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いくら新しい治療法や知識を提供したとはいえ、それらが正しいとまだ立証もされていないのだから、その代金として提供される土地はきっと良いものではないのだろうなと正直思っていた。
人も住めないような不毛の地とか、土地の形がかなり鋭角な三角形だとかそんな特殊なことばかり考えていた私は、案内され、たどり着いたところで、まずその予想外の大きさに驚いた。
こんなに大きな土地を本当にもらってもいいのだろうか…。
さんざん整備した後で、やっぱりあーげないって言われて取り上げられるんじゃないかと一瞬危惧したけれど、契約書にサインする前に私の不利益になるようなことはないかこっそり検索した時もそんなことはなかったし、ぱっと目を通した時も特に不条理なことは書いていなかったはずと思い直した。
だから正直、ラッキーだとは思ったし、左隣には教会らしき古い建物があるとはいえ、他はお隣さんと呼べるような建物がないことも気に入った私はここに家を建てる気満々だったのだけれど、イルザさんはその土質が気になっていたようで。
「あーまぁ、確かにこの状態だと家は建てられそうにないですよね。でも大丈夫です」
目の前に広がっている荒れた地は確かに普通なら住める状態ではないだろう。でも、私にはチート能力があるのだ。
そもそも江戸……現代でいう東京はもともと荒れた沼地ばかりの寒村に過ぎず、その土地を徳川家康が整備したのだ。
いや、もちろん家康は指示しただけで実際動いたのは民だろうけど。
その時代の人たちにできて、チート能力をもらった私ができないはずがないと完成イメージを詳細に思い浮かべ手合わせ錬成を行う。
一度やってみたかったんだよね、この動作。
「おーなかなかいい具合になりましたね」
埋め立てと一言に言っても、その方法はいくつかある。
浅瀬などに土砂を入れて土地を引き延ばしていく方法とか、海などに土砂を入れて全く新しい土地をつくる方法とか、湿地帯や沼、池に土砂を入れて埋める方法などがあるけど、今回はその3番目を応用し、埋めるのに使用した土はもちろん土魔法で作った特殊なもので。
あるかわからないけど万が一地震が起きた際も地割れや沈下することのないよう魔法をかけて、硬い岩盤を生成ししっかりとした基礎を創り、さらに土地の奥の方に水脈を集めて池を作成。
本当は井戸にする案も思い浮かんだんだけど、正直水魔法が使えればいちいち汲む必要がないから使わないなと判断した。
そうしてあとはある程度自給自足できるよう耕された畑を意識して手を合わせればあら不思議。一瞬で整備された土地の完成である。
あとはスマホで私が一番欲しいと思う中古の家を検索して、表示されたものを購入して好きなように直せば完成のはずだったんだけど。
「まさか気絶されてしまうとは……」
突然後ろに倒れたイルザさんに、何か病気だろうかと慌てて鑑定したところ、あまりに驚きすぎて失神後、後頭部打撲という結果に、またやらかしてしまったらしいと頭をかかえた。
ごめんね、イルザさん。ほんとうっかりが過ぎたね。
でも、いつまでも道に寝かしておくわけにはいかないしと、マイペースに予定通りスマホを取り出して検索し表示された築80年の土地付き物件を400万で購入。もちろんその土地はすぐにネットで売りに出して建物だけを目の前に移動させれば一瞬で立派な日本家屋の完成である。
ただ、激安物件を購入したこともあり、そのままだと床や壁に穴が空いていたり、瓦が一部崩れていたりするので、ちゃんと魔法で直して、必要な設備も増設し新築も真っ青な綺麗な家にする。
ちなみにこれで日本から家が急に一軒消えたことになったわけだけど、それはちゃんと近所の人とかに違和感を覚えさせないように魔法を使ったので問題ない。はず。
……これを続けてたら田舎の空き家問題とか解決できるんじゃない?と一瞬思ったのは余談である。
あとはいかなる攻撃をも防ぎ、私に害をなそうとするものや、悪意のあるものは一切近づけないよう結界を張って。
「さて、じゃ中に入りますかね」
気を失ったままのイルザさんを一瞬引きずるかと考えて、すぐに魔法で浮かせればいいんじゃないかと気づいた私は、横になったまま、ふよふよ浮かぶイルザさんとともに新居に足を踏み入れたのだった。




