24. 芋会
「じゃあ、芋会を始めるぞー!乾杯!!」
ホストの俺の音頭で、芋会スタートだ。
くぅーーー!エールの喉越しが良いな・・・!
ワールド・フロンティアでは購入時に、身分証とともに実年齢を登録している。これで、成人以上はゲーム内の飲酒・喫煙が可能になる。
このタイミングで、行方知らずだった怖ネコがやってきた。ちょうど食べるタイミングで来たな。
最近気付いたんだが、こいつは、食が絡む時は寄ってくるが、それ以外は割といないことが多い。絵の猫とは思えないくらい、まんま猫だ。
「このエールはな、店長が試行錯誤して作ったんだぜ!ホップがまだ発見されていないために、ビールの代わりにと、店長が頑張ってくれてるんだ。こりゃ、ありがたく沢山飲まないとな!」
店長の頑張りを称賛するのは賛成なんだが、ロドリゲスの話は呑んだくれの理屈にしか聞こえないぞ(笑)
今の話は、この間、お店に行ってハデス氏から教えてもらったらしい。
え?ロドリゲスのおっさん、あのしゃれた店に1人で入れるのか?
とにかく、店長へ感謝しながら、エールを飲んだ。なるほど、ビールと違って、これは甘みがあるんだな!細かい炭酸がきいて、これはこれで美味い!
乾杯してすぐ、持ち寄った料理へ群がる俺たち。
料理スキル持ちの店長が持って来てくれたのは、ローストビーフだった。
なんと品質が8!そして、20%もの攻撃力増幅効果があった。すごっ。料理は品質が上がるとバフも味も上がる。
「店長ぉぉぉ!さすがだぜ!肉料理で高品質とか最高かっ!」
店長は後頭部をかいてテレテレと照れていた。
さっそく食べさせてもらう。なめらかな赤身肉を噛みしめると、旨味の凝縮された汁がジュワッと口の中に広がる。
冷めてからが食べ頃になるローストビーフは、赤身肉の野性味が引き立ってくる!
高級品なイメージがあるのに、最も肉々しい肉料理の1つだと思うんだよな。俺の今まで食べてきたローストビーフが安物だっただけかもしれないけど。
しかも、これはブラッディホーンという牛系モンスターの肉。現実の肉とは違い野性味溢れる味で赤い肉汁感がたまらないんだ!赤ワインが進む進む。
ロドリゲス、カイト、ミシェルがワインを持ってきてくれた。現時点で、メジャーな酒はワインだ。
「お兄ちゃん!
料理が美味しいのは分かるけど、お肉だけじゃなく、下の野菜も一緒に食べて。じゃないと、お肉ばかり減るでしょ!
それに、食べ過ぎ!店長の料理はみんな食べたいのだから、もう少し遠慮して。」
りんの言葉が正論すぎて、ぐうの音も出ない。
店長は恐縮していたが、俺は店長に謝り、とぼとぼとローストビーフの皿を後にした。
同じくローストビーフにがっついていたロドリゲスも、俺の影ですごすごと退散する。
他のメンバーは、オーネンや他の町で買って来たらしい。
串焼きやツマミのような物が多かった。皆がイチ押しを選んで来ただけあって、美味しい物ばかりだ。知らない食材が出てくるのも面白い。
カイトが持って来たのは、最新の4つ目の砂漠の町で買って来たケバブだった!
このメンバーのほとんどは4つ目の町まで到達していないのもあって、大好評だ。
悔しいが、こいつのこういう時にこういう物を選んでこれるセンス・・・、イケメンと言われてもしょうがあるまい・・・(真顔)
サンドされたケバブにかじりつく。
これは、香辛料と肉厚がすごい!しかも、・・・何種類かの肉が使われているな?現実世界でのケバブも、羊肉・牛肉・鶏肉のどれかか、全部が混ぜられている。ドネルケバブの肉の塊は一頭の肉ではなく、色んな肉が混ざってあの塊なのだ。肉を全種入れてしまえっという発想・・・!初めて聞いた時は、神の発想としか思えなかったぜ。肉神様・・・!
お待ちかねの俺の料理は、鮭のホイル焼きだ。さっき、芋類と一緒にたき火に入れてある。
この芋会を企画したときに、魚のホイル焼きを思いついてしまったのだ。
町の市場で魚屋を見つけることはできたが、目当ての鮭っぽいのはなかった。
普段あまり見ない掲示板を確認したら、オーネンの町でも釣りスキルを持っていれば、まれに鮭を釣ることができると分かった。
即刻、釣りスキルを取得したった!
攻撃スキルを取ろうか、この間まで迷っていたのにな。ノリと勢いは大切にしているぞ!
保留にしていたスキルポイントの4ポイントは全て使い切った。
初期の釣り道具を揃えることも、大金持ちの今の俺には、造作もないことだ!
釣りスキルを取ってから気づいたんだが、投擲スキルと相性がいいようで、レベルが低い割に遠くまで浮きを飛ばすことができた。
そして、何日か釣りプレイに費やし、その甲斐あって、鮭を1匹釣り上げることができた!
もちろん、ホイル焼きには、鮭の他にきのこや玉ねぎも入れるのを忘れない。
せっかく魚を釣ったので、ホイル焼き以外も用意した。フライである!
