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1-2-8 怒鬼

1-2-8 怒鬼


北の家畜小屋へ行き、村の広場に連れていく。


二重柵で囲ってコーンウルフを待ち構えるのが今回のミッションだ。


リリが家畜小屋へ行くことにリダンさんが難色を示したが、普段良く世話をしているリリがいると家畜たちが連れ出しやすいだろうということで同行が決まった。


村長の家から手槍と弓矢を支給され、北へ向かう。


「家畜はどのくらいいるんだ」


「ヤギが10頭、牛が5頭、馬が5頭です」


リリが指を折りながら教えてくれる。


なかなか多いな。


「あの子たちは恐らく今年の冬を越せないと思います」


リリが青い顔をしてそう言った。


今年は冷夏だったため、作物が足りない。


ヤギも牛も村人が飢えれば食糧だ。


しかしヤギの乳も牛の労働力も大切だ。


「コーンウルフで済めばいいな」


コーンウルフはまずくはないらしい。


狩られず狩れば食糧だ。


喰うか喰われるか。


原始的な世界だ。



「来たぞ!」


「応!」


家畜小屋に到着し、リリ達女性陣が家畜の縄を外しだしたところで3頭のコーンウルフが躍り出てきた。


男たちが気合を入れて手槍を構える。


「ヴァジュラ・オン!」


俺も気合を入れ、水色の空間を出現させる。

数日間練習して時間遅延空間の発動は自由にできるようになった。


眉間に力を入れて、大声で昔のアニメの主人公の変身時掛け声を叫ぶと発動する。


なんだそりゃだけどそれで発動するから仕方ない。


そして今のところ、これ以外の方法では意図的に発動できない。


「他の方法も当然あるだろうから頑張って探そう」


なにはともあれコーンウルフである。


リダンさんの矢を躱して態勢を崩した一匹に駆け寄り、不壊の短剣グラディエーターを叩きつける。


これでこいつは戦闘不能だ。


その間に村の男たちが一匹を取り囲み、手傷を負わせた。


手傷を負った一匹と後ろで様子を見ていたもう一匹は不利を悟って逃げていった。


コーンウルフも判断が早いな。



コーンウルフの気配を感じ取った家畜たちがおびえてしまってずいぶん手間取ったが、その後は襲撃を受けることなく村の広場にたどり着いた。


広場で柵を作る担当が頑張ったので一重目の柵は大方できていた。


杭を打ち、家畜たちを縄につないでいると南に向かった一団が帰ってくる。


「おい、大丈夫か」


「……なんとかな、だが牛はやられた。ひどい目にあったよ」


南には10匹を超える大部隊が来たらしい。


家畜たちを置いて逃げてくるしかなかったようだ。


命の方が大事だ。


仕方ない。


「これで家畜の味を知られた」


西担当の猟師ジャイロさんが苦い顔で言う。


この村にうまいものがあると分かったコーンウルフはさらにご馳走を求めてこの広場にやってくるだろう。


「だが、腹は満ちたはずだ」


「ああ、少し時間が稼げたな」


みんな南に向かったメンバーを慰めながら二重目の柵を作り出す。


あれ、詳しく聞いてないけどこの村の人たちはみんな軍属なのか?


くよくよしないし、仕事が早い。


ドワーフの民族性なのかもしれないけど、すごいな。


ああ、昨日聞いたがこの村の人たちは全員ドワーフらしい。


翻訳スキルがドワーフと訳しただけで実際はちがう発音だが。


基人ベーシックとなにが違うかは良くわからない」と言っていた。


少し耳がとがっていて小柄な者が多い、火と土を信仰している。


それだけらしい。


……そんなわけないだろうと思うので、今度ゆっくり話を聞いてみたいな。


そのためにも、この状況から皆で生還する必要がある。



柵を作り終わり、皆でくじを引く。


三交代制で柵の中に待機。


槍を突き出すスキマの前でじっと待つ。



昼の間、コーンウルフは姿を現さなかった。


南の家畜小屋の牛たちで満足したのだろう。


来るなら夜か。


今夜来るか明日の夜来るかが問題だよな。


今夜来てほしい。


今はこちらも緊張感を保てるが、明日の夜には疲れはてているだろう。




夕方、一頭が姿を見せた。


斥候だろう。


これは今夜来るか。



そして夜。



「オーガだと……」


隣にいるリダンさんの顔が絶望で染まっていた。


14匹のコーンウルフを引き連れて、1頭の巨大な鬼が歩いてくる。



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