28. モフリスト暴徒化
白くまの子熊のタアモを家に連れ帰った翌日のこと。
そういえば、店長が熊好きだったなぁと思い出し、日頃の感謝の気持ちを込めて、タアモを連れて行くことにした。すると、子ヤギの八木さんも一緒に行きたいという素ぶりを見せるので、一緒に連れて行く。
そうして、気軽な気持ちでオーネンの町に来たのだが・・・。
まず、道行く人の視線がすごかった。そして、町に入って、そんなに時間が経たないうちに、カイトからコールがかかる。
「なんか大変なことになってるぞ。白くまと子ヤギを連れてるんだって?」
「え?なんで知ってる?お前、ストーカー?」
「んなわけあるか〜。赤ずきんちゃんが超可愛い白くまと子ヤギを連れてるって、俺に問い合わせがくるんだよ。今、どこだ?」
「今、オーネンの町。店長の店に向かってる。」
そこで、話しかけられた。
「きみ!赤ずきんちゃんよね?・・・写真を撮らせてくれないかしら?」
頰を赤くして興奮気味な女性プレイヤーが声をかけてきた。周りのプレッシャーすげぇ・・・!タアモと八木さんが可愛いんだろう。これは1人にOK出すと、やばいことになりそうだな。
「しゃしん〜ー?」
「ヤギヤギ〜ー?」
タアモが喋るのを聞かれてしまった。八木さんはタアモを真似して鳴いただけだが。周囲は、しんと静まり返る。
「今日はごめんなさい!!」
俺は女性プレイヤーにそう答え、すぐさま、タアモを抱き上げて、店長の店にダッシュした。同じ速度で八木さんも付いてくる。
後ろから黄色い悲鳴が聞こえた・・・。こえぇーーー。
それと同時に、四方八方から撮影許可を求めるウィンドウが飛んでくるが、全てはじき返して拒否する。World's Frontierでは、撮影の場合、本人の許可が必要だ。今のは、ダメもとで、撮影申請を送ってきたのだろう。
「店長〜!」
店の扉を開けると、店長とハデス氏がいた。
「これはこれは、ルーさん、どうされました?」
「店長、ハデス氏!ちょっと匿ってくれ!」
カラカラカラーンという、店長の持っていたお盆が転がる音がして、店長がこちらを見て呆然と立ち尽くしていた。
「くろくまだぁー」
「ヤギヤギー」
タアモが舌足らずに喋り、店長がタアモを見たまま、微動だにしない。
事情を察したハデス氏が、店の客がちょうど引けていたのをいいことに、店の看板を”準備中”に変えてくれた。
「なるほど、海岸の流氷でこの白くまを。」
店長の店は屋内に、これまたオシャレな芝生の座席スペースがあって、そこで、店長がタアモを抱っこしながら、ゴロンゴロン転がっていた・・・!タアモがキャッキャと喜んでいる。八木さんは、その側でマイペースに芝生を食んでいた。
「店長が熊好きだから、見せてあげようと思ったら、やばいことになった。」
「店長もこれだけ喜んでいるぐらいですからねぇ。」
そこへ、ノックがされた。ハデス氏が見に行くと、カイトだった。
「外、すごいことになってるぞ。」
「まじか!?そんなに?!」
「モフリスト達の執着を甘く見すぎていたな。」
なんだ、それは・・・。
「準備はいいか・・・?」
カイトが真剣な表情でこちらを見返す。
俺とハデス氏が息を飲んでうなづき、店長が見送りの手を振っている。
俺達は一服させてもらって、店を後にすることにしたのだ。モフリストを撒くための作戦会議も終わっている・・・!
カイトがバンッと威勢良く店の扉を開き、「シャイニング!!」と光魔法を唱えた。
通常は、アンデッドなどに効果的な魔法だ。今は、店の前の空中で炸裂させ、目潰しとして効果を発揮した。
店を出ると、20名ぐらいのプレイヤーが俺たちを出待ちしていたのだ!
そのうちのほとんどが、カイトの魔法で眩しそうにした。
PK禁止というのはルールとしてあるのだが、実際にはプレイヤーに対する攻撃や状態異常が無効となる。今みたいな事態でも、プレイヤーを止める術はない。せいぜいGMコードくらいだな。それは最終手段だ。
俺はすでにタアモを抱えて、走り出していた。その後に八木さんがぴょんぴょん付いてきて、さらに最後尾にカイトが続く。
「逃げたぞ!あっちだ!」
カイトのかけた魔法で状態異常にはならない。眩しさに目をつぶり、ほんの一瞬、動きを止めるだけだった。
しかし、それも計算通り。
「蜃気楼」
そこへ、元ネームドモンスター 、現店長のテイムモンスター のハデス氏が黒魔法を唱えた。攻撃魔法の闇魔法と違い、黒魔法はデバフや状態異常などでアシストをする魔法だ。そして、これは幻影を作り出す魔法。
俺たちが曲がり角を左に曲がろうとしている時に、右に曲がっているような幻影を作り出す。
さすが、ハデス氏!黒魔法でもレベルの高い魔法だ。
その後も、町中を走り抜けて、モフリスト達を撒き、ようやく俺たちはホームに帰還することができた。
タアモと八木さんは追いかけっこだと思ったらしく、きゃっきゃと楽しそうだ。
最後まで殿を勤めてくれたカイトも一緒にホームまで来た。
「はぁ〜。家が一番だぜー。」
「あぁ、本当に!」
俺とカイトは、大の字になって、ホームの芝生の上に寝転んだ。
忙しなかった俺たちとは反対に、青い空にゆっくりと流れる雲が見える。
全力疾走の後の空気がうまい!
気づいたら、今月開始から33万アクセス超えてました・・・。
「小説家になろう」、すげー。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!




