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モンスタースレイヤー ~竜の吐息を持つ者~  作者: 中村 海斗
はるかかなたへ
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剣とルーン

「やあ!はあ!やあ!」


切り開かれた森の中、佇む簡素な平屋が一軒、その軒先の平原では組み手を取る二つの影があった。


「どうした?息が切れているぞ。この程度でへばる様なら怪物の相手は勤まらん!」


一人はイシュメールだった。振り下ろされる竹刀をいなすのに徹し、時折隙だらけだぞと言わんばかりに相手の急所に竹刀を置いている。一方、竹刀を降ることに専念しているのはこの前、狼憑きに襲われていた少年リーチだった。


「まだまだだァ!」

一回転して横凪ぎに竹刀を入れる体制に切り替えるも、すぐに防げる場所に竹刀を持っていくイシュメール。だがリーチはこれにはすぐ対応してくると予測していた。竹刀を引っ込めると回転した勢いそのままにしゃがみこみ足を伸ばしてイシュメールの足をすくい取ろうとした。

イシュメールは飛んでそれを避ける、空中で逃げ場を失ったイシュメールに、リーチは引っ込めていた竹刀を振り抜いた。だが、イシュメールはそれを楽に防いだ、元々そこまでの攻防は読みきっていたのだ。イシュメールは続いて足を振り抜いた。


「と、ここまで」


イシュメールの足技はリーチの喉元に直撃する寸前に止められていた。


組手を繰り返す内に、イシュメールが技を当てることはないとリーチは学習していたが、蹴り抜かれる直前まで主張していた闘気は本物で、リーチは毎度の事ながら目をつぶっていた。


「良い攻撃だった。後、十手程先が読めれば、俺から一本取れるかもしれんな」


「僕って本当に成長してるの、イシュメール?」


リーチは口をすぼめて文句を言った。


「間違いなく成長している、三ヶ月前とは動きのキレも早さも比べ物にならないぞ?」


イシュメールが言うとおり、リーチはこちらの世界に来てから、昼夜を通して戦うための技や生き残るための知恵を叩き込まれている。その甲斐もあってリーチの身体能力は飛躍的に上昇していた。


「では組み手の訓練はここまでにして次はルーンを操る訓練に移行しよう」


「ええ~!またルーンの訓練?朝やったばっかりだよ!?」


著しく成長を見せる分野があれば、そうでない分野もあった。ルーンはリーチにとってもっとも苦手とする分野だった。


「前にも説明しただろう。どれだけ剣術を磨いてもルーンがなければ生き残る事は出来ない」


この世界では科学の代わりとしてルーンが発展しているのだと、リーチはイシュメールから教わっていた。その影響もあってか、この世界ではルーンが一般教養となっており、ルーンの不出来で将来が決まるのだという。一方でリーチはこちらの世界に来てから、どれだけ練習してもルーンが出せずにいた。


「きっと僕はその魔素っていうルーンのエネルギーを持ってないんだよ。違う世界から来たんだから」


「リーチの世界の人間も我々と同じく魔素を持っている。ただその存在に気付いていないだけだ」


「なんでそんな事知っているの?」


「今はルーンを操る事に集中しろ。この世界で暮らしていく上でルーンは必要不可欠な能力だ。特にお前にはな」


イシュメールは何故、異世界の存在を知っているのか。リーチは何度か訪ねた事があったが、その度に上手くはぐらかされてしまい、イシュメールと異世界の関係はリーチの中で目下最大の謎であった。


「何故、お前が狼憑きから狙われたのか。理由は解るか?」


イシュメールから何度も聞かされていた怪物の生態を、リーチは飽き飽きした様子で応えた。

「怪物はより多くの魔素を持っている者から襲う。僕が襲われた時に狼憑きはイシュメールよりも僕を目当てにしていた。それはつまり僕はイシュメールよりも多くの魔素を持っているという事になる」


「そうだ。そして俺はモンスタースレイヤーの中でも優れた魔素を持っている。つまりリーチは生来、怪物に襲われやすい体質だと言う事だ」


「まるっきり嬉しくない体質だね」


ルーンを扱えないリーチにとって魔素が多いという事は骨折り損のくたびれ儲けでしかなかった。


「さぁ、わかったら訓練を始めるぞ。まずはイメージを形作る所からだ」


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