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第01話 気が付けばゴリラ

 あ、ありのまま今 起こったことを話すぜ


 気が付けば俺はゴリラだった



俺「ウホっ!?」



 暗灰色の獣毛に覆われた身体にとんがった頭

 黒々とした手のひらと500キロ超えの握力

 そして血液型はB型

 ゴリラでしかねえ


 辺りはなんかジャングルっぽい空間だ

 俺は木の股に腰掛けながらペタペタと自分の体を触る

 ゴリラだ

 もうとんでもなくゴリラだ

 ゴリラしか有り得ない勢いだ


俺「ウホォ……」


 思わず情けない声が出る

 大学で講義を受けていたと思ったら、いつの間にかゴリラになっていた

 異世界召喚だとか、転生だとか、そんな生易しいもんじゃ断じて無え

 頭がどうにかなりそうだ


 落ち着いて考えるんだ

 素数を数えて落ち着くんだ

 1・3・5・7・9………

 ってこれ奇数じゃねえか!?


 ダメだ冷静になれそうにない

 だいたい俺はゴリラじゃなかった

 ごく普通の大学生だったはずだ


 品行方正 清廉潔白

 負い目といえば就職浪人して無駄な1年間を過ごしたことくらいだ


 父さん、母さん、選り好みしてごめんな

 でも一生に一度の新卒だから妥協したくなかったんだ


 そしてゴリラになっちまってごめんな

 こればっかりはどうしようもなかったんだ


俺「ウホォ……」


 マジでどうしよう


 涙 出てきた


 ゴリラって知能指数が90くらいあって寂しいと鬱になるらしいけど中身が人間でも鬱になりそうです

 もしかしたら俺は本当にゴリラで人間の記憶がインストールされてるのかもしれません

 本当の俺はまだ大学で暇潰しに講義聞いてて、記憶だけがこっち来ちゃってるのかもしれません

 だって、ゴリラの記憶ないのに身体が完全に大人だし。シルバーバックだし


 とりあえず、サバイバルしなきゃいかんのかな

 毛皮(自前)があって助かったよ

 寒くも暑くも感じないし、水と食べ物さえあれば何とかなるかな

 辺りをキョロキョロと見回してみれば、いつの間にかバナナが左手に握られていた


俺「ウホッ!?」


 やべえ嬉しい

 労せずして手に入ったバナナ

 しかもやたらでかい

 普通のバナナの倍くらいの太さと長さがある

 となると体積は8倍だ

 タテ2倍 ヨコ2倍 高さ2倍で計8倍だ

 ゴリラの手にジャストフィットだ


 バナナうめえ

 完○王レベルでうめえ

 完全に熟したねっとりスウィーツな味がする


 もう一本欲しい

 出てきた

 皮捨てた瞬間に左手に持ってた

 夢じゃなかろうか

 夢ならいいな(遠い目)


 バナナうめえ

 食ってる間に覚めねえかな、夢

 サバイバルする必要なくなったなこれ

 適当に拠点こさえてバナナ食ってれば人生ジエンドできるわ


 バナナうめえ

 しかしこれなんだろうな

 欲しいと思えば出てくるとか少しおかしいよな

 いや出てくる理由が分かる代わりに出て来なくなるとかなら理由知らなくていいけどさ


____________________

【夢幻バナナ】

ゴリラによって召喚されたバナナ

通常のバナナより大振りだが大味ではなく、極めて美味

栄養価も非常に高く、1食1本もあれば十分に腹が膨れる

夢幻なだけに無限に生える。ゴリまっしぐらの逸品

武器やトラップにもなる

____________________


 チュートリアル来た

 無限に生えるみたいでホッとした

 でも1本1食は嘘だよな

 もう5本目だし

 バナナうめえ


 というか武器やトラップってなんだろうな

 皮で滑るとかいうアレかな

 あとバナナブーメラン的な

 食べ物を粗末にするのはいかんけど試してみるか


 ぽいっと


 《バスッ!》


 《ズズゥゥゥン!!》


 あ、樹が倒れた

 バナナ当たった樹が上下に分かれて倒れた

 日当たり良くなっちゃった

 ちょっとバナナ食べて落ち着こう


<夢幻バナナはリキャストタイム中につき使用できません>


 嘘だと言ってよバーニィ!

