47. 初参加イベント(中編)〜レン視点
「本当に、このモンスターにするんですか・・・?!」
僕の質問に、リーダーのロドリゲスさん、店長、ミントさんがうなづいた。なんでこんな質問をされたか、3人は全然わからないという顔をしている。
僕達B班は、ルーさん達のA班とは別行動をすることになって、イベントが始まってすぐ、この紫の森にやって来た。ほとんどのプレイヤーの予想では、イベントを攻略する鍵がこの森にあるはずだ。
ここにいたのは、イベントの得点になるスノーソルジャーだけじゃなかった。大きな紫の木の上には、まるで木の実がなるみたいに、氷漬けのモンスターが見つかったんだ!1本の木に1体はいるんじゃないかな。
けれど、木の下には、氷漬けのモンスターを守るように門番のイエティがいる。
イエティを倒してから、捧げ物をすると、このイベント内でだけ、氷漬けのモンスターを味方にすることができるらしい。捧げ物は、スキルの生産品や芸術品じゃないとダメみたいだ。やっぱり、戦闘スキルだけではイベントで勝ち残れないようになってると思う。
他のプレイヤー達のチームを見ると、オークやサイクロプスを仲間にしていた。”当たり”は、さっき見かけたワイバーンじゃないかな?
B班で氷漬けのモンスターを見て回ったけれど、困ったことに鑑定が効かなかった。どんなスキルを持つモンスターか分からないんだ・・・。見たことがあるのもいるけれど、見たことがないモンスターの方が多い。
そして、今、目の前の氷の中にいるモンスターは、僕の手の平ぐらいの大きさで綿毛のようなモンスターだった。
店長がそのモンスターが良いというので、これからイエティと戦おうという話になっている。でも、僕は勇気を出して聞いたんだ!本当に、このモンスターにするの?って。そしたら、3人ともキョトンとして・・・。僕、変なこと聞いてないよね?!なんだか心配になってきちゃったよ・・・!
「レンさんは、このモンスターを選ぶことにご懸念があるのですね?」
ハデスさんが僕の心配に気づいてくれた。ルーさんが言ってたけど、本当に良くできたテイムモンスターだ・・・!
「は、はい。あの・・・大きいモンスターほど強そうだから、そういうモンスターにしないのかなって思って・・・」
大人3人+モンスター1人相手に反対をするって、緊張するよ〜!
「レンの言い分は間違いねぇんだけどな、大きなモンスターは粗方、取られちまってるんだよな。」
「それに、鑑定が効かないですから。どうやって選んだらいいのか・・・。」
ロドリゲスさんとミントさんが僕の質問に答えてくれた。
店長を見ると、とても真剣な目で僕に訴えてきた。
「”ここは自分の直感を信じるところ”と、店長が申しております。」
ハデスさんが店長の通訳をしてくれた。
自分の直感・・・!?
「さらに付け加えるならば、”モンスターの強さ・特徴も大事だけれど、相性も大事だ"と店長は申しておりますね。」
相性!店長はテイマーだから、なんだか説得力がある・・・!
「僭越ながら、私の意見を申し上げさせていただければ、闇雲にモンスターを探し回って時間が無くなるよりも、試しに仲間にしてみるのも手ではありませんか?」
さすがハデスさんです!カイトさんの作戦で、紫の森の探検に当てられた時間は1時間なんだ。もう30分近くも経ってる。この後、イエティと戦って、別のモンスターを探すと、時間があまり無いかもしれない。ハデスさんの言った通りだと思った。
「わかりました!このモンスターにしましょう!」
僕が納得すると、大人達はうなづいた。
そして、全員で進み出ると、門番のイエティとの戦闘が始まった。
「気合いを入れろ〜!
さっき話した通り、ミントとレンが後衛だぞ。」
ロドリゲスさんの声かけで、ミントさんと僕は後ろに下がった。
僕達の班は、ステータスで前衛と後衛が決まった。
前衛の店長、ハデスさん、ロドリゲスさんのステータスが、僕とミントさんよりもとても高かったので、自動的に決まった。
戦闘開始してすぐ、イエティが唸り声を上げると、長剣と同じぐらいの氷柱が何本も僕達に向かって降り注ぐ!
慌てて逃げたけど、僕とミントさんはダメージを受けてしまった。
前衛の3人はさすがで、全部避け切ったみたいだ。
今度は僕達からの反撃だ!
ハデスさんが白魔法で物理攻撃力を上げた。僕以外のチームメンバーは物理攻撃の方が強いから、この後からの攻撃力がプラスになる。
店長は二刀流で、利き手の左手にレイピア、右手に短剣を持っている。
前も見たことあるけど、二刀流のツキノワグマはやっぱりかっこいいな〜!
イエティが振り下ろした右手をレイピアで弾き、右手の短剣でダメージを与える。すごい!3割ぐらいHPが減った!
