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第05話 腰ミノよりマント派の紳士


 朝靄をかき分け、一艘のイカダが湖を征く

 乗り込むは3人の戦士たち

 ゴブサン、ゴブロー、ゴブチー

 ゴブサンは骨の穂先をもった槍を携え

 ゴブローは軟鉄の山刀を腰に履き

 ゴブチーは木彫りの弓を携える

 彼らは油断なく辺りに目を配り、朝靄の先を見据えていた


 え、俺?


 俺は乗ってないよ

 泳ぎながらイカダ引っ張ってるよ


 そもそも乗れる重さじゃないし

 ゴブリン3人合わせたよりちょっと軽いくらいだろうし

 出航のとき「わかるな?」みたいな感じでロープ渡されたし


 ゴブサンとゴブロー、いろいろ作ってたんだな

 まずこのイカダだろ?

 槍も今の体格に合わせて分解手直ししてあるし

 ゴブチーが持ってる弓とかもあるし


 一朝一夕で準備できるものじゃないよな

 きっと、知恵に目覚めてすぐ準備を始めたんだろう

 力で上に立ちたいって闘争心はゴブリンの本能なのかな

 ゴリラには分からんよ


 ハーレムのトップを選ぶの、基本的にメスだし

 イケメンゴリラとすれ違うとウホっ♡イイオトコ♡てついていっちゃうし

 ハーレム略奪に来る荒っぽい奴もいるけどな


 ゴブサン「村 見えた 右 行け」


 お?

 ゴブサンが村を見つけたらしく、姿勢を低くする

 ゴブローとゴブチーも一緒だ

 水面からは靄が邪魔でよく見えないな

 じっと目を凝らしていると、唐突に視界が飛んだ


____________________

視覚転送サテライトアイ

ゴリラの操る低級魔法

指定したポイントに視点を生成し空間を超越して「観る」ことができる

ポイントさえ指定できれば距離に関わらず視点が生成可能

残念ながら暗がりは見えないが、応用範囲は極めて広い

____________________


 俺の知ってるゴリラと違う(安定)

 でも確かに村は見える

 石造りの家が100棟くらいかな?

 けっこうボロボロで屋根が落ちている家も多い

 まばらにゴブリン達が歩いてるな


 視覚を戻し、見つからないよう靄の中を迂回する

 湖の底に足がついた

 ロープを引っ張り、岸へと上がる

 イカダは適当な樹に縛っておこう


 体をブルブルと震わせ水気を切ると「ひゃうっ!?」と声が上がった

 ゴブチーすまん

 そんな恨みがましそうな目で見ないでくれ

 布を持ってるってことは拭いてくれようとしてたのかな

 あ、拭いてくれるのか

 ありがとう


ゴブチー「オリバおつかれ♡」


俺「ウホァ」


 やべえ天使だ

 ゴブサンとゴブローも見習ってくれ

 今日ちょっとゴリラ使いが荒いぞ

 まあ人生(?)かかった大勝負なんだろうし手は貸すけどさ


ゴブロー「イクゾ」


 おうすまねえ


 ジャングルを少し進むと村に着いた

 槍持ったゴブリンが見張りに立ってるな

 ゴブサン達がズンズン歩いていくとギャアギャアと騒ぎ出した

 あれ? ゴブリンてあんなに不細工だったっけ?


見張りゴブリン「テキ! テキ! クルナ!」


 敵じゃないですよー

 ハイゴブリンですよー

 ゴブサン達が滑舌いいのかと思ったけど並ゴブリンの言葉も分かるな

 ひと月で分かるゴブリン語、みたいな


 けどなんかずいぶん集まってきたな

 弓とか持ってるぞ

 大丈夫か?


ゴブサン「【ストーンウォール】!」

ゴブロー「【ストーンウォール】!」

ゴブチー「【ストーンウォール】!」


 平べったい石が地面から生えてきた

 大丈夫っぽいな

 俺のことはゴブチーが守ってくれてるな

 サンキューゴブチー


ゴブロー「【ファイアアロー】!」

ゴブサン「【ファイアアロー】!」


 ゴブサンとゴブローがなんか火の矢みたいなの撃ち返してる

 ゴブチーも適当に弓を射ってる

 顔を出したところに矢が当たらないか心配だな

 めっちゃ射ってきてるし

 矢が尽きないのかな

 あ、止まった


 ゴブサンとゴブローが石の蔭から出て行く

 矢は飛んできてない

 俺とゴブチーも出て行く

 ゴブリン大慌てしてる


 動かない石に向かって矢が尽きるまで射ったんだな

 馬鹿なんだろうか


 俺たちが近づいていくとゴブリン達はひれ伏した

 ハイゴブ‘sを崇めてるっぽい

 ゴリラは嫌われてるっぽい

 俺に襲い掛かろうとした並ゴブがゴブチーに蹴られてた


 ピクピクしてますね

 ご褒美でしたか?


