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第107話 宝物庫

 トワは約束通り2時間で起こしてくれた。睡眠をしっかりとって回復したから頭もすっきりした気がする。クリアな頭になって気付いたけどこれ帰りもこうなるってこと? ゼータの街から帝都の屋敷までのテレポートもかなりキツかったけどこれはその比じゃない。


「これ普通にキツすぎるんだが?」


「今日は何回も長距離テレポートをしてますからね。日も傾いて来ましたし、宝物庫を調べるのは明日にしますか?」


「いや、もう今日全部終わらせよう」


 みんなには早く帰るって言ったのに2時間も時間を使ってしまったからな。動けるなら動かないと。


「この時間なら父はまだ執務室にいるはずです。行きましょう」


 トワに案内を任せて王城を歩く。勝手知ったる自分の家だ。当たり前だが迷うことなく王の執務室へと到着した。トワが部屋のドアをノックすると中から「入れ」と返事が聞こえた。


「失礼します」


「おお、トワイライトにテンマ伯爵か。久しぶりだな」


「なっ……! トワイライト……!?」


 トワの入室に続いて俺も入室する。執務室には王様の他にトワの顔を見て青ざめた顔をした青年がいた。


「お久しぶりですお父様。ユリウス兄上もご健勝のようで何よりです」


「くっ……」


 あ、トワのことを処刑しようとした1番上の兄か。そんな相手に元気そうですねはすごい皮肉だな。


「2人が来るなんて珍しいこともあるものだな。どうしたのだ?」


「お父様、宝物庫を見せて頂きたいのですが」


「おお、そのくらいいくらでもいいぞ! ほれ、宝物庫の鍵だ。終わったら返してくれ」


 相変わらず軽いなぁトワパパ。そのほうがこっちはありがたいんだけどさ。


「父上! 宝物庫には多数の国宝があるんですよ!? せめて警備の兵を呼んでください!」


「ユリウスよ。仮にお前が宝物庫に入りたいと言っても鍵は貸さん。もちろんヴォルフガングにもな。私はそれだけトワイライトとテンマ殿を信頼しているのだ。今のお前はその信頼を積み上げている最中だということを忘れるな」


 俺たちに甘かったのは信頼してくれていたからだったのか。というか思っていたよりも厳しいことを言っていたのでびっくりした。実の親に赤の他人の方が信頼出来るって言われるの辛すぎるだろ。


 俺は部屋を出ていくまでユリウスに睨まれ続けた。気持ちは分からなくもないけどそんなことしてると頑張って積み上げている信頼が崩れるぞ。


「まぁ兄に対して怒りの感情なんて持ち合わせていないんですけどね。むしろ感謝しているくらいですよ」


 部屋を出て宝物庫に向かう道中にトワが心境を吐露する。自分を殺そうとした相手を眼前に心中穏やかでないと思ったが、意外とそうでもないらしい。


「あんなことになったのにか?」


 比喩でもなくギロチンで首を刎ねられる寸前だったんだ。俺なんか当事者じゃないけどトワを処刑しようと画策したやつが何をのうのうと政務してんだって思ったよ。


「あんなことになったからですよ。そのおかげでテンマ様の寵愛を受けられるようになったのですから」


「いや、まぁそうなんだけど……」


「それとも、あんな出来事が無くてもわたしを攫ってくれましたか?」


 それを言われると返す言葉もない。仮に並行世界というものがあるのなら俺とトワが結ばれていない世界線の方が多いのかもしれない。


「そう考えると多少なりとも感謝の気持ちが湧いてきたよ」


 それが2人の兄が暴走したおかげというのはやっぱり癪だけど。


「着きましたよ。ここが宝物庫です」


 そうこう話をしている間に宝物庫に到着していた。ぱっと見で他の部屋との違いがわからないのはセキュリティのためか。特に重厚ではない扉の鍵を開けて中に入る。


「あれ? ここが宝物庫?」


 たしかに高級そうな美術品や工芸品があるんだけど、ちょっと他の部屋より多いってだけであまり大差ないように思える。いや、俺の目利きの問題かもしれないけど。


「よいしょ……!」


「何やってるんだ?」


 そう思っていたらトワが壁際にあった本棚を押し始めた。もしかしてだけどまさかアレか? 本棚の裏に隠し部屋があるとかそういうお約束のやつか? そう思っていたら本当に本棚の裏に通路が隠されていた。マジでこういうギミックってあるんだ。


