40. 我が家が完成
「おおおおーーーーー!!」
目の前のバオバブの木の上には、2階建の家が出来ていた。
1階はダイヤ型で、2階は天文台のようなドーム型でガラス張りだ。アンバランスな建て方で、外から見た限り、2階建と言ってもいいか迷うところだが、すごく良い!
「秘密基地感を出してくれ」と言う俺の希望をくんでくれたのだろう。
芋会の後もバオバブの木が成長していて、今や30mほどの高さだ。その後は伸びていないようだが、家も含めた高さは、魔除けの境界ギリギリの範囲だな。
今日は、我が家のお披露目の日だ。
なんのかんので、作成者だけでなく、見学希望者も集まり、結局、芋会と同じメンツになった。カイト、りん、ミシェル、ミント、ロドリゲス、E2、店長、レンだ。
この家の設計と建築の費用として150万Gがまるっと飛んだ。それでも、いまだに魔除けの境界の収入が入ってきている上に、カラー☆コスメとポーション類の収入が増えている。その結果、所持金は150万Gと変わっていないのだ・・・!
そういえば、称号も増えた。”ファッションリーダー”だ(笑)
カラー☆コスメの影響度から決まった称号なんだろうけど、俺とカイトで大いに笑った!
りんに言ったら、「泥舟Tシャツなのに・・・!」と悔しそうにしていたな〜。
俺の装備の製作者であるミシェルは、顧客が増えたらしく、とても喜んでくれた。
それはさておき、ロドリゲス達に新しい家を案内してもらう。
1階は四角ではなく、ダイヤ型なので、不安定な形に見えるのだが、中に入ると、ちゃんと普通の四角い空間だった。
「実際は、普通の四角型で作っているんだが、外面に幻影を使ってダイヤ型に見せているんだ。
こっちの方が、ファンタジーっぽいだろ?」
ロドリゲスがニヤリと笑った。なるほどな!そんな技術があるのか!
1階は大きなテーブルとキッチン。木製でアットホームな雰囲気だ。
店長がキッチンの設備を見て、目を輝かせていたので、とても良い設備なのだろう。
階段は、巻きつくような木の枝で手すりが作られていた。
中2階の高さに赤い屋根の出窓が突き出しているために、1階は日差しが入ってきて明るい。この出窓は、2階のテラスと玄関以外の2方面に付いていた。
「外から見たときに、突き出しているのが、この出窓だ!ハリボテな感じを出すのに苦労したぜ!」
作った自分でハリボテとか言っちゃってる(笑)
けど、ロドリゲスの言うことはすごく分かるぞ!外から見た時にこの出窓がアンバランスな感じを出していて、ツリーハウスの秘密基地っぽいんだ!
2階は、ベッドルーム。近代建築っぽい無機質な床で、壁と天井はドーム型の一面ガラス。このガラスは透過ガラスと言うらしく、ガラスなど付いてないかのように透明だった。そして、命令一つで、ガラスの色を変えることもできる。ここに着色剤が使われているらしいぞ。晴れている日は透明よりも、色付きガラスに変えた方が眩しくない。World’s Frontierは、天気が変わるようにできている。だから、WFタイムズには天気予報があるのだ。
「観光用の魔導機関車に使おうと思っていた技術を使わせてもらったよ。ほら、継ぎ目が全く見えないだろう!見晴らしという点でこれほど優れたガラスはないよ!」
E2が誇らしげに言った。すげ〜な〜!
崖の上からでも十分景色はきれいなんだが、ほんの数m高くなっただけで、さらに景色が良くなる不思議。絶景かな、絶景かな!
ベッドルームにはベッドを入れずに、ハンモックの使用を続行。 ジャック、ヴィクター、タアモに聞いてみたが、ハンモックの評判が思いのほか良かったんだ。
今までは、オリーブの木越しの星空だったが、これからは満天の星空が見れるぞ!
そして、2階の木造テラスには、大きな丸い木造の風呂。最高か!
