第124話 アロエの癖(へき)
全員分の結婚指輪が完成したという連絡があったので早速受け取りに行ってきた。お揃いのものを身に付けるとよりファミリー感があっていいな。
家に帰ってからココにもプレゼントする。
「ココ、お兄ちゃんのお嫁さんじゃないけどいいの?」
「もちろん。家族じゃないか」
「わぁい! ありがとうなの!」
うん、仲間外れは良くない。あとはベネトナシュに渡しにいかないとなんだけど……。
「あの、それなら明日私が行きましょうか?」
「アロエが?」
「はい。ベネトナシュ様は普段学校附属の研究棟でお仕事されているので」
あ、そういえばそうだったな。あんまり結婚指輪を当事者の2人以外から渡すことないと思うけど、まぁ結婚指輪って体をとった実質ファミリーリングだからアロエが渡す分には問題ないだろう。
「じゃあ悪いんだけど頼んでもいいか?」
「全然大丈夫です。私も一度ご挨拶に行かなきゃなって思ってたのでちょうどよかったです」
しっかりしてるなぁ。ならその言葉に甘えてアロエに任せるか。
sideアロエ
登校して早速お兄様から授かった指輪をお渡ししようと思ったのですが、私も授業があるのでちょっと忙しなくなってしまいそうです。なのでこれはお昼休みに渡しに行きましょう。無くさないようにベネトナシュ様のはアイテムボックスに保管しておきます。
「うへへ……」
そして私の左手の薬指にも同じデザインの指輪がはまっています。なんだかお兄様も今同じものをはめていると思うと心があったかくなりますね。
「おはよアロエちゃん……ってどうしたのアロエちゃん! お顔がすごいだらしないことになってるよ!?」
「はっ……! あ、おはようカレンちゃん。えへへ、ちょっとね」
いけないいけない。女子がしちゃいけない顔をしていたみたいです。カレンちゃんはさすがは女の子と言うべきか、私の左手にある指輪に気がついたみたいです。
「あ、アロエちゃん!? もしかしてそれって!?」
「あ、気づいちゃいました? 結婚指輪です」
私がカレンちゃんに指輪を見せようとしたら教室内の女子たちがこぞってこちらにやってくるではありませんか。
「アロエさん! 結婚なされましたの!?」
「やーん! 素敵ぃ!」
「お相手は? イケメン?」
すごい熱量でちょっとびっくりしました。貴族とか関係なく女性はみんな恋バナが大好物ですからね。まぁ仕方ないのでみなさんには私のお兄様の馴れ初めのところからじっくりとお話ししてあげましょう。
「あ、アロエさん。話し始める前に少々お待ちを。ちょっと男子、うるさいですわよ!」
「うぉぉぉぉおおお!!! 誰だその男! 許せねぇ!」
「アロエさん……あの僕に優しいアロエさんが……? 僕に気があるんじゃ無かったのかい……?」
「は? お前アロエさんのこと狙ってたのかよ」
「お前こそ平民の女なんか眼中にねぇって言ってたじゃねえか!」
一体どうしたんでしょうか。机に思いっきり頭を打ちつけている人もいますし大丈夫なのでしょうか。
「はい、いいですわよ」
いいのかな……。結婚という非日常の話題に興奮する女子と発狂して暴れ出す男子たちでなんかすごいカオスな状態になっているんですけど。
「というか別に私の結婚なんかでそんな盛り上がらなくていいですよ」
聞かれたら答えますけど。いや聞かなくても話しますけど。幸せのお裾分けってやつです。
「アロエちゃん……盛り上がらなくていいって言う割には指輪を勿体ぶって見せびらかしてきたよね……?」
「おノロケになりたかっただけですわよ。幸せ絶頂のときくらい許して差し上げるのが良い女というやつですわ」
「そっかぁ」
え、私って側から見たら許せるとか許せないとかそんな次元の面倒くさい女になってたの? 態度改めよ……。
授業が終わってお昼休みになりました。なんやかんやで授業の合間の休み時間毎に質問攻めにされてしまって疲れましたね。っと、また捕まる前にベネトナシュ様のところに行かないとですね。
「アロエさん、ちょっとお時間よろしいかしら」
「……はい」
そう思って教室を出ようとしたところをローザさんに呼び止められてしまいました。ベネトナシュ様のところに行くという用があるので忙しくないわけではないですが、なにやら神妙な面持ちだったのでここはローザさんを優先しましょう。
「ここではなんですから」と近くの空き教室まで連行されました。
私が中に入るとローザさんはドアに鍵をしめて「これで誰も入ってきませんわね」って……ええぇぇぇ!? 私もしかしてローザさんに狙われてる!?
「さてアロエさん、あなたどこまでヤりましたの?」
「ちょっ……!? なんでいきなりそんな話するんですか!?」
うん、そんなわけなかった。普通に下世話な話をするためだったみたいです。ちょっと意外でした。
「か、勘違いしないでいただけます!? わたくしも3年後には許婚との結婚が決まっていて嫁入りすれば私の1番の仕事は子を成すこと、つまり殿方の夜の相手というわけですわ。でもそんなこといきなり言われてもどうすれば良いか……」
「あ、あぁ……そういうことですか」
下世話な話とか思ってしまってごめんなさい。ローザさんは真剣に悩んでいるんですね。ならばはぐらかさないで真剣に答えてあげるのが良い女というやつでしょう。
「でも私の場合はあまり参考にはならないと思いますよ」
「ヤったんですの!?」
訂正、一割くらいは下世話な話がしたいだけの気がします。まぁ別にいいですけど。
「私は第三夫人であるトワお姉様に手伝っていただきました」
「さ、3人で……? 上級者ですわね……」
「だから参考にならないって言ったじゃないですか。ローザさんの場合は事前に勉強しておくだけでいいと思いますよ」
経験者なんて周りを探せば既婚者のメイドさんとか最悪お母様に話を聞くとか出来るでしょう。でも最初からそんな上手くやろうと思わない方がいいってクーコさんが言ってました。
「それに自信がないのなら相手の方に任せてしまえばいいんですよ」
「そんなんでいいんですの?」
「はい。お相手の方に気を遣わせてしまいますけど、でもむしろそうして気を遣ってくれることに私愛されてるなぁってきゅんきゅんしちゃいますよ。もちろんローザさんにとって子を成すのは大事なお役目だとは思いますけど、やっぱり愛を確かめ合う行為ですから、仕事だとか義務だとか、そんな愛のない行為が続いたら辛くなっちゃいますよね」
「愛を確かめ合う行為……たしかにそうですわね。お役目のことを意識しすぎて本質を忘れるところでしたわ。流石はアロエさん、いいことおっしゃいますわね」
まぁ全部クーコさんの受け売りだけど……。
「で、やっぱり初めては痛いんですの……?」
「はい……痛かったです。なので本当に最初は上手にやろうなんて考えない方がいいです」
「そうなんですのね……怖くなってきましたわ」
「たしかに最初は少し動かれるだけでも辛かったですけど、でもだんだんと幸せになってきちゃうんですよ。気を遣ってくれてたお兄様も余裕が無くなってくるとちょっと乱暴になってきて、あぁ我慢できないんだぁ可愛いなぁってなっちゃいます」
実はお兄様のあの余裕のないときのお顔が大好きだったり……ってなんでローザさんそんな離れていくんですか!
「アロエさん! あなた変態ですわ!」
「えぇっ!?」
変態じゃないですよ失礼な! ローザさんも経験すれば絶対同じ気持ちになりますから!




