31. お化け屋敷(後編)
「君は才能があるね。これをあげよう!」
ミントは、着色材のスクロールを手に入れた!
元宮廷画家だというスケルトンに、絵の腕前を見せるクエストを見事、クリアしたのだ。
ここのボスである首無し騎士を倒した俺たちは、洋館の残り半分に足を踏み入れていた。
洋館は、上から見ると、口の字の形をしていて、真ん中が首無し騎士のいた中庭だ。
左半分が、最初に通った脱出ゲームのような回廊などがあったところ。
そして、中庭から再び、洋館に入り、残りの右半分は一部の生産者にとってはボーナスステージとも言える場所だった。
こちら側にも長い回廊があるが、いくつもの部屋があり、その全てが使用人の職業ごとの部屋である。服飾スキルにはお針子部屋、畜産スキルには馬小屋といったように、一部の生産者はアイテムやレシピ、アーツを充実させることができるようになっていた。
そして、俺たちは画家のいるアトリエに来て、無事、スクロールをゲットしたのだ。
しかし、その後で別の部屋に入ったところで、閉じ込められた。今まさに戦闘中だ。
「スラッシュ!」
シャンデリアから蜘蛛の糸で上り下りしていた”お化け蜘蛛”に、カイトの飛ぶ斬撃が炸裂し、光となり消え去った。
向こう側では、消えたり現れたりするレイス3匹と、りんとミントが戦っている。
隙をついて、そのレイスのうちの1匹がこちらへ飛んで来た!
「おりゃーー!」
俺は勢いを付けて、曲がり草をシャンデリアに引っ掛けてぶら下がり、レイスをかわしながら、火炎瓶を2連投した。
一気に火の手が燃え上がり、別の2匹のゾンビを葬る。
その後、俺とカイトがりんとミントに加勢して、戦闘は終結した。
憧れの、"シャンデリアぶら下がりアクション"ができた。満足満足。
俺たちは、多くある職業部屋の1つに入ったのだが、それはダンスや音楽などのスキル向けのダンスホールだった。
パーティーにそのスキルを持つ者がいない場合、あっと言うまに部屋に閉じ込められ、アンデッドモンスター達を呼ばれてしまうのだ。
「お兄ちゃん、勝手に扉開けちゃ、ダメじゃない!」
「いやぁ、悪い悪い。きらびやかな部屋だったから、お宝でもあるのかと思って〜。」
「早く話せば良かったのですが、扉には覗き窓がこのように付いているので、ここから、何の生産の部屋かを見るといいですよ。」
「ルー、シャンデリアにぶら下がってた時、楽しそうだったな。」
カイトにはバレてーら。
今度は、ちゃんと扉の穴から覗き、当たりの部屋を引き当てる。
厨房である。
俺の料理スキルが火を噴くぜー!
中へ入ると、たくさんのレイスが料理をしている。鍋を煮る者、肉を切る者、それぞれの仕事をしているなぁ。
レイスは、目と口が穴のように開いていて、全員困り顔だ。戦闘してたときは気付かなかったけど、これだけたくさんいると、味わいのある顔だな。・・・じわじわと笑えてくる。
そのうち、現場を見渡していたレイスが話しかけて来た。コック帽が一番高いから、たぶん料理長だな。
「おい、新入り!どこほっつき歩いていやがった!仕事しろ〜!
そこの野菜でも切っとけ!」
前半のお化け屋敷アトラクションがなんだったのかというくらい、後半の洋館は雰囲気が変わる。アンデッドが、俺たちを新人扱いして、フレンドリーなのだ(笑)
指示された通り、野菜を切ったのだが、ここには魅力茸があった!1つ拝借。この間、解放されたベラの調合レシピに含まれていた材料だ。
「なんだ、野菜は切り終わったのか?それなら、そこのレシピの整理でもしておけ。」
料理長があごをしゃくって指示した先は、洋紙皮の散らばるデスク。その中に1つスクロールがあり、ブイヨンのレシピだった!よし!
「新入り、お前は今日はお茶係だ。お茶は持って来たか?」
「うっす!」
お茶は、ちょうどインベントリに入っているので、うなづいておいた。
「奥様は、裏庭の奥の休憩所にいる。粗相のないようにな。」
ふむふむ、もう1つクエストがあるようだな。
そして、次に入ったのは、庭師の部屋。
部屋へ入ると、目がやたらくぼんだゾンビがいた。俺たちを見るなり、遠慮なく話しかけてくる。
「なんだおめぇら。あぁ、新しく雇われた庭師か?
おいらが筆頭庭師だ。まぁ、親分とでも呼んでくれぇ。」
声から判断するに爺様なそいつは、ゾンビとは思えないぐらい活力のある挨拶をし、裏庭へと連れて行く。
デュラハンと戦った中庭がバラが多かったのに対して、裏庭には木が多く植えてあった。
「あいつがいねぇな。」
ゾンビがつぶやいて、あたりを見回すが、近くにはせっせと庭仕事をするスケルトンしかいない。
親分は、ゾンビ頭を首から取り外し、真上へと放り投げた!
建物の2階の高さまで数回放り投げた後で、何事もなかったかのように、頭を元の首の上へ戻した。
「見つかった。あっちの方だ。」
なるほど、頭を投げて上から探していたようだ。お茶目なゾンビである。
そこにいたのは、身長2.5mもあるフランケンシュタインだった!をおおおお!カッケー!
「こいつらは新人だ。ちょっと面倒を見てやってくれないか?」
「・・・わかった、おやっさん。」
声からすると、中年ぐらいだろうか。
「ルーです!よろしくお願いします!」
「・・・ヴィクターだ。」
俺は、そのフランケンシュタインのヴィクターに師事することになった。
「・・・なるほど、グリーンフィンガーの持ち主か・・・。
・・・そのスキルは素晴らしい。
・・・だが、1つ覚えておけ。
・・・急速な成長をさせる場合は、品質が落ちる。」
「それは知りませんでした!」
ラダーツリーに使ったときのような成長をさせると品質が落ちるらしい!他の植物にはあまり使ったことがなかったので、良かったー。
俺はこのゲームでめったに使わない敬語を思わず使ってしまった。それぐらいヴィクターの説明が的確で、飴と鞭の使い分けがうまく、話に含蓄があるのだ。渋い中年、憧れるぜ!先生、付いていきますっ。
しばらく、ヴィクターに色々教わっていたが、1人で庭仕事をすることになり、ここの奥様に献上するという”クイーンリリー”を見つけた。銀色に輝くユリだ。こちらは株分けして、種を拝借。これも、ベラの調合レシピにあった材料である。
そうしているうちに、庭師の親分がやってきた。
「おーい、ぼちぼち休憩しろーい!
いいか、裏庭の奥のガゼボには近づくな。今は、奥様がお茶の時間だからな。」
そんな前フリとしか思えないセリフを聞いた後で、俺たちはガゼボへ向かった。




