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第06話 本能的に「無理♡」

今年のエイプリルフールどんな嘘つくかなと思って起きたら

今日は4月2日だったでござる

 落とし穴に落ち散々な目にあったホブゴブリンA

 彼は戦意を喪失し、ギャラリーのゴブリン達に引き上げられる

 意外と優しいなゴブリン

 ちゃんと骨棍棒も拾ってやって……


 <ゴスッ>


 え、殴った!?

 拾った骨棍棒で殴った!?

 集団で足蹴にもしてるよ!?

 なにしてんの君ら?

 味方じゃないの!?

 ホブくん丸まっちゃってるよ?

 止めないと!


俺「ウホァ! ウホ! ウホォーーーーーーーー!!!」


 俺は雄叫びをあげて広場に躍り込んだ

 チョップで切断しないよう細心の注意を払い、群がるゴブリンを優しく投げた

 フワッと浮かび上がりビタンと地面に叩きつけられるゴブリン達 

 拾っては投げ、つまんでは投げ、噛み付いてきたゴブも振り払い

 骨棍棒を取り上げ、雄叫びをあげ、大地をドラムの如く打ち据えながら走り回る


俺「ウホウホウホウホウホウホァーーーーーー!!!」


 トドメは怒濤のドラミングだ

 強靭な胸板を掌でドコドコと叩き、叫びながら強さをアピールする


 虐め ダメ 絶対


 ふと気が付けば広場からゴブリン達の姿は消えていた

 残ったのはハイゴブ3人衆とムラオサとその配下のみ

 俺は倒れたホブゴブリンAに肩を貸すと、広場の隅へと連れていく

 「ア、アニキ……トゥクン」みたいな顔してモジモジしてるのは無視だ

 そういやこいつ髪の毛あるな

 ゴブチーも髪の毛あったよな

 いや無視だ


 さあ、次は誰が戦うのかな?

 さっきみたいな事になってもゴリさんキッチリ仲裁するから安心していいですよ?

 順当にいけばホブゴブリンBだよね?

 あれ、ゴブリンメイジも出てくんの?

 しかもなんかムラオサに剣で脅されてカタカタ震えながらの出場なんですけど

 そしてハイゴブ‘sがビシッと効果音たててこっちを指差してるんですけど


 え、俺っすか?

 でもほら、2対1ですよ?

 しかも俺、平和主義なゴリラですよ?

 そう思って首を振った直後、ゴブチーが広場へと歩き出す

 対戦相手の震えがピタリと止まった


 ……はいはいそこまでー

 出ればイイんでしょ出ればー

 さすがのゴリラも女子を2対1で戦わせる趣味はないですよー

 平和主義は不戦主義とは違うのですよー


 俺は駆け寄ってゴブチーを制止する

 ゴブチーは「デヘッ」とか笑って広場の隅に戻っていった

 お、おい、アイツ今すごく残念な感じになってたぞ?

 大丈夫か?

 何か大切なものを失ってないか?


ホブB「ウゥ…… ウウゥ……」

メイジ「アウアウアー……」


 対戦相手のホブBとメイジがめっちゃ不本意そう

 まあそうだよな、俺も気持ちは同じだよ

 本能的に「楽勝♡」って感じがある

 相手も本能で「無理♡」って思ってるんだろう

 ん? ベクトル真逆だって? 気にすんな


 俺はおもむろに夢幻バナナを取り出し、皮を剥いてモグモグと頬張る

 バナナうめえ

 ホブゴブリンBはその様子に警戒心MAXだ

 俺が左手に持った皮をじっと見つめてくる

 いい兆候だ


 俺はバナナの皮をブラブラとさせながらゆっくりと歩を進める

 ほーれ ほーぅれ 皮だぞぉ?

 ホブゴブリンBが半歩下がった


ムラオサ「コロセ! サモナクバシネ!!」


 後ろに控えたムラオサが物騒な檄を飛ばす

 ホブゴブリンBはその言葉にビクッとなり、俺の方に走ってくる

 うん、半泣きだね


 俺はホブゴブリンBを待ち受け、奴が骨棍棒を振り上げたところでガンを飛ばす


俺「ウホァ!」

ホブB「ヒィッ!!」


 ホブゴブリンBの棍棒が空を切り、地面にポコンと当たる。

 うん、全泣きだね


俺「ホウァ!(ゴリラビンタ!)」


 すぱーん


 この距離なら外さない

 優しき右手ゴリラビンタによって軽く撫でられたホブゴブリンB

 涙をキラキラと輝かせながら意識を手放しパタリと倒れた

 峰打ちだ。安らかに眠れ


 それであとは……ゴブリンメイジですか?

 相方が頑張ってる最中に何やってるんですかね

 杖持ってカタカタ震えてるだけですか?

