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第11話 ミーナとフィーネ

 今日の狩りを終えてギルドに戻る。精算を終えて今日の収穫にほくほくしつつ、ちょっとお高級なレストランにでも行こうかなぁと思ったところを呼び止められた。


「お、テンマじゃないか。生きていたか」


 異世界転生の初日にお世話になったミーナだ。これが知らない人なら気分がいい時に何だと思ったが、ミーナなら仕方がない。恩人を蔑ろにするほど人間性は終わってないつもりだ。


「ミーナか、お陰様でな」


「ギルドに登録したというのに全く姿を見かけなかったから心配だったんだ。元気そうで何よりだ」


 ちょっとこの人いい人すぎない? 俺の中で異世界人の温もりがあったかすぎると話題になってる。ほんのさっきアリサさんにいつも通り冷ややかな目を向けられたのはもう忘れた。


「ちょっとミーナ〜! 私をほっといて男の相手〜? もしかして……」


「あぁすまんフィー。テンマ、紹介するよ。こいつはフィーネ。私のパーティメンバーだ」


「元がつくけどね〜」


 随分とノリが軽そうな人だ。元パーティメンバーってことは今は解散しているということだろうか。


「ミーナはソロじゃなかったのか」


「ちょっと前まではな。これでもこの街唯一のBランク冒険者パーティってことで一目置かれてたんだぞ?」


 マジかよ。ミーナってそんな強かったのか。けどそんな強いなら解散するの勿体ない気がするけどな。


「解散の理由は?」


「方向性の違いってやつだよ〜。パーティには私らのほかにも2人いたんだけど、そいつらは王都に拠点を置きたい、ミーナはもう少し力をつけてから行くべきだって」


「お互い譲らなかった結果、パーティは解散となった」


 あぁ、だから方向性の違いね。そういえばアリサさんもそんなことを言っていた気がするな。


「テンマはどうだ? パーティメンバーは見つけたか?」


「いや、俺は当分ソロで行くつもりだ」


「ソロか……出来ればおすすめはしないが……」


 モンスターだけならともかく、野盗などと遭遇することを考えてというところだろう。1人だと格好の獲物になるというのは容易に想像できる。


 ただし、人通りが多い街の近くではその限りではない。


「大丈夫だ。当分はスライムかウルフしか狩らないつもりだから」


「そんなんじゃランクが上がらないだろ。それではまともな装備も買えない……ってなんでお前スライムを履いてるんだ!?」


「うわぁ……君ぶっとんでるね〜」


 また初対面の人にヤバいやつ認定された。俺のことを心配してくれるのはミーナだけだよ。


「待て待て。こういう装備なんだよ」


「「は?」」


 渾身の「は?」いただきましたありがとうございます。うん、ついにミーナにまで見限られたかもしれない。


「鑑定してくれれば分かるから」


「鑑定って……凄腕の商人でもなきゃそんなこと出来るわけないだろ」


 そうなの!? また俺変なこと言っちゃった!? というか鑑定って商人のスキルだったのか。


「これはヘイストスライムを倒したら出てきたドロップアイテムだよ」


「ヘイストスライム?」


「聞いたことないね〜」


 知らないとは言わせないぞ。それに真面目なミーナが冒険者ノートを読んでいないとは思えない。


「冒険者ノートにも書いてあっただろ? 素早いスライムってやつだよ」


「お前、あれを倒せたのか!?」


 え? 何かそんな驚く要素あった? 確かに素早くて攻撃を何回か避けられたけどただのスライムだったぞ?


「君、見かけによらずやるね〜」


 見かけによらずってところにちょっと引っかかるが美人2人に褒められて悪い気はしない。


「あれってそんな強いのか?」


「強さは分からん。だが、逃げ足がとんでもなく速くて私は倒せなかった」


「私も逃げられちゃったよ〜。逃げられた人の話は腐るほど聞くけど、倒した人の話なんて聞いたことなかったな〜」


 逃げられる……あ、『スライムの天敵』の効果かぁ〜! スライム系統のモンスターに逃げられなくなるって効果があったはずだ。めちゃくちゃ有用な称号だったんだな。


「これってやっぱりレアなアイテムだったんだな」


「やっぱりって、そんな強い効果が……いや、すまん。これはマナー違反だな。忘れてくれ」


「別にそのくらいいいが?」


「お前は新人だから分からないかも知れないが、あんまり自分の情報を他の冒険者に話さない方がいい。あんまり同業者のことを悪く言いたくはないが、中には脅して奪おうなんて考える不届き者だっているんだ。もちろんギルドでは厳しく取り締まっているんだが、完全に0とは言えない」


 あー、やっぱそういうアウトレイジなところはあるのね。


「ならミーナ達に話す分には問題ないな。ミーナはそんなことしないだろうし、フィーもミーナが信頼する相手みたいだから信頼できる」


 実際、見ず知らずの人に優しく出来る人がそんなことするわけないと思うし、なんかそうなったらそうなったで俺の見る目が無かったなぁで納得できると思う。

 けど、2人の反応を見るにどうやら冒険者にとっての信頼というのは特別な意味があるみたいだ。


「お、おい……それは買い被りすぎだ」


「ありり〜? ミーナったら照れてるの〜?」


「うるさい!」


「あだっ!」


 照れ隠しなのか揶揄われたことに対する仕返しなのかは分からないが、割と強めのチョップをお見舞いされたフィーネは頭を押さえながらしゃがみ込んだ。仮にミーナをレベル50、剣士レベル30だと仮定したら攻撃は300近く、あるいはもっとあるはずだ。そりゃ痛いよなぁ……。


「あー、大丈夫か?」


「やざじいんだね……お姉ざんぎみのごどずぎになっぢゃいぞう……」


 そんな痛そうに言われても全くときめかない。言っちゃ悪いけど色気ゼロだなこの人。


「とりあえずこの装備のことなんだけど」


「ひどいよ〜、扱いが急におざなりだよ〜」


「テンマ、フィーのことは気にせず続けてくれ」


 いや扱い酷いな、って思ったけど「もう痛くないだろ?」とミーナが言ったら「うん」とフィーネはケロッとして立ち上がった。


「この装備の能力は、素早さ+30と『隠密』スキルレベル+1だ」


「「は?」」


 2度目の「は?」いただきました。なんとなく察してたけどやっぱり強いよなぁこれ。


「やっぱり強いよなこれ」


「ちゅよしゅぎだばか!」


 焦って噛み噛みになってるミーナに「ちょっとこい!」と言われてギルドから連れ出されると、そのまま少し早歩きなにやら立派な建物に入る。そこはミーナが拠点にしている宿だった。


「少なくとも他に人がいるところで話すもんじゃない」


 部屋の中に入ったところで開口一番そう注意される。どうやら俺が思っているよりもヤバい代物だったらしい。


「これってそんななの?」


「スキルがついてる装備はなかなか珍しいよ〜。しかも隠密って私と同じ『マスターシーフ』のスキルだもん。スキルレベル1とはいえ上位職のスキルが手に入るなんて激レアだと思うよ〜」


 激レアまでいっちゃうか〜。確かにそんなアイテムを持ってますよって吹聴するのは不用心かもしれないな。仮に俺から盗んだとして、流石に自分で使うバカはいないと思うがどこぞの商人に売るなどすれば結構な金額になるだろう。今後外ではこの話はしないようにしよう。


「もう一つ質問していいか?」


「なんだ?」


「ミーナのステータスってどんなもんなの?」

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