第39話 その なんだ 困る
邪眼『イケニエ……とか……その……困る』
そんな事言われてもその なんだ 困る
唐突のイケニエ拒否に戸惑う俺たち
というかそれ邪神がやっていい事なんだろうか
邪神なら邪神らしくヨコシマなことをして頂きたい
そうアレな方の勇者は思っているに違いない(←濡れ衣)
首魁「そ、そんな……それでは私の努力はいったい……」
鋼の膜で縛り上げられながらがっくりと項垂れる首魁
うん、なんというか、ご愁傷様
間違った努力をしてたことに気付いたときの脱力感って凄いよね
いやまあ人攫いの時点で間違ってると気付けよって話だけど
勇者アレン「本当か!? 信じられないな!!」
剣を突きつけつつ叫ぶ勇者アレン
おいあんま刺激すんなよ
イケニエ拒否ったとはいえ相手は邪神だぞ?
邪眼『ニンゲン……マナ少ない……美味しくない……よ』
そっかー
美味しくないかー
って食べたことあるじゃないですか!?
マジの食レポじゃないですか!?
邪眼『信者が勝手に捧げました』
おいなんだよそれ政治家かよ!?
秘書が勝手にやりました的な答弁になってるよ!?
邪眼『この外見……誤解される……勝手に邪神扱い……困る』
せやな
外見めちゃくちゃ邪悪っぽいもんな
一般人なら見るだけで失禁するぞたぶん
邪眼『睨むと……発狂するのも……死ぬのも……困る』
はいアウトー
外見だけじゃありませんでしたー
能力的にも前科的にも邪神でしたー
こいつ呼び出したの誰だよ責任取れよ
勇者アレン「やはり邪神は邪神ということだね。戦うしかないということか!」
なんでそうなるの!?
敵意ないのに喧嘩売るなよ!?
ここはどうにか機嫌をとって穏便にお帰り願おう?
勇者カイン「やめろアレン! 俺には分かる。こいつには……勝てない」
ほらカインさんもこう言って……て勝てないの?
カインさんが勝てないとなったら誰が勝てるのさ
辺りを見渡してみると皆一様に険しい顔をしてる
どうやら邪神の力を計れないのは俺とアレンだけらしい
微妙に恥ずかしいなこれ
首魁「そ、そうだ邪神様!! 生贄はどうでもいいのでこいつらを! こいつらを倒してください! でなければ私を安全な所へ!!」
あ、首魁も計れなかったのね
邪眼はその声に反応し、ぼんやりと中空に彷徨わせていた視線を首魁に合わせる
首魁がヒュッと息を呑み、そのまま枯れ果てた
邪眼『ダメ……きみの願いも……マナも……弱過ぎる』
マジか
目線合わせただけでこれか
本格的にヤベー奴だぞこいつ
首魁を拘束していたカインさんが慌てて脈をとり叫ぶ
勇者カイン「まだ生きている! 誰か治癒を!」
その言葉にイライザが飛び出し、首魁に手を添えて呪文を唱える
確か聖騎士は治癒魔法も使えるもんな
カインさんの従者のひとりも駆け寄って治癒に参加した
よし俺も手助けしよう
【ソウルバナナ】ぽーい!
邪眼『きゃっち』
ちょ待てよ!
なんでアンタが取ってんのよ!?
触手伸びるなんて聞いてなかったよ!?
邪眼『もきゅもきゅ』
えっと、その、美味しいですか?
というかどこに口があるんですか?
邪眼『バナナうめえ』
邪眼がぐるりと反転しじっと俺を見る
え、これやばいヤツじゃね?
さっきの首魁さん見られるだけでカッサカサだったよ?
手荒れとか唇切れるとか関係ないレベルでカッサカサになってたよ?
邪眼『…………………………』
見つめ合う俺と邪眼
も、もうひとついかがですか?
邪眼『もきゅもきゅ』
邪眼『…………………………』
すっごい見られてる
もっとくれ圧が凄い
仕方ないなあ
邪眼『もきゅもきゅ』
邪眼『…………………………』
無限ループですかこれ?
もうダメよ! あげないよ!
人質の解放とか捕虜の護送とかやることあんだから暇じゃないのよ!
俺は腕でバッテンを作りガッと邪眼を睨む
邪眼は地面に落ちへにょりと潰れた
邪眼『おねがい……します……バナナ……ください』
土下座ダァーーーーー!?
まさかの鈴木土下座右衛門ダァーーーーー!?