ジャック達と一緒に入っても問題ないサイズだ。
テラスからは、飛び石状に浮いた階段で外からも1階へ下りることができる。これもファンタジーだな。
その階段は、1階を通過してからも、バオバブの木の下まで続く。
「遊び心でブランコを付けてみたの!ますます秘密基地っぽいでしょ?」
ミントの言う通り、バオバブの木の枝からは、3人ぐらい座れそうなベンチが吊るされている。スウィングチェアとか、ハンギングチェアというらしい。ブランコみたいにもなるし、これで上へ上がることもできるのだ。確かに、秘密基地だな!ツリーハウスにぴったりだぜ!
今は、レンと白くまのタアモとヤギの八木さんの年少組が、ブランコのようにして遊んで、キャッキャ言っている。
撮影許可を取ったとは言え、りん、ミント、ミシェルは撮り過ぎだぞ・・・。
これで終わりかと思いきや、ロドリゲスとミントの力作であるコロボックルハウスも出来ていた。
茶の間、キッチン、ベッドルーム、屋根裏部屋、そして、演劇部屋の5部屋だ。部屋と言っても、ドールハウスのような作りで、前面は透明ガラスで出来ていた。うん、覗き放題だな。
これらの部屋は、1つ1つ独立した鳥の巣箱のようだ。バオバブとは別の木に、1つの枝に1部屋ずつ掛けてある。
演劇部屋は、劇をするコロボックルのために、背景のカーテンを入れ替えられる劇場仕様だった!お城、牧場、街中などの絵がカーテンに描かれている。このカーテン、何枚あるんだよ・・・。ミントが写実的に描いたので、とてもリアルだ。力の入りっぷりが、どうかしてるぜっ!
「これも追加で作ったんだ!ついつい最新技術を使ってしまったよ。」
E2が取り出したのは、コガネムシとキノコ・・・?
説明によると、コガネムシはカメラ内蔵の虫型ゴーレムらしい。高スペックでGPS付きだ。
「これで、コロボックルちゃん達を追跡して映像が撮れるから、劇を撮り逃すことはないわっ!」
ミントが力説する。ロドリゲス、ミシェル、店長、りんが歓声を上げて、拍手した。
いや、俺は、こんなの頼んでないんだが。
そして、E2がキノコを泉のそばに置いた。
「キノコにも、カメラが内蔵されているんだ。畑の方に向けて設置して。
これでジャックの畑仕事を定点観測できるよ!」
E2の口上を、レンが目をキラキラさせて聞いていた。
もう一度、言おう!俺は頼んでないんだが!
それもそのはず、キノコとコガネムシのカメラはプレゼントでくれるというのだ。
かなり私欲の混じったプレゼントだな!
なんのかんので、この自動撮影される映像を、今日の参加メンバーに横流しすることが決まった。
現実でも、犬小屋に定点カメラをつける人がいるからな。それと似たようなものか。
いちいち動画を転送するのは面倒くさいので、常時公開・生放送にしておこう。
それからは、店長が持って来てくれたチェリーパイをおやつに、新築の家の前でワイワイ騒いでいた。
「悪い子はいねーがー?!」
男の子の声がして空を見上げると、黒い皮膚に矢印みたいなしっぽ、そして、蝙蝠のような羽を持つ子供が飛んでいた。顔には、白い仮面をつけている。仮面に描いてある目が古い少女漫画のようなキラキラの目で、シュールだ。
「やっと見つけたぞ!バオバブの木!
お前を引っこ抜いて、逆さまに植えてやる〜!」
そう言った子供は、鑑定で「小悪魔」と表示され、敵だと示す赤いHPバーが出現した。
今、建てたばかりなのに、バオバブごと、やられてたまるか!
