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第12話 レベリング

 ミーナ達と話をした翌日、俺はいつも以上にレベル上げに精を出した。まぁ、別れ際に聞いたミーナの言葉に影響されたのは間違いない。


「私のレベルは61。『剣豪』レベル9だ」


 それを聞いた時に1秒でも早くレベリングしたくなった。これがこの世界にぽっと出ただけの俺と冒険者を5年やっている人の差だ。この差を埋めるのは俺の頑張り次第ってわけだ。


「けど、背中が見えないってわけじゃない」


 俺は『異世界人』の称号のおかげで経験値が2倍になっている。これだけで5年の差は2.5年まで縮まる。しかしそれは同じペース、同じ効率で狩りをした場合だ。

 例えば、 Dランク以上になると商隊の護衛依頼なんかが入ってくる。こういう依頼は1日、2日拘束される割にそこまで大きな出番がないなんてこともある。実質経験値0のようなものだ。

 対して、俺は10時間以上スライムやウルフを狩っている。そこには圧倒的な効率の差がある。この効率を加味してこの世界のBランク冒険者と呼ばれる人の領域まで俺が到達するのに必要な時間を昨日の夜に軽く計算してみた。


「1ヶ月で追いつく」


 今のペースで行けば、1ヶ月でこの世界のBランク冒険者に並ぶことが出来る。なんならこれでも遅く見積もっている。一つ懸念があるとすれば、ここら一帯のスライムを狩りつくしてしまってスライムがいなくなるというケースだ。それを考えた俺は、多少の効率は落ちるだろうが東西南北全てのエリアを使っていくことにした。


 コボルトをワンパン出来るようになれば更に効率もあがる。防御力の高いコボルトを一撃で倒すためにはどうするか、考えられる方法は2つ。単純なのはレベルを上げて物理で殴る方法、そしてもう一つは武器を調達する方法なのだが、ここで問題が発生した。

 しかし、今使っているギルドで貰った剣は攻撃+12、武器屋で売っている最低ランクの鉄の剣だと+14〜16という程度のものだった。その次のグレードの銅製の剣は+20という性能だったが、とても予算的に買えるようなものでは無かった。


 今使っている剣と比較して4しか変わらないとなるとこのままでも良い気がしたが、効率を考えて購入することにした。


「お、コボルトだ」


 南の森で目当ての獲物を発見する。早速攻撃を仕掛けたら前と同じようにガードされた。


「ワンパンならずか……」


 剣士レベル10のボーナスも加えると前回より攻撃の数値はだいぶ上がっている。それでもコボルトを倒すことは出来なかった。


「まぁ、それならそれでいい」


 これで倒せてたらあと2レベルあげれば良かっただけの話になってしまうので、むしろ倒せない方が武器を買った価値があるとポジティブに捉えることも出来る。

 とはいえ、レベルが上がるまではなるべくコボルトを避けるのが吉。狩れるモンスターの絶対数が少なくなるのは向かい風だ。


 仕方がないのでコボルトを避けながらスライムと一尾を狩る。ただ、コボルトに関しては防御されなければ一撃で倒すことが出来たので背後から奇襲できる時は倒していった。


【レベルアップしました】


 1時間ほど狩ったところで今日1回目のファンファーレが鳴る。


 テンマ(18):レベル19

 体力:56

 攻撃:90

 防御:53

 魔力:25

 器用さ:41

 精神力:43

 素早さ:88

 職業:『剣士』 レベル13

 称号:『異世界人』『スライムの天敵』


 レベル61まで程遠く感じるが、1日2レベルのペースでも20日でレベル60だ。後半キツくなるのは目に見えているので出来ればレベル40くらいまでは1日2〜3レベルくらいのペースで上げていきたい。



 その日は昼食も食べずにひたすらスライムと一尾を倒し続けた。そして、夕方に転機は訪れた。


【剣士レベルが15にあがりました】


 これにより攻撃+15のボーナスが手に入る。攻撃ステータスは3桁に突入した。コボルトを見かけた時にあえて防御させてみた。今まで会心攻撃が発生した際は防御されても一撃で倒せていたのだが……。