ちょっとまて邪神のプライドとかないの?
仕方ないからもう1本あげちゃうよ……
勇者カイン(いいぞオリバ君! そのまま引き付けて!)
カインさんが目で訴えかけてくる
おのれ、人の気も知らんで!
ゴリラだけどさ!
邪眼『もっきゅ……もっきゅ……もっきゅ……』
貴重品だと思ったのか邪眼さんゆっくり味わい出した
皮も丁寧に剥いている
ふと見れば、ホールには治療要員とカインさん+αだけになってる
他は人質の奪還に動いたか……
あ、邪眼さん、食べ終わったら帰ってくれませんかね?
邪眼『無理……帰れない』
どういうことだってばよ!?
邪眼『マナ……足りない……転移……できない』
えー?
機神マキナは普通に帰ってったけど?
邪眼『マキナ……中級神……ゴア……下級神』
下級神て自力で帰れないのか……
ほんと誰だよ呼び出したの
責任とれよ
邪眼『困った……ね』
うん困ったよ
ホールの隅っこで正座で話し合っちゃうくらい困ったよ
あ、もっとバナナ食べます?
邪眼『バナナうめえ』
俺も食べよっと
【ソウルバナナ】癒されるわー
邪眼『バナナ……マナの塊……ちから……溢れる』
イケニエなう
聞かなかったことにしよう
邪眼『もう1本……だけ……バナナ……欲しい』
おう、これでラストな?
最後のバナナを食べ終えた邪眼はみるみる縮んでいく
ゴリラの背を超える大きさからサッカーボール大くらいにまでなる
するとそこからニュッと手足胴体が伸びた
なんかフルフェイスのヘルメット被ったウェットスーツの人みたくなったぞ?
体つきは華奢で小柄な女の人みたいな感じだけど
ずいぶんとその……動きやすそうになりましたね……
邪眼「ありがとう」
いや褒め……褒めたのか?
邪眼「これで……大丈夫」
生えた手でコンコンとバイザーを叩く邪眼
なるほど、それで視線を遮れるように形態変化したと
進化したわけじゃないよね?
たかがバナナで中級神になられたら困りますよ?
邪眼「まだ……大丈夫」
まだって何だよぉ!?
勇者カイン「オリバ君、大丈夫か? こっちは……」
沈痛な表情でカインさんが向かってきた
向こうは目処がついたらしい
どやった?
あ、ダメでしたか
俺〔落ち着いた。敵意は無い〕
勇者カイン「本当か? ずいぶんと姿が変わったが……」
ゴア「はじめまして……ゴアです……拉致の……被害者です」
さりげなく被害者ポジになろうとするゴア
まあ人攫い教団だったけれどさ
まがりなりにもアイツらあんたの信者なんですが
いいのか……?
ゴア「おうちに……戻して……頂けると……助かります」
勇者カイン「お、おう……」
ぺこりと礼をするゴア
たじろぐカインさん
まあほら、力になってやってくださいよカインさん
邪神だって困ってるんだからさ
勇者カイン「そ、そうだな……」
目を泳がせるカインさん
ほらほら、見た目は女の子っぽく感じられなくもない邪神ですよ?
もっとやる気出して!
勇者カイン「ここはオリバ君に任せよう!」
俺「ウホォ!?(嘘ぉ!?)」
なんで?
ねえなんで?
こんなん任せられても困りますよ?
くっそ! イイ笑顔しやがって!!
俺は裏切られた気分でガクガクとカインさんを揺する
勇者カイン「し、仕方がないだろう! 現状コレをどうにか出来るのは君だけだ!」
くっそ信用されてますね俺ぇ!!
てゆーか俺でも何ともなりませんよ!!
そんなこんなで揉めているとカチっと鯉口を切る音が聞こえた
このタイミング、奴か
勇者アレン「先輩、甘いですね」
なんで出てきたしアレン?
勇者アレン「別に、こいつを倒してしまっても構わないのでしょう?」
ダメだから困ってんだろ
こんな邪神さんですが一応は推定拉致被害者ですよ?
勇者アレン「見れば視線は封じられ、サイズも小さくなっている様子……」
せやな(諦め)
勇者アレン「悪いが切り捨てさせてもらおうか!」
アレンがぐっと腰をおとし、飛びかからんと力を溜める
ゴアのバイザーが『シャコッ』と上がりその中身が露出する
良かった。俺からもカインさんからも見えてない
じろり
びしり
勇者アレンは石になった
……自業自得だよ………………




