27. 冬の使者
今日もログインして、畑の収穫と、朝食作りからスタートした。ヤギ一家が朝一で雨を降らせてくれるので、水やりは問題なし。
レンから株分けしてもらった枝豆が成長したので、ジャックのために枝豆サラダを作る。茹でて塩をふっただけの枝豆も用意する。
そして、今日はさらにスコーン。
この間、店長から教えてもらったオーネンの町のビスケット屋に行って来て、スコーンのレシピをゲットしたのだ!
店の売上を上げたら、レシピをくれるっていうクエストが発生したから、俺の幼児の姿と怖ネコの人気を駆使して売上をあげたった!店主からはとても感謝され、海の向こうの大陸のスコーンレシピを教えてもらった。
今日はそれに、イチゴやブルーベリーのジャムを添えた。スコーン自体をあまり甘くせず、ジャムやホイップクリームと一緒に食べる。このレシピでは、スコーンに塩も少量入っていて、ほのかな塩味が味を引き締めてくれる。さくっとした食感で出来立ては温かくてうまいなぁ〜。
コロボックル達は、スコーンがお気に召したようで、年少組の取り合いのケンカが始まった。量はあるので、ケンカを止めるのは簡単だ。
「オレ、エダマメ、スキ」
ジャックは、一途に枝豆派だな。
ヤギ一家は、芝生と葉物野菜をむしゃむしゃ食べている。
朝食を食べて、まったりして、崖下を眺めていたら、海に白いものが押し寄せていた。北の方からだ。
あれは、・・・流氷?!
今日は特に予定を決めていなかったので、流氷を見に行ってみることにした。ついでに釣りをするのもいいかもしれない。
海岸線は人が全然いなかった。1人だけNPCの釣り人とすれ違ったぐらいだ。挨拶しておいた。
まぁ、攻略の最前線から最も離れた場所と言えるから、プレイヤーがいないのも当然か。
上から流氷が見えた辺りまで来た。
北風は冷たく、息を吐くと白くなる。
ポツポツとある流氷が、北に行くほど増えて行き、奥の方は一面真っ白だ。
遠くから見た時は分からなかったが、俺が乗っかっても大丈夫そうな流氷が、ざらにある。大きな岩石ほどの流氷もあった。
たまに流氷同士が当たる音が、ドブン、ドコンと聞こえてくる。
流氷自体は雪の塊のように白いのだが、海の色が映り込んで、きれいなブルーになっているところがある。その青がライトアップするかのように、流氷を照らす。いくつ流氷を見ても飽きないな。
試しに流氷の一部を削りとって、鑑定してみた。
1000年の氷 品質10 レア度 4 1000年かけて凍った氷。
品質たけぇ〜。使い道はよく分からんが、惹かれるものがあるな。たくさん取っておこう。
いよいよ、我慢できなくなって、流氷の上に乗ってみた。
特に足場が悪いということもなかったので、次々と流氷を跳んで行く。
足場にした流氷から、ザクッ、ザリッと、雪や氷を踏みしめたような音がする。
「クゥーーーン」
ふと、最近装備したばかりのミシェル特製フードマントのネコミミが、何かの鳴き声をキャッチした。その声がする方へ全力で走り、跳ぶ!
数m先の流氷の上にいたのは、子供の白くまだった。
幼児の俺の背丈と比べても半分しかない。
そして、かわいいの種類を使い分けられない俺でも、これは可愛いと思った。
真っ白でふわっふわなのだ・・・!
しばし、白くまに見とれてしまったが、水音に気づき、ハッとする。
次の瞬間には、バシャーン!と水しぶきを上げて、2mぐらいの魚が宙を飛んでいた。
それは、角を持つイッカクのように見えたが、鼻が異常に長い人面魚で、イッカクマーマンと言った。かなりキモいモンスターだな。
白くまを獲物として狙っているようで、周りを旋回して泳いでいる。
最近、お金が入って、ようやく入手した投げナイフを取り出し、水面すれすれのそいつへ投げた!
水中のためだろう、あまりダメージはなかったが、これで白くまから俺にターゲットが移った。
水面から巨体が現れる!その間にもナイフを投げる。なんとか向こうからの攻撃をかわし、HPを削る。
水中にいるイッカクマーマンは、弾丸のような水の魔法を飛ばしてきて、ダメージを負う。
次に水から飛び出して来たときに、尻尾のみ、大バラのつるで絡め取った。パワー勝負で勝てないのは分かっていたが、尻尾ならタイミング次第でバランスを崩せると見て試してみた。狙いが当たり、流氷の上にギリギリで打ち上げられる。これぞ、まな板の鯉。陸上では何もできまい!至近距離から投げナイフを投げ続け、クリティカル判定もあり、倒すことができた。
白くまを見ると、こちらに寄ってきて、「クゥーンクゥーン」と鳴く。
鑑定してみた。
白くま 釣りのお供に。
短っ!!
この表示は、家畜ではないみたいだな。
ふと、使い魔を発動してみた。
「きみ、だぁれ?」
白くまから、小さい男の子のあどけない声がした。そう、喋れるようにしてみたのだ。動物でもうまくいってしまった。
「俺はルー。お前は?」
「ぼく?ぼくはぼく。」
「お前のお父さんとお母さんは?」
「いないー。」
なんだか、子供の声で親がいないと聞くと何とも言えない気持ちになる。
「そうか、じゃあ、一緒に釣りするか?」
「する〜!」
とても嬉しそうに答えたので、釣り具を出してやった。
やり方を教えてやると、すぐにやり方を覚えたが、待っている時間が退屈なようで、でれっと寝転んでいる。
時折、浮きが動くとパッと起き上がる。本当に動きは子供だな。
俺が釣り上げると、網ですくいたがった。一度網で魚をすくうことを覚えると、次もやりたがる。
何匹が釣り上げたので、海岸で焼き魚にした。
前回も釣れた鱸系の魚だな。
生魚も食べるらしいが、「ルーといっしょの〜。」と言うので、同じ焼き魚を出してやった。
「ぼちぼち帰るぞ」
「かえる?」
「俺は家に帰る。お前はここにいるか?」
「いやだーー!」
「一緒に帰るか?」
「いっしょかえる〜。」
白くまは飛びついてきた。
もふもふで、たまらず、わしゃわしゃした。
「お前の名前は、タアモにしよう。」
「ぼく、タアモ!」
釣り好きみたいなのと、網で魚をすくうのを楽しそうにしていたので、魚をすくう網の"タモ"に似た名前にしてみた。
その日はタアモを家に連れて帰った。
ヤギ一家の子ヤギの八木さんと、同じ子供同士で仲良くなっていた。
流氷を「冬の使者」と言うそうです。