イエティの動きはとても素早かった!店長は強いから付いていけたけど、他のメンバーだったら、付いていけたのかな・・・。
ロドリゲスさんも強いけど、店長とハデスさんはさらに上なんだ。
「オラァァァーー!」
僕の心配をよそにロドリゲスさんは武器である巨大ハンマーをイエティの頭に叩きつけた。すると、スタンが発生して、イエティは目を回している!今がチャンスだ!
「えい!」
ミントさんがイエティに駆け寄って、ナイフで攻撃。すぐに、僕も準備していた魔法を唱えた。
「ストーンロック!」
イエティの頭の上に岩がいくつも出てきて、そのまま落ちてダメージを与える。
「ファイアランス!」
僕のストーンロックの岩が消えないうちに、ハデスさんの火魔法が直撃した。人の身長ほどもある炎がイエティを襲う!あんなに大きいファイアランスなんて、さすがハデスさんだ。
僕が感心しているうちにイエティのHPバーはゼロになって、光となって消えていった。
やったー!
僕には強敵だったから、倒せて嬉しい!
戦闘が終わると、「捧げ物をしますか?」とアナウンスが流れた。
店長がYESを選択して、インベントリから料理を取り出した。それは綿あめだった!
モンスターを拘束していた氷が一瞬にして融ける。綿毛みたいなモンスターが3匹ひらひらと舞い降りて来て、綿あめを食べた。綿毛と綿あめが混ざって、どこまでが綿あめか分からないな・・・。じっと見てると、僕が綿あめを欲しいと思ったのか、店長が綿あめをくれた。
そんなつもりじゃなかったけど・・・、もらった綿あめにかじりついたら、甘い!美味しい!はわ〜〜。現実よりもフワフワだし、口の中で溶けるのがすごく早かった!
「このモンスターのスキルは、軽量化だそうです。」
「軽量化・・・?」
ハデスさんが綿毛のスキルを伝えると、ロドリゲスさんが首を傾げた。
「軽量化かぁ。何の役に立つのかな〜?」
ミントさんが綿毛モンスターをツンツン突きながら、考えている。
「店長は、この子達のどこが良かったんですか?」
僕が不思議に思って聞くと、店長がにぎった拳からグッと親指を立てた。
「”可愛いは正義”だそうです。」
ハデスさんが代わりに答えた。
え?直感って、そういうことですか?!
その言葉に共感したロドリゲスさんとミントさんも同じように親指を立てて、店長にうなづいている・・・。
そして、綿あめを食べ終わった綿毛たちが店長の周りをぴょんぴょんと跳んでいた。
・・・あれ、なんかこの子達を見てると、何かを思い出す。
ロドリゲスさんとミントさんが、店長の周りを飛ぶ綿毛を羨ましそうに見てる。
はっ!わかった!
ルーさん家のコロボックル達に似てるんだ・・・!
飛んでる時はフワフワしてるのに、店長のリアクションに合わせてぴょんぴょん跳びはねてるところが、コロボックル達にそっくりだもん。
ロドリゲスさんも、ミントさんも、店長も、コロボックル派だから!
・・・なんだか心配になって来たよ。この班って、ハデスさんが一番頼りになるよね・・・?
ルーさんとピピとキリヤンとクエストをした時よりも、僕、不安になって来たよ・・・。
僕が頑張らないと・・・!次は、きっと強いモンスターを仲間に・・・!
僕が決意をしてると、近くにいたプレイヤーが大きな声を上げた。
「嘘だろ?!あれ、フェンリルだぜっ!」
「まじだ!あのフェンリルも仲間にできるのか?!」
「あんなのを味方につけるとか、ありなの?!」
「やばいぞ!あっちではフェニックスが見つかったらしい・・・!」
騒がしくなった方を見ると、白い大きな狼がいるのが見えた!二階建てバスみたいに大きい!・・・あれが、フェンリルかぁ!かっこいい!!
フェニックスは、残念だけど、見つからなかった。
けど、やっぱり、強いモンスターを仲間にしないとっ!僕は気を引き締めたんだ。
10分前まで、その決意は固かった。本当に決意は固かったはずなんだけど・・・。
とある氷漬けのモンスターを見て、その考えはどっかに飛んで行ってしまったんだ!
だって、そのモンスターは切り株型のトレントだったんだけど、ルーさん家のゴブリンのジャックに顔が似てたんだ・・・!
ロドリゲスさんも店長もミントさんも、賛成してくれたので、無事、そのトレントをテイムすることが出来た。
そのトレントのスキルは、木材の改良!すごい!
大工のロドリゲスさんと一緒に興奮した!・・・でも、このイベントで役に立つのかな?
その時、カイトさんからチャットが入り、イベント開始から1時間経っていることに気づいた。
「こちら、A班。約束の1時間が経過したけど、B班はどうだ?
この後の作戦を立てたから、相談させてくれ。」
そうして、カイトさんからこの後の作戦を持ちかけられたんだ。その作戦では、綿毛モンスターもジャック似のトレントも、役立てそうだって聞いて、僕はワクワクしていた!




