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検索さんが私に合うと選んだ家は2階建てで1階に5部屋、2階に4部屋というかなり大きな家だった。
さらに部屋とは別に1階にはお風呂とトイレが1つずつ。さらに2階にもトイレが1つあったものの、どちらも下水道整備なんてされていないこの世界では使えるものではなく、とりあえずお風呂はなんとか使用できるようにしたいと、せっかくイメージして創った最新式の浴室を満喫できるよう、魔法で下水処理も行えるよう設定を創った。
さらにトイレも同じ方法で直そうかと考えたところで、ふと気になったのはこの世界の排泄事情で。
汚いからこそ、先に知っておいたほうがいいかもしれないと調べた結果、この世界では大きく分けて3つの方法があるということだった。
1つはクリーンなどの魔法を使う方法で、この魔法が使えればトイレそのものが必要ないわけで、実際使える私にとっては確かにトイレもお風呂も必要ないものなのだ。
ただその魔法を使える人自体、世界人口の3割に満たないというから、この先誰かを家に招いたりすることもあるかもしれない以上、必要な設備だろう。あと何よりどんなに魔法で綺麗にできるとしてもやっぱりお風呂は入りたいなと思うのは日本人だからだろうか。
2つ目は予想通りというか川や海などにするか土で埋めるというものだった。これは特に衛生事情の悪い国ほどよくみられる光景であるらしい。
そして最後の一つ。
この国で最も多用されているのはトイレの下にスライムを囲い、そのスライムに食べて処理してもらうというものだった。
この世界には多種類のスライムが存在しているがその中でもブラックスライムにのみ見られるのがこの排泄物の捕食行為だそうで、私が現在いるこのチヴィーフォイ国を含め、いくつかの国ではブラックスライムを捕獲し販売する業者もいる程度には一般的な方法であるらしい。ただこの方法の難点は数年経つとスライムが成長してしまうため駆除し、新たなスライムを設置しなければならないというもので、やっぱりどれも私向きではないなと素直にお風呂と同様に魔法で下水処理を行えるように創ることにした。
「さて次の問題は家電製品だな…」
日が暮れ始め、薄暗くなり始めた窓の外を見て、先に照明設備からなんとかするかとスマホを取り出して電池式照明を検索。
各部屋と玄関、廊下、お風呂、トイレにつける分を買うと当然数万円かかるが、必要経費だと思って割り切るしかないだろう。あとは電地を買えばすぐにでも使用できるのだが。
「せっかくだから使ってみようかな」
そう言ってバッグから取り出したのは森で倒した魔物とその戦利品リストの中でずっと気になっていた魔石の中でも(電気)と書かれたそれで。
どうやらもともとはイエロースライムの核であるらしいそれを魔法で電池のような形に整形して照明器具の電池を入れる部分にはめ込めば、期待通り。
「おお!ちゃんとついた」
異世界式乾電池の完成らしい。
しかしイエロースライムが電気タイプとか安直すぎないだろうか。
しかもちゃんと石に込められた魔力が切れた時も魔法で補充できるようにしておけばリサイクル電池よりもさらにコストのかからない電池となり財布にも優しいだろう。
「これって他の家電にも使えないかな」
洗濯機は魔法があるからいらないものの、冷蔵庫や電子レンジなどはあったほうが便利だろうと、最新家電のなかでも検索さん一押しの品を購入。
当然2つで何十万とかかったが、これも初期投資として自分を納得させた。
前世でちゃんと貯金しておいて本当によかった……。
「あとはコンセント部分を魔法で消して代わりに魔石を埋め込んでと」
ちなみに電池にしたものより大きな魔石を使って、さらにもともと込められていた魔力に加え、石の容量いっぱいまでの魔力を自分で込めた後、設置したところ、どちらも1年近くは持つだろうという検索結果だった。
「これでよしと。さて、そろそろ夜ご飯にしようかな」
この世界で目覚めて以降、おにぎり2つしかまだ口にしていないせいか、そろそろお腹が鳴りそうなほどの空腹感を満たすべく、もともとあった古いガスコンロを魔法で新品同様に綺麗にして、スマホで購入した軽量フライパンを置き、魔法で火をつける。
そして
「おぉ…!めっちゃでかい」
バッグから取り出したのは大量にあるオークの肉のうち1体分にも満たない少量のつもりだったのだが、それでも私の顔よりも大きいそれを風魔法で2人分だけ切り分けて再びバッグに戻した。
「あとは両面しっかり焼いてっと」
貰ったチート能力の代価に料理が選ばれなかったことでもお察しの通り、私には料理スキルというものはない。いやもちろん今創ろうと思えばすぐにできるのだけれど、もともと前世で料理をほとんどしなかった私はこの世界にきてからも積極的にするつもりはなく、いつか腕の良い料理人を雇うんだ!と心に決めていた。
これは完全に持論だけれど、料理は食べることが好きな人のほうが絶対に上達すると思うんだよね。私みたいに嫌いなもの以外で空腹を満たせるならそれで良いし、とりあえず食べるみたいな食に対してやる気のない奴より、美味しいものが食べたい!って思う人のほうが絶対に料理に向いていると思うのだ。向き不向きって大事だよね。うん。
そんなわけで本日のディナーも本当なら出来合いのものをスマホで買うだけでよかったのだけれど、イルザさんもいることだし、せっかくバッグに大量の肉もあるのだからと豪快にオークのステーキ丼にすることにしたのだ。
野菜?女子力?そんなもの私の辞書にあると思っているのか。
ちなみにご飯はチンするだけのものを購入し電子レンジで温め、購入したどんぶりに入れその上に焼きあがった肉をまたも魔法で食べやすいサイズに切り分けて乗せる。
「あとは焼き肉のタレをかけて…よし!完成」
異世界転生とかトリップした日本人がまず一番に考えるであろう米と醤油・味噌問題。
スマホで何でも購入できる私には無縁だけど、この世界にもたぶんお米や大豆はあるだろうし、いつか普及しようと心に決めつつ、とりあえずその第一号としてイルザさんに食べてもらうと、イルザさんを起こすべく、振り返った私は。
リビングのソファの上でぐっすり眠っているイルザさんのさらに奥、畑側に面している大きな窓に張り付いていたそれに、驚愕し、一瞬心臓が止まった。
………人って本当に驚くと悲鳴すらでないよね