「エフェクトはなしか」


 目の前には崩れ落ちるコボルトの姿。ついに会心が出なくてもコボルトをワンパンで仕留めることに成功したのだった。


 今日の戦果は上々だった。俺は気分良くいつもの常設依頼の報酬を貰いに行く。南の森だとウルフが出ないため代わりにGランクのコボルト討伐依頼を受けているのだが、常設依頼のように報酬が青天井ではないため今日の稼ぎはいつもより少ない。


「6000ゴールドかぁ……」


 スライムの討伐数も減っている気がする。森は見通しが悪く地形的にも狩りにくいというデメリットがあった。最高効率で狩るなら北の草原がやはり1番だが、明日は西に出向こう。北の草原付近のスライムが飽和状態になるまで待ちたい。


「おい、スライム野郎」


 そんなことを考えているとふとそんな罵声が聞こえてきた。スライムのような軟弱者がいるのかもしれない。だが、スライムをバカにしているってことはスライムレベリングを知らないんだろうな。まぁ競合相手ができても困るので誰にも教えるつもりはないが。


 この事実を俺しか知らないんだからと内心で勝ち誇る。気分良くギルドを出ようとしたところで俺の行く手がゴツい装備を身に纏った1人の男によって阻まれた。


「ん?」


「無視してんじゃねぇよ! お前だよお前!」


「俺?」


「お前以外誰がいるんだよ」


 いや、知らんが? ここには俺以外にもいっぱい人はいるんだが? むしろ俺の可能性の方が低いまであるだろ。


「お前、姐さんとはどういう関係だ?」


「姐さん」


 誰だ姐さん。俺にそんな名前の知り合いはいないが。


「ミーナさんだよ! 昨日お前がミーナさんと一緒に宿に入って行くところを見たってやつがいるんだよ!」


 まぁこそこそ入ったわけじゃないからな。そりゃ見たやつがいてもおかしくないだろう。というか、むしろ俺は連行された側なんだが?


「しかも、フィーネさんまで」


「一緒にいたな。それの何が問題なんだ?」


「こいつ……!」


 え? なんで俺がキレられてんの? あれか、熱狂的なファンみたいなやつか! 


「お前みたいなスライムばっかり狩ってる初心者が、ミーナさんに相応しいわけねぇだろ! レベル40、戦士レベル24の俺と、見るからに初心者なお前、ミーナさんが俺を選ばないなんて間違っている!」


「なんの話をしているんだ?」


「とぼけんな! パーティメンバーに決まってるだろ!」


 決まってねえよ。パーティのパの字も出なかったわ。


「本当にパーティの話なんか出てないんだけどなぁ」


「じゃあ何しに行ったんだよ」


 ふむ、それを言われると答えにくいな。スライムブーツのことは隠しておいた方がいいと言われたばっかだし。


「まさか……ヤったのか?」


「は?」


 なんかとんでもないワードが聞こえた気がするんだが? 分かったコイツ馬鹿だ。


「しかもフィーネさんも一緒だとぉぉ!! もう我慢できねぇ!!」


 しかもとんでもねぇ馬鹿だ。あろうことかギルド内で剣を抜いてきた。流石に周りの冒険者も動いてくれるか……と思ったのに誰も助けちゃくれない。それどころか一部はやれやれー! と囃し立てる始末。バカばっかだわ。


「うぉ、危な」


 言葉とは裏腹に男が振るった剣を余裕をもってかわす。『戦士』は防御に補正がかかる代わりに素早さが下がるという特徴がある。スライムブーツのおかげもあって、こいつよりも俺の素早さの方が勝っていた。


「てめぇ! 剣を抜いて戦いやがれ!」


 そんな損にしかならないことをなぜ受けないといけないのか。さて、周りの連中はあてにならないが受付嬢が動いてくれている。おそらく俺がいなくなった後に何らかの処分がくだるだろう。


「よし、逃げるか」


 どうせもう帰るところだったし、明日も朝から狩るから早く寝ないとな。

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