「この部屋自体はダミーで本命はこちらです」


 なるほどねぇ、どうりで数が少ないわけだ。トワについて隠し通路を進んだ先は調度品などは一切ない想像通りの宝物庫だった。


「こりゃ凄いな」


「どれも王家にとっては不要な物ですけどね。このように宝物庫の肥やしになっているのが関の山なんですから」


「身も蓋もないな」


 でもこういう貴重なものとかも外交のカードになるんじゃないの? 少なくともここにあるものからは何かしらのオーラを感じるからそれに魅入られる人はいそうだ。ちょっと鑑定してみるか。


 聖剣『エクスカリバー』…… 装備可能レベル200以上。攻撃力2000、器用さ2000以上。過去に勇者が使用したとされる伝説の剣。ステータス要求値が高く選ばれた者にしか扱えないことから意思を持つ剣と呼ばれる。千年前の剣匠により鍛えられた至高の一振り。


 伝説の剣置いてあるんだけど。もしかしてここにあるのってこんなのばっかか? 下手したらあるぞヘルヘイム装備。いやあったらダメなんだけど。


「何か見つけましたか?」


「いや、勇者の聖剣なんてあるんだなって」


「あぁ……エクスカリバーですか。勇者の死後に王国が引き取ったと聞いています。初めの100年くらいは二代目勇者を誕生させようと毎年帝国で行われている武闘会のようなお祭りを開催して優勝者にエクスカリバーを使った試し切りのデモンストレーションをさせたそうです。しかしエクスカリバーの使い手は現れず毎度毎度微妙な空気になってしまったために消滅したとか。まぁ剣に選ばれるかどうかなんて誰にも分からないですからね」


 へぇ……帝国でも武闘会はすごく盛り上がってたもんな。そんな大会で勇者が誕生したなんてことになったらとんでもない経済効果が生まれそうだから国が主体になってやるのも分からなくもない。まぁそんなうまくいかなかったみたいだけど。優勝者が決まってボルテージが最高潮の時に「あぁ〜! 残念今年も勇者は現れなかったー!」なんて行事が行われたらなんかスッキリしないわな。微妙な空気になるのも分かる。でもそれって剣に選ばれなかったんじゃなくて多分ステータス不足だよな? 鑑定で分からなかったのだろうか。


「テンマ様なら聖剣に選ばれるかもしれませんね。ちょっと持っていただいてもいいですか?」


「まぁ装備できると思うけど、勝手に触っていいのか?」


「どうせ倉庫に置いてあるだけですから、ガラクタと一緒ですよ」


 なら遠慮なく触らせてもらうか。俺がエクスカリバーを鞘から抜いた瞬間、白い閃光があたりを包んだ。


「流石ですテンマ様。まさかとは思いましたが本当に聖剣に選ばれるなんて」


「感動してるところ申し訳ないんだけど、これトワも装備出来るぞ」


「いえ、そんなはずはありません。わたしは幼い頃に経験済み…………ほんとですね」


 トワに手渡したあとも聖剣は眩い光を放ち続けている。今まで挑戦した人が装備できなかったのはただのステータスの問題だったんだな。


「エクスカリバーを装備するのにはレベルが200以上と、あと攻撃力と器用さのステータスが2000以上必要らしい」


「そんな制限があったんですね……」


 鑑定したらすぐに分かったけどな。『異世界人』の称号で使えるようになったスキルだからこれも神格というやつのおかげか。


「どうですか? これを機に勇者にでもなってみますか? きっと誰しもが惜しみない賛辞をおくることでしょう。地位も名声も女性も好き放題できますよ」


「興味ないなぁ」


 俺は有名になりたいわけではないからな。俺はみんなと楽しく暮らせればそれでいいんだよ。


「とてもハーレムの主の発言とは思えないですね」


「そ、そんなことよりヘルヘイム装備はなさそうだなぁ」


「露骨に話題を逸らしましたね」


 分が悪いのは分かってるからな。あと俺は別に女性なら誰でもいいってわけじゃないんだぞ? 実際奥さんにしか手を出していないし……え? それが当たり前? ともかくそんな節操の無い姿は見せていないはずだ。


「テンマ様、終わりましたよ」


「ん? 何が?」


「宝物庫の中にヘルヘイムの名を冠する装備はありませんでした。何か気になるところがございましたか?」


「あ、そう。いや、大丈夫だよ」


 あ、俺がぼーっとしてる間にトワがちゃっちゃと終わらせてしまったみたいだ。え? 何しに来たの俺?

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