第一段:これも日本文学課外研究部隊(四)
四
「寸劇、お疲れ様ー!」
まゆみ先生の音頭で、乾杯。鼎人の襲撃事件から数日後、私たちは普段通り文学PR活動に勤しんでいた。ただいま、二〇三教室で打ち上げの真っ最中。まあ、三回に一回はこんな感じでわいわいやっているんだけれどね。
「『徒然草』シリーズ、大好評だったわ! 次回もこの調子でいきましょ」
顔の前に手をそえて、おほほほほと笑う先生。本日も無垢な白いお召し物がお似合いでございます。
「今度、『伊勢物語』したい……です」
「あらー、いいわね。さっそく検討しておくわ」
唯音先輩の貴重な提案。ついに男役としてデビューしますか。
「あ、そーだ。まゆみ、宴会うまくいったのか?」
「歌合戦っスよネ、結果知リタいデス!」
先生にべたっと寄り添う高校三年と一回生。打ち上げですっかり舞い上がっているみたい。
「ふふっ、聞いて驚きなさい。歌合戦を制したのは……」
右手をサッと挙げて、先生は二人にドラムロールの口まねを命じた。ダララララララ……ジャジャン!!
「この私、安達太良まゆみよ!」
胸を張りすぎて、若干後ろに反った状態でのまゆみスマイル。その輝かしい姿勢に、後光がさしています。
「安達太良先生、さすがですぅ」
夕陽ちゃんの盛大なるスタンディング・オベーション。祝勝会に早変わりしたもよう。
「土御門先生は論外として、先生方の歌唱力ったら、もう素晴らしくて。まさか優勝候補の近松先生を超えてしまうなんて、思いもしなかったわ」
姿勢を正して、優勝者・まゆみ先生が語る。その最上級な歌声を聞いてみたいのですが、他の先生も気になってしまいます。
「んで、曲なに歌ったんだ?」
「ふふっ。十八番の『私がスーパーヒロイン!』よ」
あー。いかにも先生にふさわしい曲名ですよね。昔はやった歌なのかな。
「にゃにゃ、萌子タチでカラオケ大会しタイっスね☆ 冬休ミに行キまセン?」
「おう、賛成っ!」
「ええねぇ。今から練習しとかなあかんわ」
「……です」
「良し! 忘年会も兼ねて『年末歌の乱!』を開催しましょ。日本文学課外研究部隊の恒例行事に決定よ!」
『ラジャー!』
「はい、大和さんも一緒に!」
「ラ……、ラジャー」
いろいろありますが、これも日本文学課外研究部隊、だね。
―ということで、今後ともよろしく。
〈次回予告!〉
「安達太良先生伝説・その一! 空大食堂のメニューを一週間で全制覇した!」
「やせの大食いだったんだね」
「安達太良先生伝説・その十二! 愛用の指示棒でB号棟の悪を成敗した!」
「たぶん、悪って講義で寝てる人、だと思う……」
「安達太良先生伝説・その二十五! 白雲を自在に操れる!」
「それ、私たちがすごく困ってることなんですけど!」
「あらー、大和さん、本居さん。二人そろって何のお話?」
「ま、まゆみ先生!?」「安達太良先生!?」
―次回、第二段 「顧問著聞集」
「ふふっ。悪だくみしてるなら、担任として愛の一撃、お見舞いするけど?」
「あわわわわわ」
「誰か、お助けをー!!」