝陛下よりバルムンクの名を頂戴いたしましたテンマ・バルムンクです。ささやかなものではございますが宴の席をご用意いたしました。帝国ではあまり馴染みのない珍しい料理もご用意しておりますので、ぜひお楽しみください」


 俺が話し始めるとエッセンス商会の人が料理を並べ始める。立食形式で好きなものを食べられるシステムだが、こういう場であまりガツガツと食べる人はいない。しかし主催者側の俺たちは料理が足りなくなるのが一番困るので招待したゲストよりも10人分は量を確保している。あとはワインやシャンパンを数揃えて飲食に関してはこれで盤石の構えだ。


 食事を楽しんでくれと開会の挨拶をしたわけだが、俺も食事をとはいかず次々と挨拶に人が来る。7人の妻を見て俺を好色家だと思った人から私の娘も是非どうですかと打診されたがそれは丁重にお断りした。


 パーティの開始から30分ほどが経過したところ、大物ゲストの登場に会場がざわついた。皇帝ヴァレンスとベネトナシュである。


「皇帝陛下と……ベネトナシュ皇女殿下!?」


「名付けである皇帝陛下はともかく、社交界にも滅多に参加しないことで有名な皇女殿下がなぜ……?」


 こんな声がちらほらと聞こえてきた。ベネトナシュの社交界嫌いは常識らしく、そのベネトナシュは不躾な視線を気にも留めないで皇帝ヴァレンスとともに俺たちがいる主催者席の方にやってくる。


「久しいなバルムンク卿、すっかり時の人じゃないか」


「おかげさまでな。外に出るとその話題で持ちきりなんでいつバレるんじゃないかってヒヤヒヤだよ」


 竜殺しだとか叙爵だとか話題を作った張本人だ。聞けば、皇妃様が主催する女性限定のサロンでも俺のことはたびたび話題にあがるそうだ。ちなみにこのサロンだが、ただのお茶会などとバカにできるようなものではない。上位貴族の御婦人や御令嬢が集まれば自然と流行が形成される。つまりここでの評判はある意味では帝国における絶対的な価値観とも言えるのだ。なのでここで悪くない評判を得られているというのならベネトナシュの嫁入り先に箔を付けるというヴァレンスの狙いは間違いなく成功していると言えるだろう。 


「はははっ! 悪いがもうしばらく時の人でいてもらうぞ」


 このおっさんめ。自分の思い通りにことが進んでいるからか実に楽しそうだ。ヴァレンスがそう言うと俺の隣にいたトワが少し横にズレる。そうして空いたスペースにベネトナシュが入ってくると会場が再び大きくざわついた。


「ありがとう。トワイライト君は相変わらず正装が似合うね」


「口説く相手を間違えていますよ。ベネトナシュ様は今日は白衣じゃないんですね」


「はっはっは! ボクだってそのくらいの良識は持ち合わせているさ!」


 いや、前に王国との外交の場でやらかした前科があるって聞いてたからちょっと不安だったんだ。しかし白ではなく黒のドレスを選んだのか。ちょっと意外だった。


「ドレスだとだいぶ印象が変わるな。いつもの白衣も良いと思うけど、黒も似合うんだな」


 見た目だけならダウナー系だから暗い色が似合うんだ。そのベネトナシュは顔を真っ赤にして俺とは目を合わせてくれないが。


「トワイライト君、この男は普段からこうなのかい?」


「これに関してはベネトナシュ様の耐性が無さすぎるだけですよ。ちょっと褒められただけでこれは流石に拗らせすぎでは?」


「ほぉー? じゃあトワイライト君は男性経験があることがそんなに偉いとでも言うのかい?」


 こ、拗らせてんなぁ。この2人は相変わらず仲が良いな。すぐ煽り合いを始めるんだから。というか、ここにベネトナシュと初対面の人もいるんだけどこんなみっともない姿見せて大丈夫? 


「初々しい反応じゃのー。まるで誰かさんを見ているようじゃ」


「タマモ様、多分違うとは思うんですけどそれって私のことを仰ってます?」


「おお! たしかに言われてみれば年季が違ったのぉ。こっちのは1000年拗らせとるんじゃった」


「タマモ様ぁ……」


 ひでぇ……。こっちは一方的すぎて煽り合いにすらならないな。そんなことよりも何も言っていないのにいじめられるミツキ可哀想すぎる。


「バルムンク卿のところは奥さん同士の仲が良いな」


「まぁ険悪になる理由がないんでね」


 そういうことを言ってくるってことはヴァレンスのところはそうではないのだろう。まぁうちは第一夫人とか第二夫人とか名目上言ってるだけで実際は序列がないからな。


 ヴァレンスは「その方がベネトナシュも安心か」と言うと、手をパンパンと大きく鳴らして貴族たちの注目を集めた。


「あー、察しのいい奴らは気付いているだろうが、この度ベネトナシュとバルムンク卿が結婚することになった。まぁ俺としてはこんな娘に貰い手が出来ただけでも一安心ってもんだ。どうか盛大な拍手で祝福してやってくれ!」


 サプライズ的に発表された俺とベネトナシュの結婚。それに対する拍手はまばらで、そこからはさまざまな思惑が透けて見えた。



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