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第10話 逃走

 南の森に到着して早速『一尾』を発見する。一尾というがこれは尻尾の数で名前が変わり、突然変異を繰り返していく中でその数が増え、伝承では九本、つまり『九尾』まで進化を遂げたものが存在するらしい。そして、それが討伐されたという記録もないんだとか。もしかしたらあなたの隣の住民が魔法で姿を変えた九尾なのかもしれないという脅し文句まで記述されていた。

 まぁ伝承に過ぎず、最後の文言からしてこの世界の本当に存在する怖い話とか行き過ぎた都市伝説のようなものだろう。信じるか信じないかは俺次第だ。


「くぅん……」


 弱いモンスターということもあって簡単に倒せた。見た目がキツネに近しいゆえに申し訳ない気持ちになる。ウルフと違って襲いかかってこなかったのも更に精神的にくる。


「経験値も職業経験値も4か」


 まぁ4で良かったよ。これで10とかだったら人の心を捨てて狐狩りを決行していたかもしれない。


 あとはコボルトという二足歩行のモンスターがこのあたりには出没するのだが、こちらはウルフと同レベルのモンスターだ。ウルフよりも攻撃力とスピードは遅いが、二足歩行な分防御に秀でているらしい。


「こいつか」


 俺は1体のコボルトと対峙する。第一印象は二足歩行をした猫背の犬だ。コボルトは爪で攻撃を仕掛けてきた。


「なるほど、たしかにウルフより遅いな」


 噛みつきと引っ掻きがメイン攻撃のウルフよりリーチは長いが、対してこちらは剣を持っている。剣道三倍段ではないが、リーチが長い方が有利だ。

 俺はコボルトと距離をとりながら剣を振るう。しかし、コボルトはあいたもう片方の手で俺の剣を弾いた。


「うぉ、マジか」


 ウルフならば攻撃後の隙だらけのところに1発入れて終わりなのだが、コボルトはその隙が少ない。とはいえ、ノーダメージとはいかなかったみたいでコボルトの腕からは大量の鮮血が飛び散っている。


「これで終わりだ!」


 更に追撃をすると、今度は直撃してコボルトは倒れた。経験値は8、職業経験値は4だった。


「ダメだな、効率が悪い」


 ここはレベル上げには全く向いていないことが分かった。それが分かっただけでも収穫だと俺は南の森を後にした。



「まぁ、こっちに戻るよね」


 レベル上げの聖地、北の草原だ。スライムとウルフが恋しくなってきたんだ。


「あ、ホーンラビットだ」


 気付かれるとすぐ逃げられてしまうのだが、幸い今は背後を取っていて気付かれていない。


「気付かれていないなら狩るか」


 バレないように気配を消しながら慎重に距離を詰めていく。いつもはこんな小細工をしてもある程度の距離で気付かれてしまうんだが、今回は真後ろまで行っても気付かれることはなかった。あ! これがスライムブーツの隠密の効果か! 


 これは強い。これなら安定してホーンラビットを倒すことが出来る。ホーンラビットの角を取っていけばお金稼ぎも同時に出来るようになるってわけだ。更に職業経験値30、効率が一気に良くなった。


【剣士レベルが10にあがりました】


 職業レベルが上がったことで攻撃+10というボーナスが貰えた。もしかしてレベル15になったら攻撃+15? 剣士レベル30になればボーナスだけで攻撃のステータスが100以上あがるな。更に忘れてはいけないのが剣士以外の職業だ。それでも同じようにボーナスが貰えるのだとしたら……。


「やばいことになるなぁ……」


 魔法を使いたいと思ったが、魔法使いになるとおそらく魔力のステータスがボーナスで貰えるのだろう。今の強みを活かせなさそうだから正直後回しでもいい気がしてきた。それよりもレベル上げの効率を上げたい。順当に攻撃をあげるのがいいのだろうか……。


 スライムとウルフを狩りながら俺は次はどうするべきかと考える。気付くと街道をかなり離れた森まで踏み込んでしまっていた。


「あれ、もうこんなとこまで来ちゃったのか」


 もしかして移動速度が上がっている? まさかこれもスライムブーツの素早さ+30のおかげか? そうだとしたら神装備すぎるんだが?

 そして素早さがレベル上げの効率に影響してくることも分かった。次は素早さのボーナスが貰える職業にしよう。


「うぉ!」


 引き返そうと思ったら目の前を何かが掠めていった。

 辺りを見渡したところそれが木の枝だと分かる。


「あれが『トレント』か」


 移動は遅いが、その代わりに枝を素早く動かして獲物を狩るモンスターだ。トレントの攻撃範囲の外から魔法で攻撃をすればハメ殺せるらしいが、生憎俺は魔法を使えない。弱点である火属性攻撃も出来ないため引くのが良さそうだ。


 動きが鈍いので逃げるのは容易い。トレントは純粋なステータスならEランク程度のモンスターなのだが、攻略法が確立しているということもあってランク的にはFランクとされている。確かに厄介さで言ったらウルフの群れの方が上だろう。


「あばよー」


 いつかボコボコにしてやるから首を洗って待っていてくれ。その時は通常攻撃でワンパンしてやろう。

 RPGはレベルを上げて物理で殴るのが最強なんだよ。


 そのあと、俺はスライムとウルフを狩れるだけ狩った。


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