残念ながら、アジは釣れなかったが、鱸系の魚が釣れた。普段は鱸のフライはあまりお目にかからないが、味見してみたら淡白な味で美味しかった。ソースとマッチしそうな味だ。
フライと言ったら、タルタルソースだよな。それも自作した。粒マスタードの原料に当たる白ガラシが採取した植物の中にあったのだ!マスタードを材料にマヨネーズを作り、それをもとにタルタルソースを作った。ビネガーは残念ながら無かったので、レモンで代用。
事前に作って食べてみたら、酸味と辛味のパンチが絶妙に効いて、美味しかった。ジャックと盛り上がったので、白ガラシは畑で栽培を始めた。
どうやらスパイス系は、ハーブ区分になるらしく、品質が高く出るようだ。魔女職、いいじゃないか!
そうして、できた料理がこれだ。
ピンクサーモンの蒸し焼き 品質 4 レア度 3 1時間回避率20%増し
エリートフッコのフライ 品質 5 レア度 2 1時間徐々にHPを回復。
バフ効果はまだまだだな。
町中の店の料理が品質1〜3なのに比べると、ずいぶん美味しくはなっている。
皆に食べてもらったら、俺の料理も大好評だった!
「蒸し焼きに入ってるタイム!香りが強くていいわ〜!」
ミシェルは、鮭に乗せた香草に気づいたようだ。
これもハーブ系なので魔女補正で品質が高めのものが栽培できていた。
「このサクサク食感、最高だな!」
カイトよ、お前の好みは知り尽くしている。ケバブへのお返しはしておくぞ!
食べ応えのあるフライと食べたら止まらないタルタルソースは、やっぱり男女関係なく喜ばれるものだよな。
焼き芋が出来上がるまでの少しの間に、ミシェルが話しかけて来た。
この間、オーダーした防具のことだった。
「ご依頼の品、もうできたのよ!
ジャーーーン☆」
と言って、取り出される防具一式。
初の防具、それも新品!
はやる気持ちを抑えながら、赤いマントを広げて羽織った・・・!
「おおおーーー!
・・・って、おい!!
これ、ねこミミが付いてるじゃないか?!」
なんと、フード付きマントのフードの部分に、三角のミミ部分が付いていた。
無駄に高い技術で、なぜかピンと立っている。
「出血大サービスしちゃったわよ♪お値段そのまま☆
なんと、これで聴力アップ!索敵力増し増しなの☆」
「え?!すごっ!
・・・て、危ないとこだった!いや、そーじゃなくて・・・!」
「あら?やっぱりアタシの代表作のうさミミが良かったかしら・・・?」
「いや、そっちじゃなくて・・・!」
「・・・あ!もしかして、フードと同じ生地じゃなくて、リアルな猫ミミが良かった?!」
「いや、そーでもなくて・・・!・・・もういいです・・・。」
全く悪気のないミシェルに、説明する気とやり直しを要求する気になれなかった。
くそ!ミシェルの店で、りんがケモミミフードで有名な店だと言っていたのを忘れていたぜ・・・。
何てことだ!あれは前フリだったのか!
フリフリとピンクは拒否したけど、たしかにデザインは丸投げしていたな・・・。
そこで爆笑しているカイト、覚えておけよっ!
まぁ、防具の役割を果たしているし、その上、サービスが付いたんだ。
どうせ幼児なんだし、格好とかどうでもいいかー(棒)
そして、気を取り直して、本日のメイン!焼き芋だ!
「はふはふ・・・おいひぃ〜〜!さつま芋って、こんなに甘いのがあるんですね〜。」
「本当に!すごく甘い!私は、この黄色が濃いのが好きだな。」
ミントが頬張りながら、感嘆の声をあげ、りんは別の品種を食べているようだ。
カイトが持ってきてくれたさつま芋はいくつかの種類が混じっていた。
俺は、さつま芋はベッチャリ派ではなく、しっとり派だ。
これこれ!これを食べると秋が来た気がするよな!
あまーーーい!うまーーーい!
好みのしっとり派のさつまいもを引き当て、ご満悦でいると、店長がそっとバターを渡してくれた・・・!今日、何度、店長に感動させられたことか!店長への感謝がとどまるところを知らない!
そのバターを持って、じゃがいもを食べ始める。
この品種は・・・!ちょっと前に話題になった栗みたいな甘みを持つジャガイモに似ているな。ジャガイモなのに濃い味でほろほろ甘いのだ。ほろほろ崩れるジャガイモにバターが溶け込んでいく。なんて凶悪な画ヅラだっ!
ガブッと食いつくと、温かい甘みとバターの香ばしさが口に広がった。うまーーー!
それだけでは終わらない。本日のダークホース”枝豆”だ。
話には聞いていたけど、ホイル焼きの枝豆がこんなに甘くて、豆の味が濃いとは・・・!塩を振るだけでここまで旨みを出してくるのか!一本取られたな。
今日は芋会だけど、枝豆に特別賞をあげたいぐらいだ。
エールがあって良かった。この枝豆には喉越しのあるお酒が必須だな。
それでも、ビール、ビール、ビール!なぜここにビールが無いのか?!この甘い旨味のある枝豆を、あの苦味と喉越しで、締めたかったぜ。
ふと、隣で同じく枝豆を食べていたジャックを見ると・・・、
「ルー、・・・コレ、ソダテル、ゼッタイ!」
ジャックの瞳に闘志が宿っていた・・・!
なんという枝豆だ・・・。農業ゴブリンのジャックをここまで駆り立てるとはっ!
そして、ジャックは隣のレンへ話しかけた。
「レン!オレ、マメ、ソダテル!!」
その時、友情が芽生えた。ジャックが初めて、俺以外の名前を呼んだのだ!
これは、絶対に株分けさせてもらおう!




