1-2-9 開戦
1-2-9 開戦
ニタニタと笑いながら、ゆっくりとオーガが歩み寄ってくる。
大きい、3メートルはある。
直径が子どもの胴回りより太い上腕でこん棒を引きずっている。
まじかー、こいつに統率されてたのか。
斥候がやられてからの素早い襲撃とか、15匹のコーンウルフを不均等に3:12に分けて襲撃させるとか、なんか不自然だったんだよな。
相当に頭が良いんだろう。
「リダンさん、オーガって話し合いが通じたりしませんかね」
「通じるやつもいる。……だがこいつは無理だろうな」
見るからにバーバリアンだしなぁ。
それに絶対優勢を確信している相手に差し出せる対価もない。
「オーガさん! 戦いたくないんだ、見逃してもらえないか」
でも一応声はかけてみる。
リダンさんはじめ、待機組がぎょっとした顔でこちらを見ているけど。
もしも話し合いで妥協点さぐれるならそれが一番いいと思ったんだよ。
無理だったみたいだけどな。
オーガは笑みを深めながらこちらに向かってきた。
こん棒を肩に担ぎなおし、コーンウルフになにか指示を出している。
戦うしかないか。
ヘイトは俺に向いているみたいだ。
「おいリダン、どうするんだ」
「コーンウルフからだ、予定通りにやるぞ」
射程内に入ったのでリダンさん達四人の猟師が矢を射かけた。
事前の作戦通り2人で一匹のコーンウルフを狙っている。
「キャィン!」
コーンウルフ達は飛び退って避けるが避けた先に時間差でもう一人の矢が飛んでくるのでうまく命中した。
二匹が戦闘不能だ。
みんな腕がいいな。
仲間を撃たれたコーンウルフ達は足を止めて警戒モードになったがオーガは歩みを止めない。
俺の目前まで来るとこん棒を大きく振りかぶった。
まずは柵を壊すつもりだ。