 そうですか


 バナナの皮ぽーい


 へちょり


 ゴブリンメイジの脳天に張り付くバナナの皮

 おかしい

 足が滑って転ぶゴブリンメイジ

 おかしい

 相変わらず張り付く場所と滑る場所の関連性が見えない


 ゴブサンもなんか苦々しげな表情してる

 トラウマか


ゴブリンメイジ「アヒェ! ウヒェ!!」


 ゴブリンメイジが七転八倒

 ぼんやり見てたら立つのを諦めたみたいだ

 何か杖こっちに向けて喚いてるな

 杖の先に火がついたぞ


 やばくね?


ゴブリンメイジ「【ファイアバレット】!!」


 杖先から射出された火弾が俺に迫る

 優しき右手ゴリラビンタで地面に叩き落とす

 火打ち石より便利そうだな

 狙いを外してボヤ出さないように気をつけないと


 それよりゴブリンメイジ

 すごい勢いで滑ってった

 まさかと思ったけど魔法って反動あるんだな

 案の定やばかったな

 いつか止まるといいな(他人事)


 さーて片付いたかと周りをみればムラオサさん怒り狂ってら

 けど俺の出番はこれで終わりだろ?

 あとはゴブサンに委ねるさ


俺「ウホ」


ゴブサン「任せろ」


 ハイタッチでゴブサンを送り出す俺

 なんかカッコ良くねえ?


ゴブチー「オリバ! かっこよかった!」


 おう、サンキューゴブチー

 どこが? とか聞いちゃいけないよな


ゴブロー「ア、ア、ア、アイツ ス、ス、ス、スベ……」


 なんかゴブローがめっちゃウケてる

 滑って笑ってもらえるんだから炎の大道芸人ゴブリンメイジも浮かばれるだろう

 あの技、芸人殺しバナナピールじゃなくて受験生殺しバナナピールって名前つけようかな


ホブA「アニキ! ツオイ!」


 いやお前なんでこっち陣営に混ざってんだよ

 勝ち馬? そうだね


 さあて、あとはゴブサンの頑張りを見ようじゃないか

 ドリンクはないけどバナナはあるぜ

 ゴブローとゴブチーも食べる?

 ホブAにもあげる。今回だけ特別な?

 バナナうめえ


 ゴブサンが槍を携え、ゆっくりと広場へ足を運ぶ

 ムラオサもまた怒りに震え、のしのしと歩いてくる


ゴブサン「ウオォォォ!!」


ムラオサ「ガアァァァ!!」


 わーお大迫力

 並ゴブ達ギャラリーも戻ってきてるな

 イノチガケってゴブロー言ってたし、負けた方は殺されてしまうのかな

 それがゴブリンの本能なんだろうか

 不公平かもだけど、ゴブサンが殺されそうになったら助けたいな


 ムラオサが剣を振り上げ、ゴブサンへと突進する

 ゴブサンは突進にあわせ、槍を突き出す

 すんでのところで身を躱し、足元へと滑り込むムラオサ

 脛に向け、横薙ぎに振るわれた剣をゴブサンが飛び越える


 一進一退だ


 戻ってきたギャラリー達も息を潜めて見守っている

 間合いをひろげ、静寂に包まれた広場の中心で睨み合うゴブサンとムラオサ

 膠着するかと思った瞬間、ゴブサンが動いた


ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ムラオサ「アガががががッ!!」


 力押しかよぉ!

 石つぶての乱打を食らったムラオサが思わず膝をつく

 一瞬でボロボロだ

 効果があると見て取るや、ゴブサンは詠唱を重ねる


ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ムラオサ「ヘババババッ!!」


 ゴリ押しだよぉ!!

 仰向けにどう、と倒れるムラオサ

 まあ飛び道具に剣1本で立ち向かうのは無理があるよな


 ぜえはあと荒い息をつくムラオサ

 ゴブサンはさらに追撃を加える


ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ゴブサン「【ストーンバレット】!」

ムラオサ「ごふッ!! ガハッ!!」


 もうやめて! ムラオサのライフはゼロよ!

 全身にくまなく痣をつくり、ところどころ出血している姿が痛々しい

 もう戦いを続ける意味はないだろう

 俺は広場の中央に進み出て、倒れたムラオサの脇に立った


俺「ウホ ウホァ!」


 勝者、ゴブサン!

 これ以上の戦闘は無意味!

 お互い武器を収めるように!


 そう心で宣言しゴブサンへと目を向けた俺の腹を


 地面に倒れていたはずのムラオサの剣が貫いた




 ……え?



 …………あれ?


ゴリラ、命の危機!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] バナナピールの親文字の方。 ネーミングセンスが素晴らしい。 [一言] 今回も面白かったです。 次回も楽しみにしております!
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