6. 魔除けの境界
崖の上で見つけた魔女のレシピ’魔除けの境界’。
その材料も、この崖の上で揃えることができそうだ。
廃屋から出て、材料を集める。
材料は、水、魔除け草、ラダーツリー、大バラのツル、土。
なんか材料多くね?
初調合にしては難易度高くね?
最初の調合は、ポーションだと思ってたのに…。
材料はここで知ったものばかりだった。
魔除け草というのは、泉の周りに生えていた草だ。さっきはよく見えなかったが、日陰に持って来たら、薄く発光していた。なるほど、神々しくて、魔物を寄せ付けなさそうだ。
大バラのツルは、廃屋に絡まってた棘をもつツルだった。ラダーツリーは登って来た崖のあたりに何本も生えている。
材料を廃屋の前に集めていると、
空から「ピィーーーッ」と笛みたいな音が聞こえた。
音の方を見ると、灰色のカラスがこちらへ急降下して来る!あれが、大ガラスか!
こちらに急接近してきた大ガラスに向けて、集めていたラダーツリーを放り投げ、攻撃をかわした。
インベントリから石ころを取り出し、大ガラスに投擲し、羽をかすめる。大ガラスのHPバーは1割も減っていない。
再び急降下して迫って来た。これは避けきれずに左腕に爪を引っ掛けられ、今度はこっちのHPが2割も削られる。ちょっと痛いな。
傷に気を取られていると、旋回した大ガラスが舞い戻って来た。
今度は、横飛びしてかわしながら、大バラのツルを投擲。すると、ツルは大ガラスの翼に巻きつき、絡まった。
よしっ!!これで足止めできた!
さっき、大バラのツルを廃屋から剥がした時に、グリーンフィンガーでどれぐらい扱えるか試していたのだ。
棘は大きなダメージにはならなかったが、ツルから逃げられずにもがいているうちに袋叩きだ!
石ころを何度も投擲し、ようやくHPを削りきって、初戦闘を勝利で終えた!ドロップ品は大ガラスの羽だった。
気を取り直して、調合だ。
いつまたモンスターが出るか分からないけど、魔除けの境界はその名の通り、魔除け効果がありそうなので、帰り道のためにも先に作ろうと思う。
集めた素材を前に道具を用意する。鍋は黒い鉄でできていて、薬屋で見たよりも2倍も大きく、鍋の側面や取っ手にあたる部分には禍々しい装飾がついている。蛇や悪魔の装飾だ。いかにも魔女の鍋だな。
最初は調合ではなく、グリーンフィンガーの出番だった。魔除け草、ラダーツリー、大バラのツル、この3つの植物を種に変える。これは株分けと言って、ファーマーなどの栽培スキルが持つLv.1のアーツだ。
3種の種ができたら、混ぜてすり棒で擦る。そこはゲーム、あっという間に粉々になっていた。
鍋に擦りつぶした種、土、水を入れて、コンロで火にかける。数分待つとポンッという音と共に蒸気が上がり、出来上がったようだ。
鍋の中を見ると、グリーンの土?
魔除けの境界:品質8 レア度2 更地に蒔き、火をつけると、モンスターが寄ってこない生垣が生える。効果範囲は囲った周辺と高さ40mまで。効果期間は3ヶ月。水を与えると効果持続。
なんだこれ。ちょっと予想以上の効果だった。「帰り道に魔除けできるかも」ぐらいの心構えだったのに。ますます戦闘から遠ざかりそうな効果だな。それに、初めてにしては品質高くない?
使い道がいまいち理解できてないけど、試しに使ってみることにした。
登って来た崖とは反対側で、崖と並行に一盛り置く。コンロのもらい火で着火し、数m離れた。
パン!と乾いた音が響き、一瞬火花が散って煙が立ち上り、煙が晴れて出て来たのは、1mちょっとの高さの生垣だった。柵みたいな形状に棘のツルが巻きついて有刺鉄線みたいだ。
これで高さ40mまでは魔物避けの効果があるから、さっきみたいに大ガラスが飛んで来ることもないだろう。
俺はこの魔除けの境界の使い道を大まかに理解した。さっき調合した分はまだ大量に残っている。崖の内側を魔除けの境界で囲ってみよう!
今度は、さっきできたばかりの生垣から延長するように、魔除けの境界を撒く。再び、コンロのもらい火から火をつけると、シューっと導火線に火がつくような音がして、パンっという破裂音と一緒に火花と煙が放たれる。そして姿を現わす有刺鉄線。今度は、幅10m以上の生垣が一気に出現し、見応えがあった!
俺の脳内では、贔屓のプロレスラーの登場曲が再生されていた。魔除けの境界の生垣が、もう有刺鉄線のリングにしか見えないっ!
運動場に白線を引くように、魔除けの境界を何mも撒くのは骨の折れる作業だったが、テンションは爆上げだった。撒き終われば、花火に点火するような興奮と、プロレスのリングが一瞬で出現するような興奮が同時に味わえるのだ!!これでテンションが上がらないわけがない。もちろん、登場曲は全力で歌った!!
こうして、俺は日が暮れるまでに、崖の上を全て魔除けの境界で囲ってしまった。すると、ちょうど魔除けの境界がなくなった。ここのために作られた調合なのだろう。じゃないと、こんなところに家を持って住むことなんてできないからな。魔除けの境界の材料が崖の上に全て揃っていたのも納得できる。
そんなことを考えていたら、ピンポーンというアラート音がして、ウィンドウが出現した。
ホームに設定しますか?
えーーーーー!!ホーム?!いきなり?!
もちろん、「はい」と返事した。
ゲーム1日目にして、ホームゲットーーー!!
俺、持ってるな〜。
あとは、ここにベッドを置けば、ログアウトもできるようになるな・・・。
・・・おもむろに廃屋に近づき、大バラのツルではなく、棘の付いてないツルを引っ張り出した。曲がり草というらしい。
グリーンフィンガーを駆使すると、10分ほどで曲がり草を網状に編み込むことができた。そして、廃屋の背後のオリーブの木にその一端をかけて、少し離れた別のオリーブの木に、もう一端をかける。
勢いをつけて木と木の間の網に飛び乗る。難なくバランスをとって、寝たまま伸びをした。
カメラを起動して、セルフィー機能で撮影すれば、ハンモックに揺られる俺の姿が写っていた。
「ログアウトしますか?」というウィンドウからの問いかけにYESと答えた。
ハンモックを寝床にできたんだ…!!
俺はそのままハンモックから、ワールド・フロンティアをログアウトした。
その時(6話)の運営:魔除けの境界の発案者:
「魔除けの境界って、
眠り姫の城のイバラのつもりだったのに・・・、
魔女職に合わせた調合だったのに・・・、
ロマンチックなつもりだったのに・・・、
有刺鉄線リングと思われるなんて・・・!!! 」
「はーっはっはっはっは!
まぁ、喜んでもらって良かったじゃないか!
アイツ、大声で歌ってたぞ(笑)
俺、アイツと気が合いそうだわ。朝まで呑み明かせるな。
それより、ハンモックって、ログアウトできるのな!
たしかにログアウト要件満たしてるか…(笑)」




