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チコリーちゃんから何も聞かないという言質をもらえたことを良いことに、言いたい放題説明した自覚は確かにある。

途中から一部の子たちやムギさんたちが呆然としていることにも気づいていたし、なんならこれ幸いと、驚きのあまり突っ込むこともできない今のうちに全部説明してしまえと話し続けた自覚ももちろんある。

だから話し終わった後の反応が怖いなと密かに身構えていたのだが。


「ナツちゃん」

「なんですか、ルルンさん」


嬉しそうにさっそく文字表を触ったりドリルを開いている小さな子供たちを微笑ましく見守っていた私に声をかけたのは意外にもルルンさんで。


「これ、いくら?」

「はい?」

「いくら出せば作ってくれる?」


その目は、あのおっとりとしたルルンさんからは想像できないほど血走っていた。


「え、いやこれは子供向けの勉強道具でして…」

「大人にも必要。むしろ1人1つは絶対欲しい。じゃないと喧嘩になる」

「えぇ…!?」


ぐいぐいと迫ってくるルルンさんに近い近いと内心突っ込みながらさすがに1人1つは言い過ぎじゃないかと思う。


「アタシもルルンの意見に賛成よ。これは誰もが欲しがる物だと思うし、出来ればアタシも欲しいもの」

「そうですか…?まぁ、大量生産は可能なので別に売ってもいいですけど、万が一辞書の内容に不備があった時、訴えられたりしたら嫌なんですけど…」


魔法でしかも超有能な検索くんをもとに作った辞書だから、滅多なことはないとは思うけれど、中には解釈違いだと訴えてくる奴もいないとは限らないしね。

そもそも普通出版社が辞書などを作る際は何年もの長い月日をかけるもので、何度も推敲を重ね、それでようやく出版にこぎつけるようなものなのだ。

それをこんなお手軽魔法で作った辞書が全部正しいんだぜドヤァ…とはさすがに言える気がしない。


「訴える?」

「あーいや、まあそれならせめて各ギルドに1つ設置するっていうのでどうですかね。持ち出し禁止の魔法をかけておけば盗まれる心配もないですし」


民事裁判とかなさそうな世界で訴えるなんてそうそう聞く単語ではないかとごまかしながら適当な案を出してみる。あとは勝手にマネされないように私以外が複製できないような魔法もかけておこう。


「値段はいくらにするの?」

「え?うーん……金貨1枚とか?」

「駄目安すぎる」

「ありえないわ」


別に3冊くらい無料でいいんだけどと思いながらルルンさんの勢いにそう言えるはずもなく、適当に値段をつけた私に、2人の温度が一気に下がったのを感じた。

え、だからなんでこの世界の人たちは値段を吊り上げたがるの。


「白金貨3枚」

「そこが最低ラインよね。5枚でもみんな買うと思うわ」

「えぇ………!?高すぎじゃないですかね」


辞書1つに30万とかどんだけ…!!と内心震えていた私は、まさかルルンさんが言うギルドがこの街のギルドだけでなく、この国のギルドすべてだということを、このときはまだ知る由もなかった。




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