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第125話 アロエとベネトナシュの邂逅

 あのあとなんだかんだローザさんに根掘り葉掘り聞かれて色んな話をしました。間違いなく変態なのはローザさんです。


 そんなこんなで結局ベネトナシュ様に会いにいくのは放課後になってしまいました。


「なんだかんだこっち側に来るのは初めてなんですよね」


 研究棟は学校の敷地内にはありますが校舎からは離れていますからね。特別な用事でも無ければ来ることはないでしょう。


「お嬢ちゃん。迷子かい?」


 研究棟に入るといきなり受付? 事務? の人に迷子扱いされてしまいました。ここに用事があってくる学生だっているんですよ!


「すみません。ベネトナシュ様にお会いしたいのですが」


「なんだあの子のファンかい。お嬢ちゃん、アポはとってるのかい? アレでも第二皇女だからアポイントなしで会うのは厳しいよ」


 アポなし訪問はダメなのでしょうか? コアタイムなので研究室の方にはいると思って来たんですが。


「まぁ無理ならすぐ諦めな。じゃないと憲兵を呼ばなきゃいけなくなるからね」


「分かりました」


 その時は仕方がないので外で出待ちしますか。とりあえず研究棟の中には入れてもらえました。この研究棟の一室にベネトナシュ様が教授を務めている軍事技術開発を目的とした研究室があります。


「ここですね」


 ベネトナシュ様の研究室は研究棟の中でも1番大きい部屋が割り当てられています。その部屋をノックをすると目の下に大きなクマを作った無精髭を生やした白衣の男性が出てきました。


「なに? 学生が何の用?」


「初等部のアロエと申します。ベネトナシュ様はいらっしゃいますか?」


 こ、こわい。男性は私のことを10秒くらいじっくりとかけ、首を90度に傾けたりしながら頭の先から足の先までをじろーっと見てきました。


「あ、女の子だぁ」


 今更!? ちょっとこの人怖すぎるんですけど!


「教授、なんか初等部の女の子」


 あ、でもちゃんとベネトナシュ様を呼んでくれるんだ。なんだろう、悪い人じゃないんだろうけど良い人というには怖すぎます。


 奥の方にいらっしゃるんでしょうか。奥からベネトナシュ様と思われる人の声が聞こえてきました。


「アルビレオ君。学生が来たらまず名前と要件を聞いてくれと言ってるだろう。あと、それができない学生は追い返せとも伝えたはずだが?」


「あー……なんだっけ……じゃあそういうことだから」


 ちょっと!? なんで追い返そうとするんですか!? 私自己紹介しましたよね!? やっぱこの人ヤバい人だ!


「あ、アロエです! テンマ様のことでお話があって参りました!」


 私がそう言うと奥でパリーンと何かが割れることが聞こえてきて、それから白衣の女性がすごい勢いで走ってきました。


「アルビレオ君すまないが片付けといてくれたまえ。さぁアロエ君ちょっとこっちに」


 ベネトナシュ様に連れられて教授室へ。なんか今日こういうの多いですね。


「わざわざ来てもらって悪かったねぇ。学校に通っているのは聞いていたんだけど、なかなか校舎の方に行く機会がなくてね」


「いえ! ベネトナシュ様が来られたら大騒ぎになってしまいますから。私の方からもっと早くご挨拶に伺うべきでした」


 もしかすると挨拶に来るのを待っていたのかもしれません。だとしたら第二皇女様を相手にとんでもない失礼を……。私が申し訳ない気持ちになって小さくなっていると、ベネトナシュ様は私の頭を撫でてくださいました。


「全くの他人というわけでもあるまい。そんな畏まらないでくれたまえ。あ、なんなら気軽にナアシュと呼んでもいいんだよ?」


「流石にそれは私が白い目で見られるので勘弁してください」


 第二皇女様をあだ名で呼ぶなんて畏れ多いにもほどがあります。そんなことしたら間違いなく私が常識のない子だと思われちゃいますよ。


「ふふふ、アロエ君はトワイライト君とはまた違った良さがあるねぇ。可愛い妹が増えてボクは嬉しいよ。それで、今日来てくれたのはただ挨拶をしたかっただけじゃないんだろう?」


 あ、そうでした。ご挨拶も大事な用事ですけどね。


「お兄様から指輪を預かってきています。どうぞ」


「ありがとう。アロエ君のもお揃いなんだねぇ」


「はい、みなさんお揃いなんですよ。なんだか家族の証みたいで嬉しいです!」


 離れているときもこれを見たらなんだか胸がぽかぽかしてきて思わず頬が緩んでしまいます。


「キミ、さてはいい子だな? ボクもその家族の一員になれることを嬉しく思うよ。ほら、これでボクともお揃いだね」


 ベネトナシュ様いい人だなぁ。それにミーナさんやフィーさん、トワさんたちとはまた違ったかっこよさがあって素敵です。


「あぁそうだ。今後研究室には勝手に入ってくれて構わない。これが研究室の鍵でこっちが職員証だ。研究室にアロエ君のデスクを用意しておくよ」


「えぇ!? そんな職権濫用いいんですか!?」


「将来有望な学生を囲い込むのは他の研究室でもやってるからねぇ。いわゆる暗黙の了解ってやつだよ」


 ベネトナシュ様の研究室は1番人気で学校の卒業生でも試験に通らずなかなか入れないという話を聞いたことがあります。そんなところに私がフラフラと入っていいのかなぁ……。でもトップのベネトナシュ様がこう言ってるし。何より私もちょっと研究に興味があったり……。


