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32. 幽霊からの特別報酬

 


 ガゼボは八角形の屋根を持つ、しゃれた休憩所だった。目の前は湖で、絶景ポイントだ。

 そこには青白く透けた、女性の幽霊が座っていた。

 女性は黒いドレスを着て、黒い小さな帽子をかぶり、帽子から()れる黒いヴェールが顔を(おお)っている。


 俺はインベントリから、茶葉と茶器と水袋、あと、スコーンとジャム、ホイップクリームも出してみた。


 茶葉は、海の向こうの大陸の茶葉で、オーネンの港の市場で売りに出されていたものだ。店長に教えてもらった品質10の茶葉である。


 飲んでみたら、ほのかにローズの香りがした。不思議に思って、もう一度、市場に行って聞いてみた。茶葉というのは緑茶も紅茶も1種類の茶葉らしいのだが、加工方法だけでなく、育つ土によって味が変わることがあるらしい。フレーバーを付けなくても、土地によっては、ローズやマスカットの香りの茶葉ができるのだ。思った以上に本格的な話で驚いた。


 そうやって、市場のおっちゃんと仲良くなって茶葉を買ったところ、そんなにお茶が好きならと茶器を出してきた。そして、ニヤニヤと笑いながら、ひそひそ声でこう言った。


「・・・ここだけの話なんだが、この茶器は昔、向こうの大陸の王妃様が使っていたらしい・・・!」


 確かに高級な装飾がついているが、そんな眉唾(まゆつば)な話を聞かされ、鑑定した結果がこちら。



 高級な茶器:品質10 レア度 6 王妃が使っていた・・・らしい。



 初めて、不確かな表示をする鑑定を見たな。

 いや、それより、レア度6だ。初めて見た!

 値段は5万G。始まりの町にしては高値だが、俺にはお金があったので、買ってしまった。


 スコーンもオーネンの町で色々やって、レシピを入手して作ったものだった。

 料理長から頼まれたのは、お茶という話だったが、お茶にはお茶請けが付き物だろ?

 だから、ガゼボの奥様の前に、紅茶と一緒にスコーンも出してみたのだ。


「このカップは・・・!」


 ティーカップを震える手で持って驚いている。

 一口飲み、沈黙すると、スコーンに手を伸ばした。


「このローズの香りとスコーンの味は・・・・。なんということでしょう・・・!

 久しく忘れていました。

 今、この胸に(あふ)れるのは(なつ)かしい気持ち。

 あの日々がよみがえります・・・!」


 そう言って、女性は微笑みながら、涙を流した。

 すると、付いて来ていた人魂が、点滅するように光る。


 目がチカチカする。

 ・・・何かを主張しているのか?

 俺は使い魔を発動させて、「(しゃべ)れ」と念じた。


「・・・おお!やっと喋れるぞ!

 マリアン、私のことが分かるかね?」

「この声はルイス様!なぜここに・・・?!」

「処刑後、マリアンに会いたいがために、魂のまま、海を越えてしまったよ・・・!」

「こうして会える日が来るなんて!ああ、今日はなんと素晴らしい日でしょう。」


 マリアンは泣いて、その人魂を抱きしめた。


「・・・そこのあなた達、こうして陛下に会えたのはあなた達のおかげです。

 褒賞(ほうしょう)を与えましょう。私にできるものなら、なんでも用意しますわ。」


 マリアンの晴れやかな笑顔とともに、ピローンというシステム音が鳴り、アナウンスが流れる。


「クエスト"王の魂の解放"を達成しました。初の達成者に特別報酬が与えられます。」


 おおっと。意外な報酬きたーー!

 カイト達も驚いて、ざわめく。


「報酬をプレイヤーが指定するなんて、ありなのか・・・?!」

「お兄ちゃん、でかした!」

「へ?なんでも・・・?なんでも・・・?!」


 その興奮冷めやらぬまま、りんが前へ出た。


「はーい!私は宝石が欲しいです!」


 いきなり大きく出たな。


「いいでしょう。こちらを差し上げます。」


 するっと通った!



 ルビーの指輪 品質 7 レア度 6 運+5 闇魔法耐性+15%



 これは、かなり良いものじゃないか?!

 少なくとも、首無し騎士のドロップより良いぞ・・・。


「私は、宮廷画家さんの絵筆が欲しいです!」

「それも可能ですわ。」


 こちらもサクッと通る。



 旧宮廷画家の絵筆 品質 8 レア度 6 描いた絵が動く



 さっきの画家の絵が動いていたのは、これか!

 カイトの番になった。


「この屋敷を。」

「さすがにそれは許可できませんわ。」


 無理なものもあるんだな。カイトの表情を見る限り、想定内の回答だったのだろう。探りを入れたな。次のリクエストが本命のようだ。


「アンデッド対策の装備を1つ。」

「こちらをどうぞ。」



 銀のロザリオ 品質 7 レア度 6 アンデッドへの攻撃力+20%



 これは通ったか。

 "アンデッドがアンデッド対策のアイテムをドロップする。"うん、RPGあるあるだな。

 しかも、さっきから耐久がないものばかりだぞ・・・!かなり良いものだな。


 そして、俺の番だ。俺の欲しいもの・・・俺の欲しいものは・・・!


「庭師のヴィクターを、俺にください・・・!」


 りんは怪訝(けげん)な顔、ミントは期待する目、そして、カイトは爆笑していた。

 ・・・うん、完全に言葉選びを間違ったな。プロポーズのセリフかっ。

 ヴィクター先生への尊敬の念が、思いっきり裏目に出た。


「いいでしょう。」


 そして、笑顔とともにあっさりと出る、マリアンの許可。




クエスト"王の魂の解放"の鍵の1つは、オーネンの港の市場に輸入品に関係する品がいくつかあるという設定で、茶器とスコーンの他に"楽譜で演奏"などがあります。

最後の使い魔で王の魂を喋らせた以外にも、闇系魔法が有効という設定。闇系属性の職業が聖水を使えないハンデはこれで回収。


クーデターにより、王妃を新大陸へ逃亡させたが、王は逃げきれずに処刑されたという設定でした。

あと、首無し騎士は、新大陸逃亡に付き添い、王妃に横恋慕していたという裏設定(笑)前々話の首無し騎士回の「あの方」は王妃を指しています。


人魂は、主人公達が"王の魂の解放"をクリアするまでは、首無し騎士の魂だと思われていました。

首無し騎士を倒した人でないと、王妃に会いにいけないので、王の魂は首無し騎士を倒した後からプレイヤーに着いてくるようになります。

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