第32話 ロリコンじゃねえよ!?
支配人「し、勝者! オリバ! 大猿人の英雄オリバァァァア!!」
支配人によって勝者がコールされ、観客はどっと歓声をあげる
大規模多対1戦の結果、闘技場のアリーナに立っているのは俺だけになった
外れチケットになった掛け札(木製)が乱れ飛びバラバラと降り注ぐ
俺はそんな喧騒のなかゆっくりとアリーナを一周し片手をあげて罵声に応えた
負傷者は俺が手を出さなくてもちゃんと回収されるから安心だ
観衆「「「オ・リ・バ!!」」」
観衆「「「オ・リ・バ!!」」」
観衆「「「オ・リ・バ!!」」」
割れんばかりのオリバコール
今までの勝利を讃えての歓声なのかな
意外とオリバファン残ってたみたいだ
プレゼントらしき包みもいくつか投げ込まれてる
これも係員の人が回収するから安心だ
そして数分の後、喧騒が鎮まりかけてから支配人のアナウンスが流れる
支配人「本日は公王閣下より特別のお言葉があります。皆様、ご清聴を」
途端に静まり返る闘技場
騒ぐと逮捕されたりすんのかな?
俺は係員の人に促され、中央の貴賓席へと近付く
中は陰が差して見えないがあそこに公王様が居るんだろう
いつの間にか勇者と従者達も呼びだされ、貴賓席前に跪いていた
公王「大猿人の英雄オリバよ、此度の戦い、見事であった」
俺が跪くと同時に、公王様から声が掛けられる
重く落ち着いた声だが、どこか楽しそうでもある
その声掛けには俺ではなく勇者が応じた
勇者アレン「閣下! この者は話すこと叶わぬため私めがお答えさせて頂きます!」
公王「許す」
勇者アレン「ありがたき幸せ、と申しております!」
まあいつもの流れだ
こうした場で会話をする必要があるときはだいたい勇者が代弁する
俺の意図と違うことを言われることも多い
公王「うむ。ついてはその功績を称え、近衛騎士に任ずる」
おお、とどよめく観衆
近衛騎士ってなんぞ?
そんな珍しい事なんですか?
勇者もなんだかびっくりしてる
勇者アレン「お、おそれながら申し上げます!」
あれ?
勇者さんこの流れ聞いてなかったんですか?
勇者「このオリバは我が従者! 旅の仲間であります! 彼に抜けられては魔王の討伐に支障が……」
まあそうだろうな
ぶっちゃけ勇者以外はほぼ戦力にならんもんな
でもお前それ、半年もダラダラ暮らしてた口で言うことか?
公王「分かっておる。当面は司祭イライザと共に騎士オリバを従えるがよい」
うーん?
つまり魔王を倒すまでは勇者の従者ってのは変わらないと?
そして魔王を倒したら王様の部下に就職ってこと?
うわぁい。内定もらっちゃったぁ!?
就職活動のトラウマ大刺激だね!
公王「ときに勇者アレンよ、ドライの街で怪異が発生していること、知っておるな?」
勇者アレン「は? ははっ!!」
一瞬呆気に取られるも慌てて返答する勇者
あ、これ知らねえな
噂ひとつ集められてないなんて何を考えてパーティーに日参してたのやら
公王「アルティエ公国の公王として命ず、ドライの怪異を解決して参れ」
まあそうだよな
せっかく支援してる勇者が闘技場で半年間も燻ってるんだもんな
そりゃあ働けって言いたくもなるわ
勇者アレン「ははぁっ!!」
膝をついた姿勢のままかしこまる勇者
返答を聞くと公王は立ち上がり、貴賓席から消える
勇者がギリっと歯を噛む音が聞こえたような気がした
◇
はいどうもゴリラです
俺は今、宮中の晩餐会に招かれてます
あのあと使者が来て改めて話をされました
もうね、いろいろ豪華
内装から料理から参加者の服装からいろいろ豪華
これで「内輪だけの小規模な」ものだってんだから驚きだ
俺だって礼服着てる
ゴリラ用のタキシード着てる
ここ半年でいろいろ作ったうちの1着だ
他にもツナギとかスーツとかオーバーオールとか色々作った
そして普段はちゃんと着衣してた
闘技場ではキャラ立てだとか言われて全裸だったけどね!
公の場で全裸なのにプライベートで服着てるとか何だよ!
お盆をひっくり返す芸人かよ!
公王「おうおう! これはこれは! まっこと偉丈夫ではないか!」
あ、公王のオッチャン居た
なんか貴賓席に居たときとはキャラ全然違う感じ
貫禄あるけど温厚そうなオッチャン?
