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1-2-6 要請

1-2-6 要請


リダンさんの家に帰りついたのはすっかり日が落ちてからだった。


「リダン!」


リノリーさんが村の門から飛び出してきた。


「リノリー!」


熱く抱きしめ合う二人。


愛し合っている夫婦って良いもんだな。


ぐっとくる。


人の温かさに触れてこない人生だったからな。


良いなぁ。


……そうだ、この世界での目標をこれにしよう。


再会を抱きしめ合って喜べるような人と出会おう。


仲良くなって笑い合おう。


それができたら、俺の失ってきた青春が報われる気がする。


「さあ、リダン。なにがあったか教えてくれ」


門には村長も来ていた。


リノリーさんの通報を受けて駆けつけてきていたのだろう。


なんというか、この人も良い村長だ。


リダンさんはリノリーさんと離れると村長にコーンウルフのことを伝えた。


「これでコーンウルフの群れがこの村の周囲を徘徊していることは間違いないな」


「はい、村に襲ってくるかは分かりませんが周知しておく必要があります」


「うむ、朝になったら村人たちを集めよう。ただ、念のため猟師たちには今から伝えに行くとしよう」


「そうですね」


この村には東西南北に一人ずつ猟師がいると言っていたな。


聞くと夜警・門番は全員で持ち回り。

村の大人は全員槍の訓練をしているとのことだった。


「リダン、ケガの具合はどうだ?」


「もともと痛めていた足をさらに痛めてしまった。正直杖なしでは歩けない」


「ふむ、ショウゴ殿」


「はい」


「この村はコーンウルフの危険にさらされている。よそ者と冷遇しておきながら都合のいい時だけ頼って申し訳ないが、もしもコーンウルフの襲撃があれば共に戦ってはもらえないだろうか」


村長が頭を下げてくる。


ちょっと驚いた。


権力者が他人の目があるところで頭を下げるのは良くないのではないだろうか。


俺の実力をリダンさんから聞いたことを差し引いても決断力があるな。


「冷遇されたとは思ってないですよ、よそ者が敵国に繋がる道からやってきたら警戒して当たり前です」


村長がハッと顔を上げる。


「知っていたのか?」


「勘です。俺の国では国境は川で仕切ることが多かった。川を越えて西に行くと領主の土地があるとリリに聞きました。行商人も西から来る。そしてこの村は川の東にあります。不自然だ」


「む……」


「そして今この村が皆兵だと聞いてあたりがつきました。この村は東の国に攻め込むための拠点になる隠れ村ですかね?」


「そこまで分かるか」


「半分当てずっぽうです。しかし……そんな大事な拠点の責任者なのによく俺の滞在を許しましたね」


「東の国レントの間諜にしてはショウゴ殿は怪しすぎるよ」


「ははあ」


「なまりも違う。服のあつらえも違う。ロック鳥の話は置いておくが、村の民であるリリを救ってくれたショウゴ殿に滞在を許すのはあたりまえのことだ」


ロック鳥の話、置いておかれるのか。


うーん、この世界の常識を知らないとはいえ作りこみが甘かったかな。

そして恩があるとはいえ、怪しいよそ者の滞在を許すことは決して当たり前ではないだろう。


優しいのだ、この人たちは。


「話を戻しますが、コーンウルフの襲撃の際はお手伝いしますよ。まだ8日ほどは、俺もこの村の一員ですから」


侠客は一宿一飯の恩を忘れず、出入(抗争)があればその家の一員として闘うものだというし。


……俺侠客じゃないけどな!



この世界には何の身寄りもない。


でもまあ、お人好しのドワーフ達の恩には、報いたい。






そしてその日の明け方。


15頭のコーンウルフが村を襲った。



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