25. 家の設計
芋会はひと段落し、皆、思い思いに飲み食いしながら、談笑している。
俺はロドリゲスとミントに、バオバブの木の前で相談事だ。
「ツリーハウスを作りたいのか!いいな!」
「木の上のお家なんて、楽しそうね♪」
ロドリゲスが俺の背中をバンバン叩き、ミントは笑顔だ。
2人には、家を建てることに協力してもらうことになっていたのだ。
画家のミントには設計とデザイン。大工のロドリゲスには、建築をお願いするつもりだ。
今日、バオバブの木ができていたことで、その上にツリーハウスを建てることを話してみたら、とても乗り気になってくれた!
「なるほど、なるほど。
じゃあ、ルーちゃんは、キッチンが一番の希望なのね。」
「そうだな。キッチンがあれば、ほかは特に希望はない…あ、風呂もつけてくれ!
あと、秘密基地感があるといいなー。」
「お前わかってるじゃないか!よし、よし!ここ最近で一番面白い依頼になりそうだな。
キッチンにはオーブンなんかも必要だろ?おーい、E2!」
ロドリゲスが上機嫌でE2を呼ぶ。E2は魔導技師で、金属系の加工もお手の物だ。
「木の上の秘密基地だって!?
さすが、天使!ロマンのなんたるかをよくわかっている!」
呼ばれてきたE2が説明を聞くなり、嬉しそうに参加してきた。
「それで、僕が呼ばれたのか!もちろん、話は受けさせてもらうよ!
キッチンの他にも、例えば、この辺りにこんな滑車をつけて・・・」
E2は合流したばかりなのに、ミントの素案を見て次々と案を出していく。
「それは良い案ですね!そしたら、ここはこんなデザインで・・・。」
「おぉ!それは良いな〜。ここの素材は、この木なんかどうだ?そうすると、ここが・・・。」
「なるほど、こうなるんですね。そうしたら、こんなのはどうですか?」
生産組はあうんの呼吸で、どんどんアイディアを出していく。図面を見てるだけで、わくわくするぞ・・・!
「そうだ、思い出した。
家のついででいいんだけどさ、コロボックル達の家も作ってくれないか?」
今、コロボックル達の家は、野菜が入っていた木箱を使っている。ギルさんとマギーさんの食堂の"狼の晩餐"で処分予定だったものをもらった。
「こいつら、こんなことして遊んでるみたいでさ。」
俺が3人に見せたのは、コロボックル達を撮った動画だ。
木箱の家の中で、どんな生活をしているのか気になって覗き込んで見たら、・・・なんと数匹が赤ずきんの劇をしていた。折しも、俺が”崩壊の赤ずきん”の称号をもらった時だった。
そして、次に覗いた時には、総出で白雪姫をやっていた。
もともと喋ると楽器の音が鳴るが、その回は場面ごとの音楽があった。つまり、ミュージカルに発展していたのだ・・・!
しばらく呆然と見入ってしまい、木箱をそっ閉じ。
さらに、最近覗いたら、最近話題のドラマを真似していた・・・!
主題歌までちゃんと演奏してたな。字幕を見ると、かなり忠実に再現されているようだ。
その時々の話題作品にしたり、時事ネタをぶっ込んで来るのには感心している。
「こんな感じで学芸会を開いてるみたいでさ。今の木箱より少し大きいぐらいでいいんだけど、お茶の間の家具なんか入れて作ってもらえないかな?
設置する場所は、バオバブの木じゃなくて畑に降りやすい、あの辺りの木を考えてるんだ。」
依頼内容を言い終えたところで、3人を見たら、目が点になっていた。
いち早く起動したのは、ミントだ。
「・・・か・・・かわいい・・・!!!!
コロボックルちゃん達がかわい過ぎる・・・!
なんですか!この動画?!ルーちゃん、この動画をぜひ!私にください!
そして、ぜひ、ぜひ!私にコロボックルちゃん達の家を設計させてください!!」
「お、おう。」
・・・予想外の反応来たぞ。
「・・・ルー、すまんが、俺にも動画くれ。」
まさかのロドリゲスからのお願いである。
ケツアゴで、もみあげの濃ゆいラテン顔が、眉を下げて懇願している・・・!
騒いで落ち着いたミントが、真剣な眼差しでロドリゲスに向き直る。
「・・・ロドリゲスさん、
私、コロボックルちゃん達の部屋数は1部屋では足りないと思うんです・・・!」
え、真剣な顔して、そんな話?しかも、依頼主の俺が1部屋で依頼したのに、いきなり、変更?
「・・・ミント、俺もそれは同感だ・・・・!」
ロドリゲスのおっさんが、カッと目を見開き、答えた。
ロドリゲスとミントがガッチリと手を握る。通じ合うものがあったようだ。
「こんな楽しい依頼、腕が鳴るわ!
ロドリゲスさん、まず部屋数なんですけど、お茶の間だけでなく、キッチンとか、屋根裏部屋とか作ったら、コロボックルちゃん達の劇の幅が広がると思いませんか?!」
「それだ!
・・・そのうち1部屋は、壁面を白幕にして、ミントが絵を描いて、入れ替えられるなんて、どうだ?!芝居の背景でよくあるだろ?」
「名案です!名案過ぎます!
やっぱり、着色剤をなんとしても手に入れねば!
・・・そこまで作ると、衣装も作ってあげたくなりますね!」
「・・・それはぜひとも見たいな。」
え?なんか雇い主を抜きにして、話がどんどん進んでいく・・・!
「ミシェルさん!ミシェルさん!!」
「な〜に?どうしたの?ミントちゃん。」
「これ見てください!!コロボックルちゃん達が、おうちの中で学芸会を開いてるんですよ!」
「・・・何だとっ?!」
ミシェルが裏声をやめて、野太い地声で叫ぶもんだから、ちょっとした騒ぎになった。その騒ぎに釣られて、りんと店長もやって来て、キャーキャー黄色い悲鳴を上げて、さらに大騒ぎになる。
「私とロドリゲスさんで、コロボックルちゃん達のお家を作ることになったんですけど、こんなに可愛いから、ミシェルさんに衣装を作ってもらえないかと思いまして。」
ミントが、俺とミシェルに向けて説明をする。
「まぁっ!!それは素敵ね☆アタシも可愛いお人形ちゃん達の衣装、作りたい・・・!
ねぇ♪赤ずきんちゃん、いいでしょ??」
ぐはっ!!・・・ミシェルのお願いのあまりの殲滅力に魂を失いかけたぜ・・・。
そして、なぜ俺が集られるのか・・・?
まぁ、コロボックル達も、すぐそこでソワソワと喜んでるから依頼を出すけどさ。皆の盛り上がりに付いていけない!ロドリゲスのおっさんは今もなお、動画に釘付けである。
そんな空騒ぎの中、ジャーン!ジャーン!とシンバルの音が連続で響く。
これは、コロボックルの長老の警報音だ!
何か緊急事態が起きたようだ。
以前鳴った時は、長老がこのホーム内の小川に流されて、危うく崖の下へ真っ逆さまになるところだった。なんとか救出し、以降、小川の端っこには安全のために網を張っている。事後対策、大事!
皆が何事かと注目する中、コロボックルの長老がやって来て、オーケストラのクライマックスのようなシンバルの音とともに字幕が表示された。
“ルー殿、大変じゃ。”




