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商業ギルドを出てイルザさんの案内で向かったのは私が希望したこの街で一番大きな空き地のある場所で。たださすがにそれほど大きな敷地が街の中心部にあるはずがなく、ここから歩いて30分ほどはかかるらしい。


「もし歩き疲れたらいつでも抱っこしますので言ってくださいね」

「え!?いやそんな…大丈夫ですよ」


30分か…遠いなというのが顔に出ていたのだろうか。

いや、仕事放棄した表情筋のおかげでばれているはずがないと思い直してイルザさん良い人すぎやしないだろうか…と心配になる。

確かに前世では歩いて5分とかからないスーパーにすら車で行っていた私にとっては30分は歩く距離ではない。しかも小さくなったこの体ではイルザさんのいう時間通りにたどりつけるとも思えず、さらにいえばチート能力を手にしながらも体力は平均値以下なこの体がどれくらい歩けるか分からなかった。

……自動車や自転車が恋しいな。

自動車は無理でもいつか自転車をこの国中に浸透させて乗り回してやると心に決めつつ、ああでもそれならスケボーとかの方が楽かとも思う。某バーロォ探偵が乗り回していたターボエンジン付きスケボー(重力無視スキル付属)とか便利そうだし、あれにどんな道でもスムーズに走れる魔法をかけておけばこの世界でも乗れると思うんだよね。あとはバランス感覚も重要か。


「ナツさんはどうしてこの街に来られたんですか?」

「え?あぁ、この街が住みやすいって聞いたので」

「………そうなんですか」


唐突な質問に正直に答えたつもりだったのだが、イルザさんの表情にああ、なるほどとようやく気付いた。


「私、怪しいですもんね」

「え!?」

「嘘はつけないので、答えたくないことは答えないですけど、それでもよければ質問受け付けますよ?」


私がイルザさんの立場でもこんな珍妙な生き物、気になって仕方ないだろうし、いろいろ聞きたくなるのは当然のことだろう。でもたぶんギルド職員としてあまり表立って詮索することもできず、遠回りな探りを入れるしかなかったのだろう。


「本当にいいんですか?」

「どうぞどうぞ」

「じゃ、まず嘘がつけないというのは?」

「言葉の通りです。もうお気づきだと思いますが私、結構チ…いえ、すごいんですよ。そのすごい能力と引き換えに嘘がつけなくなったんです」


チートと言いかけて、この世界にそんな言葉は存在しないかと代わりになる言葉を探したものの咄嗟には見つけられず、出た言葉はすごい、の一言で。頭悪いな私。


「強力な魔法を使うための制約ということですか?」

「うーん、中らずと雖も遠からずってとこですかね。とりあえずこの力と引き換えに、嘘がつけないのと、……あとは私、ずっと無表情ですよね?」

「え?あ、いや、その…」

「いいんです、これもその制約みたいなものなので。あまりに何でもかんでも感情を顔に出してしまうほど表情豊かだったので、神様?みたいな人がこれはすごいって強い力の代わりに持っていっちゃったんです」


まあ、手続きしたのは山田谷さんだけど。そういえばあの対価って誰が決めてたんだろう。


「そんなことって……」

「信じらんないですよね。でも本当なんですよ」


嘘がつけないというのがそもそも嘘ではないという証拠はどこにもない。だからイルザさんが戸惑うのも無理はないだろう。


「それじゃ、まさか7歳というのは本当の年齢なんですか?」

「え?そこ?」









******************










(イルザ視点)


ナツさんが希望したこの街で一番大きな空き地は、商業ギルドから私の足で歩いて30分ほどの距離にあった。


「もし歩きつかれたらいつでも抱っこしますので言ってくださいね」

「え!?いやそんな…大丈夫ですよ」


小さな体で歩くのは大変だろうと、あわよくば本当の姿を見せてくれないかと期待したのだが、やはり表情一つ変えることなく断られ、さすがに今日あったばかりで見せてはくれないかと少しだけ気落ちした。表情は一切変わらないもののナツさんの雰囲気はずっと友好的なままだからもしかしたらと期待したのだけれど。


「ナツさんはどうしてこの街に来られたんですか?」

「え?あぁ、この街が住みやすいって聞いたので」

「………そうなんですか」


曖昧な答えに、やはりそう簡単には答えてはくれないかと内心落ちした私は。


「私、怪しいですもんね」

「え!?」


突然の言葉に驚きを隠せなかった。


「嘘はつけないので、答えたくないことは答えないですけど、それでもよければ質問受け付けますよ?」


嘘がつけない?それは一体…?


「本当にいいんですか?」

「どうぞどうぞ」

「じゃ、まず嘘がつけないというのは?」


色々聞きたいことはもちろんあるけれど、その真意が知りたいと尋ねた私に返ってきたのは意外な返答だった。


「言葉の通りです。もうお気づきだと思いますが私、結構チ…いえ、すごいんですよ。そのすごい能力と引き換えに嘘がつけなくなったんです」

「強力な魔法を使うための制約ということですか?」

「うーん、中らずと雖も遠からずってとこですかね。とりあえずこの力と引き換えに、嘘がつけないのと、……あとは私、ずっと無表情ですよね?」

「え?あ、いや、その…」

「いいんです、これもその制約みたいなものなので。あまりに何でもかんでも感情を顔に出してしまうほど表情豊かだったので、神様?みたいな人がこれはすごいって強い力の代わりに持っていっちゃったんです」

「そんなことって……」

「信じらんないですよね。でも本当なんですよ」


魔術師の中には制約を設けることでより強い魔法を使う者がいることは知っていた。けれどそれが嘘や表情というのは聞いたことはなかったし、何よりナツさんの言い方では決して自分で望んで失ったものではないようで。こんな幼い少女がそれらを奪われなければならないほどの事情があったというのだろうか。あれ、いや、まって。そもそも


「それじゃ、まさか7歳というのは本当の年齢なんですか?」

「え?そこ?」


本当に嘘がつけないのならばあの鑑定結果は本当なんだろうか。


「だってナツさん、魔力隠してましたよね?」

「あー………まあ、そうですね。はい。嘘はつけないけど隠すことはできたので」

「じゃ、本当に7歳なんですか?」


この見た目が嘘偽りのない姿で、本当の年齢なのか。それとも嘘はつかなくても隠せる何らかの魔法で本当の姿も隠しているのだろうか。


「神様に誓って。7歳です。」


嘘がつけない。それ自身が嘘の可能性は充分にあって、それを疑いだしたらきりがないし、なによりナツさんが出会ったその瞬間から今まで確かに一度も表情を変えていないこともまた事実で。

ああ、神様。もし本当に彼女がまだ7歳の幼い子供だというのなら。


「ところでやっぱり魔力を隠してたのってばればれでした?」

「えぇ、まあ…魔力なしの方は稀にいらっしゃいますが、ナツさんの見た目でそれはありえませんので?」

「え?見た目?」

「そんな綺麗な黒い髪と黒い瞳ですから。そもそもあの鑑定結果を偽れる時点で膨大な魔力がなければ不可能ですし」

「……………え?」


どうか強い力の代価に笑うことすら奪われた幼き少女の未来が優しい光に包まれたものでありますようにと願わずにはいられなかった。




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