俺はとりあえず膝をつき畏った
公王「なんと! 礼儀まで弁えておるとは! お前の言う通りだな、マルゲリータ」
マルゲリータ「そうでしょうお父様? 初めて見たときから分かっておりましたわ」
お?
なんかお姫様っぽいの登場?
鈴のようなっていうのはこういう声なんだろうか?
俺が思わず顔をあげると、そこにはすっごい美少女がいた
年齢は12〜3歳くらいだろうか
プラチナブロンドの髪に真っ白な肌
マジでこれ人なの? 妖精とかじゃないの? って勢いだ
マルゲリータ「ごきげんようオリバ様、お会いできるのを心待ちにしておりました」
俺「ウ……ウホ……」
なにこれ夢?
なんか会えるのを待ってた的なこと言われてんですけど?
いやいやいや違うって
絶対これドッキリだって
家に帰ったらアイドルが居ました的なドッキリだって!
マルゲリータ「ほら、オリバ様はこんなにも澄んだ瞳で……」
すいません猜疑心でいっぱいです
マルゲリータ「小動物のような可愛げがあって……」
そうですねプルプル震えてます
マルゲリータ「そしてこんなにもフワフワですのよ?」
うひぇ!
腕を取られた!
撫でさすられた!
風呂入ってきてて良かった!
トリートメントしてきて良かったァァァ!!
公王「はっはっは、マリーには敵わんな!」
上機嫌に笑う公王閣下
これはひょっとするとひょっとして、そういうことですか?
信じてもいいやつですか?
公王「喜べオリバよ、お主を取り立てたのはマルゲリータからの進言あってのことだ。魔王を退治した暁には公女の騎士として仕えてもらおう」
イヤッホゥい!
さ、魔王さっくり殺ろう♪
魔王のいるポイントはどーこーかなぁ?
って知らねえよ!
魔王どこにいるか知らねえよ!
チッ 命拾いしたな魔王……
マルゲリータ「あら、オリバ様もお喜びですわ」
そりゃあね
可愛い女の子が上司というならモチベも上がりますよ
くされ勇者なんかよりずっといい
場合によっちゃユーグレナへの助力も頼めるかもしれないし
え?
違うよ!
ロリコンじゃねえよ!?
ロリコンじゃねえってば!!
この内側から溢れる気品というかなんと言いますか!
まったくもって幼女とは思えん感じなわけですよ!
むしろ精神的には年上を相手取ってると言いますか!
お姉さま気質と言いますか!
だから俺は違うんだぁ!(支離滅裂)
公王「うむ、オリバよ、期待しておるぞ」
マルゲリータ「まずは怪異退治ですわね。わたしの騎士様?」
俺「ウホッ!」
ハイ! ガンバリマス!
俺がビシッと敬礼をかますと2人は声をたてて笑った
公王「うむ、よいなぁ貴様は。人には無い純粋さ。儂の騎士に欲しいところよ」
マルゲリータ「うふふ、お父様。オリバ様はもうわたくしの騎士ですわ?」
あれ?
なんか褒められつつもディスられてる?
単純馬鹿だと思われたかなー
でも文字書けるとか言い出すとちょっと夢を壊しそうだなー
うん、今は黙っておこう
公王「さて、それでは怪異について話しておこうか」
一転、険しい顔になる公王閣下
姫も俺も居住まいを正す
公王「迷宮都市ドライに於いて人が消えておる」
ふむ、人が消える
公王「領主ロバートの調べではその数、月に十数人ほど。これは通常時の3倍から4倍にあたる数だ。街中にダンジョンを有し、もとより住民の出入りが激しい都市ではあるがこの数は異常であるとの報告だ。手を打つべきか看過するべきか微妙なラインだが、打てる手を打っておくに越したことはない。丁度、手元には勇者という駒が有ることだしな」
そういってニヤリと笑う公王閣下
まあそうですよね
半ばニートしてる勇者ですもんね
尻を叩きたくもなりますよ
俺はニヤリと笑みを返した
公王「無理はせずとも良い。貴様らが成果を挙げずとも怪異が収まればそれで良い。しかと報いよう。領主ロバートを助けてやってくれ。頼むぞ、我が娘マルゲリータの騎士、オリバよ」
公王閣下の真面目な様子に俺はこくりと頷く
どこまでできるかは分からんけど、できる限り頑張ってきます
まったく公王閣下は人たらしだぜ
気分いいからバナナあげちゃう
公王「バナナうめえ」
マルゲリータ「バナナうめえ」
やっべ!
キャラ崩壊してる!!
今の無し!
無しだからね!!