「ベネトナシュ様は軍の研究をしてらっしゃるんですよね? いったいどのようなことを?」


「そうだねぇ。色々なモンスターの素材を合成してレアスキルの装備を造り出す研究と言えばいいのかな。まぁ今はテンマ君が持ってきたヘルヘイムドラゴンの素材を試すのがメインになってるけどねぇ。あぁ……それこそ今度研究室を覗きに来るといい」


 ベネトナシュ様は「だからはいこれ」と言って研究室の鍵をくださいました。今度研究員のみなさんにもご挨拶に伺わないとですね。別に今すぐでもよかったのですが、ベネトナシュ様の研究室は定時でお仕事は終わりで残業はほとんどないそうです。その理由はベネトナシュ様が働いていると誰も休めなくなってしまうからだとか。


「もうこんな時間か。暗くなる前に帰った方がいい」


 ベネトナシュ様はもう少し教授室でお仕事をしてから帰られるそうです。


「す、すみません邪魔してしまって」


「邪魔だなんて思っていないさ。ボクもキミと話せて楽しかったからねぇ」


 ベネトナシュ様は社交辞令ではなく本心でそう思ってくださっているみたいです。さらっとこんなこと言えちゃうなんてかっこいいなぁ……。


「そ、それでは失礼します。今日はありがとうございました、ナアシュ姉様」


「ぐはっ!」


 い、言っちゃいました。逃げるように教授室を出てしまって反応を見ていませんでしたけど不敬じゃなかったでしょうか。



 side ベネトナシュ


「私の妹が可愛すぎる」


 あんないい子だなんて思っていなかったから舞い上がってしまった。どうしよう、ちゃんと姉らしくできていただろうか。


「出来ることなら毎日来て欲しいねぇ」


 つい欲が出て研究室に誘ってしまった。アロエ君も言ってたけど職権濫用だ。しかしアロエ君の成績はかなり良かったはず……うん、大義名分はこちらにあるねぇ。


 ただ一つ懸念があるとすれば、アロエ君がうちの研究室に馴染めるかどうかだ。誘ったのは時期尚早だっただろうか……?


 そんなことを考えていたらボクの部屋のドアがコンコンと控えめにノックされた。アロエ君かと期待したがノックの仕方で違うと分かってしまう。このノックの仕方はアルビレオ君だな。


「どうぞ」


「失礼します。教授、ヘルヘイムドラゴンの『宵闇』装備とヴィーナスドラゴンの『金星』装備の合成についてのレポートです」


「あぁ、ありがとう」


 アルビレオ君からレポートを受け取る。レポートには必要な素材と実験の方法、素材の合成によって発現したスキル『宵の明星』についての詳細と考察、費用対効果などをまじえた結論が具体的に記載されている。


 うーん、研究に関して言えば有能な男なのは間違いないんだけどねぇ。ちなみにアルビレオ君はボクがレポートに目を通している間も研究の内容や反省点を次々と語っている。ボクが一切目を合わすどころか相槌すら打っていないのにだ。キミ、人と話すの初めてかい?


 やはりこんなところにアロエ君を誘ったのは間違いだった? いやでもアルビレオ君が1番ヤバいだけで他は()()大丈夫だから……。


「──なので素材の比率を変えての追加検証が必要だと」


「ふーん。まぁいいんじゃないかい? レア度が全く違う素材でも新スキルが発現したのは嬉しい傾向だねぇ。報告書を見る限り『宵闇』よりスキルの性能も良いみたいだし、キミの研究テーマだから方向性はキミに任せるよ」


「ありがとうございます」


「あぁそれと……このレポートは議会で発表するから第一著者にはアルビレオ君の名前を入れるように。それ用にこのレポートをもう少し大衆向けにした資料も作成すること」


 アルビレオ君も口演を経験するのに良い機会かもしれないねぇ。これも研究者として必要なことだよ。


 レポートを返すとアルビレオ君は死んだ魚のような目をしていた。議会に顔と名前を売るのは出世やキャリアアップに繋がるのだが、そんなに口頭発表が嫌なのか。しかしこの研究室の予算も議会が決めていることだからねぇ。研究費のためにも実績をあげていることを証明してくれたまえよ。


「2ヶ月後には発表だ。まぁ既に出来上がっているものをまとめるだけだからそう大変でもないだろう」


「あれ、教授の指なんか光ってませんか?」


「ん?」


 一体どうしたんだ唐突に。だいたい人の指が光るなんてそんなことあるわけないだろう。


「あ、指輪か」


 怖っ! ボクがレポートを読んでいる時もボクの方を見て熱心に語ってたよねぇ!? あの時気付いてなかった、というか左手の薬指の指輪を見て反応がたったそれだけ!? ボクが言うのもなんだけどもうちょっと他人に興味を持った方がいいんじゃないかい?


「また資料が出来たら確認お願いします」


「あぁ……うん」


「では失礼します」


 あ、相変わらずこの男が何を考えているのかさっぱり分からん。アロエくーん、たすけてぇ……。



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