俺は、飛び石の外階段からテラスへ駆け上がり、小悪魔のもとへ向かった。
その時には、カイトの魔法が発動していた。詠唱が短い、機動力重視の魔法を選んだようだ。
「ライトニングアロー!」
複数の光の矢が小悪魔を襲い、HPバーを2割削った。
そして、すかさず投げナイフを2連投。これでHPバーは残り7割。
「ぐはっ・・・!誰だ?!」
小悪魔は、ここで初めてバオバブの木以外に、目を向けたようだ。
俺とカイトを交互に見て、目を見開く。
「お前達は・・・悪魔の心臓を持っているのか・・・?しかも、高位悪魔の心臓だと?!」
次の瞬間に、小悪魔は固まっていた体を反転させた。
「ヒーーーーッ!お母ちゃーーーーんっ!」
そう叫んで、南の空へと高速で飛び、逃げて行った。
敵を倒してはいないが、攻撃を仕掛けた俺とカイトだけにドロップ品が出た。敵が逃げたのが勝ち判定になったようだな。俺がゲットしたのは、仮面だった。
天使と悪魔の仮面 品質 6 レア度 5 表は天使、裏は悪魔の仮面。悪魔の植物が見つけやすくなる。
表の天使の面が白で少女漫画のキラキラ目、裏の悪魔の面が黒で劇画調の睨みをきかせた目だった。さっき、小悪魔が被ってたのは、天使の面だったんだな。
カイトは、同じような品質・レア度の鉱石が手に入ったらしい。闇魔法のダメージを防ぐ効果があるようで喜んでいた。市場価値は鉱石の方が上だが、俺にはグリーンフィンガーがあるからな。植物を見つけられる方が面白そうだ。
それにしても、これって、あれだよな?先輩が高難度クエストでゲットした「鋼の心臓」のおかげだよな?自分で撃退した気がしなくて、なんか腑に落ちないぜ・・・。
コロボックルの長老の話では、悪魔はバオバブの木が成長しきると、根っこを引っこ抜いて逆さまに植える習性があるらしい。なんだその習性は。・・・そういえば、バオバブの種の解説に「その木は、悪魔が引き抜いて逆さまにつっこんだと言い伝わる。」ってあったけど、これか。もはや言い伝えじゃないよな?そして、石の箱は、悪魔除け効果があった。だから、”鋼の心臓”も”バオバブの種”も石の箱に入っていたのか。封印状態だったバオバブを俺が開封して植えちゃったことになるのか?まぁ、植えちまったもんはしょうがないな!
「さすが赤ずきんちゃんよね〜。アタシ、悪魔なんて初めて見ちゃった☆」
「ですね〜。お兄ちゃんには、引き寄せ運でもあるのかな?」
ミシェルとりんが笑ってやりとりをしながら、食事は再開していた。他のメンバーも飲み食いを再開する。
俺の元には、レンが何かを手に持ってやって来た。
「ルーさん、これ見えますか?」
「これ?・・・オーネンの花屋が依頼主で、調査のクエストか?報酬は植物?」
レンが持って来たのは、クエストの書かれた羊皮紙だった。
「見えるんですね!実はこれ、冒険者ギルドで受注したんですが、見える人がとても少ないんです。」
なんだって!そんな面白いクエストがあったのか?!
横にいたカイトが話を聞いていて、覗き込んできた。
「俺には見えないな。
条件があるクエストは、その条件を満たしている人にしか見えない。スキルや種族なんかの条件が、そこに書いてないか?」
隣で話しを聞いていたカイトが教えてくれたが、そういったことは書かれていない。
試しにここにいるメンバーにも見せてみる。カイト、りん、ミシェル、ミント、ロドリゲス、E2、店長。全員に見せたが、誰も羊皮紙の形すら見えなかった。
「条件が分からないし、報酬が良くないと思われているのか、掲示板を見てもクエストを受けた人がいないようなんですよ。僕はファーマーだから、植物の報酬は嬉しいけど。
このクエストが今日の午後からなんですけど、ルーさんも一緒に行きますか?」
「いいのか!行く行く!」
このメンバーの中で、俺とレンしか条件が当てはまらないオーネンの花屋のクエスト。めちゃくちゃ気になるぞ!一体、何が条件なんだ?