 リキャストタイムって何よ!?

 バナナを粗末にしたからバチが当たったのか?

 そんな恐ろしい


 けどあれだな

 バナナ待ちも暇だからちょっと地面に降りてみるか

 ゴリラになってから俺ずっと木の股に座ってるもんな

 よいしょっと


俺「ウホッ!? ウホホッ!」


 やべえゴリラすげえ

 指一本でも引っかかってれば体重支えられる

 しかも腕が長いから枝に届きやすい

 腕だけでブランコできるくらいだ

 10メートルくらいあったけど簡単に降りれた

 

 地上に降りたらしっとりしてた

 あちこちに木の根が盛り上がり、苔が生えてる


 そして腰ミノ一丁の緑色した子供がいる

 ハゲてて槍持っててギザギザの歯で威嚇してきた


子供「アギャギャッ!! アギャ!」


俺「ウホァ!?」


 なにこいつ怖い!

 俺は慌てて樹上に避難する

 子供は槍を俺に突きつけて樹の根元で騒いでる

 やっぱ樹登りはゴリラの方が上手いみたいだ


____________________

【ゴブリン】

森の中に集落を作り狩猟生活を営むヒューマノイド

低いながらも知能をもち簡単な道具を作り出す

さほど強くはないが凶暴で小村を襲ったりする

____________________


 なるほどゴブリン

 チュートリアルさん仕事した

 凶暴なんだな

 あの槍で突かれたら痛そうだし、バナナの皮でも投げるか


 ほいっ


ゴブリン「ギャワ!!」


 バナナの皮が命中したゴブリンは派手に転んだ

 肩のあたりに当たったのに足を滑らせる不思議だ

 そういうバナナなんだろうか

 頭を樹の根で打ったみたいで悶絶してる


ゴブリン「アァウ! オウ!!」


 滑り続けてるなこれ

 バナナの皮を肩に貼り付けたまま七転八倒してる

 槍も手放してるし、泥まみれだ

 ちょっと可愛そうになってきた


ゴブリン「ハァ…… ハァ…… ハァ……」


 なんかゴブリン諦めたっぽい

 大の字になって地面に寝てる

 でもって俺と目が合った


ゴブリン(クッ…… コロセ!!)


 いや殺さねーから

 平和的に身を守っただけだから

 ゴリラって平和主義者なんだぜ?


俺「ウホホッw」


 俺は樹から降りて倒れたゴブリンに近付くと、指先でバナナの皮を弾き飛ばした

 これで滑らなくなるんじゃね?

 痛いのやだから槍は没収するけど


ゴブリン「ア…… アァ……」


 どうやら滑らなくなったみたいだ

 泥だらけで座り込み、妙な内股で固まるゴブリン

 見つめ合うゴリさんとゴブさん

 俺が手を差し伸べると、ゴブリンはそれを取って立ち上がった


ゴブリン「アィ! アァィ!!」


 そのまま俺の手を引っ張るゴブリン

 槍で威嚇してたときの剣幕はもうない

 ついて来いってことか?


 でもごめん俺、拳を地面に突かないとうまく歩けないんだ

 ナックルウォーキングってやつだ

 ちょっと手を離してこの槍もっててくれ

 動物の骨を紐と樹脂みたいな何かで丈夫な枝に固定してあるな

 お手製かな?

 ゴブリンて器用なんだな


ゴブリン「アィ! アィ!」


俺「ウホッ!」


 槍を取り返したゴブリンが数歩先から俺を呼ぶ

 わかったよ、行くよ

 どうせここに居ても仕方ないしな


 こうしてゴリラになった俺は、ゴブリンに導かれて密林を進むことになった


この小説はチンパンジー♂が書いています

あまり難しいことは考えずにお楽しみください


別作品の『灰色世界』もよろしくね!

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