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第113話 選択授業 sideアロエ

「ねぇアロエちゃん。アロエちゃんは選択授業は剣術にしたんだっけ?」


「はい、カレンちゃんは礼法でしたよね?」


 隣に座ってるカレンちゃんがそんなことを聞いてきました。選択授業というのはクラスの全員が同じ授業を受けるのではなく、剣術、兵法、礼法(マナー)の3つから好きなものを選んで受けることができます。まぁ好きなものを選べるとはいいますが、基本的には将来騎士を目指す子は剣術、政治家を目指す子は兵法、貴族のご令嬢やカレンちゃんのような商家の子は礼法に行くのが一般的になります。


「でも心配だよ。選択授業は上級生と合同でやるんだよ?」


 選択授業の特徴は上級生に混じっての授業になることです。同じ学年で競わせるよりも年の垣根を越えたほうがお互い刺激になるというのが学校の方針だそうです。


 そんなことよりも剣術と礼法で別れてしまったために少しの時間とはいえカレンちゃんと離れ離れになるのは寂しいですね。私も礼法にしておけば良かったかなぁ。



 運動着を身につけて競技場に行きます。全体的な男女比は8対2ほどです。まぁ騎士団がそんな感じなので分かってはいましたけど。


「よ、よお……お前も剣術だったのか」


 そんなことを考えていたらクラスメイトのフォルクス君に話しかけられました。フォルクス君は以前の体力テストのあとくらいから度々話しかけられるようになりましたね。なんでもトロルホルン子爵家の次男で、騎士団や近衛騎士を目指して頑張っているんだそうです。剣術を選択するのはフォルクス君と同じで家督を継がない次男、三男が多いんだとか。


「アロエさんの場合は心配するだけ無駄なんだろうね」


 まぁ中にはアレン君みたいな公爵令息なのに剣術を選択するような人もいます。アレン君の登場にフォルクス君が露骨に嫌そうな顔をしていますが、真剣に騎士を目指しているフォルクス君からすると公爵家のアレン君の存在はあんまり面白くないのかもしれませんね。でもそんなことより私の場合は心配するのが無駄とはどういうことでしょうか。


「私、剣術は専門外ですよ。一応支援職なので」


 全然剣士とはかけ離れた職業ですからね。最近吟遊詩人とダンサーをマスターしたばかりですから。今はこの2つをマスターしたときに解放された『アイドル』という支援職です。


「だ、だったら俺が教えてやるよ。これでも子爵家の人間だからな。武闘会の出場経験者に昔から家庭教師してもらってたんだ」


 フォルクス君は実力者から指導を受けていたということもあって自信があるみたいですね。ただ、その自信の源はフォルクス君のアイデンティティにはならないみたいです。


「おいおい。家に武闘会の出場者を呼ぶなんて貴族なら当たり前だろ?」


「っていうか、むしろそれがスタートライン的な?」


 私たちの話を聞いていたのか、近くにいた先輩がそんなことを言いながら絡んできました。


「アレン君、当たり前なんですか?」


「うーん。たしかに僕の師匠も一応出場者ではあるけど……でもそれはあんまり関係ないと思うよ」


「まぁそうですよね。いくら強い人から指導を受けていたとしても指導を受ける側がそのことに胡座をかいて鍛錬を怠っていたら一緒ですよね」


 結局は本人のやる気というか努力次第というか。私も気をつけないと……ってあれ? なんか私睨まれてませんか?


「アロエさんってナチュラルに人を煽るよね……いや、正論なんだけど」


 全くそんなつもりはなかったんですけど。むしろどこに煽っている要素があったのか教えて欲しいんですけど。あ、もしかして彼らは胡座をかいているという自覚があって、それを私が指摘したと思ってるってことですか? いや、私あなたたちのことなんて知らないんですけど。


「お前平民なんだってな。ちょっと可愛いからって貴族をなめてると痛い目見るぞ」


「俺っちは女だからって容赦しないよ。調子に乗った後輩ちゃんにお灸を据えてやるのも優しさ的な?」


 うわぁ……めちゃくちゃ怒ってる。まぁでもこの2人はそんなに強そうに見えないのでなんか虚勢を張ってるみたいで可愛らしいですね。


「こいつが、可愛い……? 冗談だろ?」


 フォルクス君、聞こえてますよ。女の子に対して流石に失礼では?


「あー、そこの男子2人。モテないからって新入生に絡むのはやめるっすよ」


「チッ……チャチャか」


 どうやってこの上級生を撃退しようかと考えていたら他の上級生の方が注意をしてくれました。でもこの人どこかで見たことあるような……。


「君がアロエちゃんっすよね。ウチはチャチャ、姉のララとナナから話は聞いてるっすよ」


「あ! 妹さんでしたか! ララさんとナナさんにはお世話になってます!」


 ララさんとナナさんには騎士団で可愛がってもらってます。たしかに雰囲気とかそっくりです。他にも騎士団の関係者はいらっしゃるんでしょうか。


「ドルフさんの弟もいるっすよ。ほらあそこにいるダミアン君がそうっす」


 チャチャさんが指をさした方を見るとなかなかガタイの良い男性が「指をさすな」とジェスチャーと口パクで伝えてきました。


「あっはっはっは! 何言ってるか分かんないっすよ〜」


 チャチャさんに悪気はないみたいですけど……火に油ですよね……。ダミアンさんからめちゃくちゃ闘気が出てます。流石はドルフさんの弟さん、それだけでさっき絡んできた先輩とは格が違うことが分かります。とかそんなこと思ってたらなんか手招きされてるんですけど。


「ダミアン・サリチルだ。悪いな、チャチャはアホなんだ。構うのが面倒なら無視していいぞ」


「いえ、全然。先ほども助けていただきましたし……」


「別にあの2人をボコすくらいわけないだろ? 兄貴から聞いてるぞ」


 ドルフさん!? 一体どんな話をしたんですか!?


「こらー! ダミアン君! なーに色目使ってるんすかー!」


「使ってねぇよ……。まぁなんだ、あいつもアホだけど悪いやつじゃない。さっきみたいなことがあったら俺かあいつの名前を出せばいいから」


「あ、ありがとうございます。ダミアン先輩」


 見かけによらず優しい人でした。というか、チャチャさんのことも認めているみたいですし、なんだかんだでダミアン先輩ってチャチャさんのこと好きなのでは?

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