 村の中は屋根の落ちた石造りの家ばかりだった

 石畳の道も整備されててなんか遺跡っぽい

 ゴブリン達は住んでるだけで、ここを作ったわけじゃないのかな

 ゴブリン達に囲まれてしばらく歩くと円形の広場に出た


ゴブサン「イケニエ広場 村長ムラオサ 来る」


ゴブロー「イノチガケ ムラオサ コロス」


ゴブチー「ゴブサン勝ったら新しいムラオサだよ!」


 ほほう

 これはゴブサンとムラオサがタイマンする流れ

 俺たちはギャラリーに徹すればいいと

 よし、見せてもらおうか

 はぐれハイゴブリンの戦いとやらを


 観戦用のバナナも準備した

 ゴブチーも食うか?

 うん、どうぞどうぞ

 いやゴブロー睨むなよ

 大事なことだってのは分かってるから

 集まってきた並ゴブ達にはやらんから

 ハイゴブリンになられても困るしな


ムラオサ「グハハ! グハハハ! グハハハハハ!!」


 なんだこの下品な笑いは

 あ、ムラオサか

 赤いマントの屈強なゴブリンがこっちに歩いてくる

 身長はゴブサンと同じくらいだけど、幅は5割増しくらい

 ゴブサンを細マッチョ、俺をゴリマッチョだとするとデブマッチョって感じだ

 お供も3人ばかり連れてるな

 ちょっとチュートリアルさんに聞いてみるか


____________________

【ゴブリンロード】

ゴブリンの上位種であるロード種

屈強な肉体を先祖返りによって手に入れた貴族階級

暴力によってゴブリン達を服従させ使役する

腰ミノよりマント派の紳士

____________________


 変態じゃねえか

 履いてねえのかよ

 履けよ

 ラ・マンが言えることじゃないけど


____________________

【ホブゴブリン】

体格と筋力に優れたゴブリン

手先が不器用で道具を作れずゴブリンの集落に寄生して生きる

知恵が回らず主に荷役や戦闘員として酷使されているようだ

実はゴブリンと似た別種の生物ではないかとも言われている

____________________


____________________

【ゴブリンメイジ】

火の魔術を修めたゴブリン。

魔法が使えるとはいえあまり知恵は働かない

群れでの地位は戦闘員もしくは着火係り程度

____________________


 説明が物悲しいんですけどー

 とはいえお供はホブゴブリン2にゴブリンメイジ1ね

 お、ゴブサン前に出た

 槍を持って名乗りを上げるのね

 槍を突き立て、ムラオサに顎をしゃくって吠えかけてる


ゴブサン「俺 強い! 俺 強い! お前 弱い! ムラオサ! よこせ!」


ムラオサ「オマエ ヨワイ! シモベ モットヨワイ! ツメ トドカナイ!」


 ん?

 どう言う意味?

 配下が弱いからお前のこと相手しねえよってこと?


 あれ?

 ゴブサン引き返してきた

 ムラオサも引き返してく

 いつの間にか集まったゴブリン達がウォーウォー言ってる


 それで出てきたのが向こうのホブゴブで?

 こっちから出てくのがゴブローで?

 あ、なるほど一騎打ちなんですね

 でもなんか嫌な予感しますね


ホブゴブ「フハッ! ファハァっ!!」


 骨っぽい棍棒を構え、しきりとゴブローを威嚇するホブゴブリン

 対してゴブローは山刀も抜かず、悠然と腕を組んで構えてる

 なにこの圧倒的強者オーラ……

 ゴブローじゃないみたい


ホブゴブ「ウゥ…… ウラァ!!」


 たまらず走りこむホブゴブリン

 だがそれは罠なんだぜ?


 <ズボッ>


ホブゴブ「アウ!!」


 うん知ってた

 落とし穴だよね

 腕を組んで口元を隠してたよね

 地面もちょっと動いてたぜ?


ゴブロー「ハハ! ハハハ! ヒャッハァ!」


 あ、ゴブロー動いた

 胸まで土に埋まったホブゴブをめっちゃイイ笑顔で蹴ってる

 地面の砂を蹴って目潰しとかしてる

 でもって腰ミノの前を掻き分けて……てやめろぉ!!

 尊厳攻撃はやめて差し上げろぉ!!

 ゴブチーだって見てるんだぞ!

 後ろからだけど!!

 俺は思わずゴブチーの目を塞いだ


 …………さらばホブゴブリンA

 ゴブローは正しくゴブリンだったよ……



ホブゴブリンA! 戦闘不能!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前言撤回です。 ギャグ全然短調じゃない。 戦闘描写も作戦を考えて居るので、「どうせこう勝つんだろ?」とはならないです。 [気になる点] 一切無し。 [一言] 今回も面白かったです! 次回も…
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