23. 大きな木
「おぉーーーー!!」
いつものようにログインすると、ホームには大きな木がそびえ立っていた・・・!
あまりの大きさに、俺は驚きの声をあげた。
数日前のこと。臨時収入が入り、冬支度も必要だということで、ホーム内にいよいよ家を建てることを決めた。
それで、いまだにホームの真ん中にあった廃屋を処分することにしたのだ。
廃屋も木材でできていて、グリーンフィンガーの発動範囲だったようで、問題なく片付けることができた。すると、床下から出てきたのは、石の箱だ。その中には、バスケットボール大の茶色の塊が入っていた。
鑑定してみた。
バオバブの種 品質10 レア度 3 育つと木になる。その木は、悪魔が引き抜いて逆さまにつっこんだと言い伝わる。
俺は、歓喜した!
だって、バオバブだぞ?実物を見てみたかったんだよな〜。あの、不思議な形がカッコいいと思うんだ!
ジャックと一緒に嬉々として、種を植えた。
あれから数日。
現実でのバイトやら何やらで、種を植えてから、すでに何日か経っていた。
久々にログインするから、ジャック達には美味しいものを食べさせてやらないとな。
ログインすると、廃屋があった場所に20m超えの巨木がそびえ立っている!木の直径も10mを超えているんじゃなかろうか?
そう、たった数日で木が育っていたのだ・・・!
畑で農作物は育ててるが、そういえば、木を育てたのは今回が初めてだったな。こんなに早いもんなのか?
その木は写真でしか見たことがなかった、バオバブの木だった。
本物だーー!!
ずんぐりむっくりした幹に、一番上に太い枝が10本ほど生えている。枝が生えているところから上は、太い幹が急に切り落とされて無くなったかのようだ。不思議な形だった。これぞ、バオバブだよなぁ!
幹に張り付いて両手を広げるが、当然、抱えられるはずもないほど太い!
俺はしばらく、ニマニマしていたが、そこへカイトからチャットが入った。
「よぉ。ログインしてたか!
さっき、みんな揃ったんだ。今、ルーのホームの下まで来てる。
例のものも、持って来たぞ。」
その声を受けて崖の下に降り、全員をラダーツリーに乗せて、戻ってくる。
今日、都合がついたメンツは、カイト、りん、ミシェル、ミント、ロドリゲス、E2、店長。それに、店長が友人を連れて来た。
店長がツキノワグマの両手で優しく背中を押して、友人の少年を前へ出す。
「・・・は、初めまして。僕、レンと言います。ファーマーです。よろしくお願いします!」
ガチガチに緊張していた。
少年は、紺色の髪に金の瞳で、今の俺より少し背が高い。緑のチュニックに黒いタイツのようなもの、さらに茶色のブーツの装備が、ピーターパンのようだ。
この子は実際も10歳ぐらいなんだろう。演技だったら、凄すぎるが。
俺、10歳で敬語を使って挨拶なんかできたかな?
皆から「よろしく」と声をかけられて、少し緊張が解けたようだった。
「あ、あの!赤ずきんちゃんですか?
僕は、魔よけの境界で畑を持てたので、今日、会えてうれしいです!」
「そうか!役に立ったなら、良かった!俺はルーだ。
俺も畑をやってるから、色々教えてくれよな。」
「っはい!!」
やっぱり、俺が10歳の時はこんなにしっかりしてなかったな。
初めてうちへ来たメンバーは、崖の上からの眺望に感動していた。
りんは、「お兄ちゃんズルい!!」を連発している。
ミントはスケッチしてるな。あとのメンツは、撮影をしていた。
来たことがあるカイトもバオバブには驚いていた。攻略前線でも見たことがないらしい。レア度は高くないから、どこかには沢山あるんだろう。
撮影の後は、うちの同居人であるジャックとコロボックル達を紹介する。
コロボックル達が店長とロドリゲスに登って遊び始めた。ガリバー旅行記の小人みたいだな(笑)
店長の全身から喜びが溢れ、コロボックルを潰さないように優しく扱っているのがよく分かる。
ロドリゲスは硬直しているが、手の平に乗ってるコロボックルをじっと見ているあたり、気に入っているのではないかな。
「可愛いーーー!!お兄ちゃん、ずるーい!」
「やーん♪皆ちっちゃくて、カワイーわ!」
「いいな〜!小人がいるなんて知りませんでした!探せば、他にもいますかね?」
りん、ミシェル、ミントは思った通りの反応だな。
ジャックも負けずに人気である。
りん、ミシェル、ミントは、ジャックもまた気に入った。君らは動物やモンスターなら、なんでもいいんだな。
「オレ、イマ、ヤクソウ、ベリー、カラシ、ソダテル、
オマエ、ナニ、ソダテル」
「ぼ、僕はイマ、かぼちゃとマメをソダてています。
・・・あと、最近は木を育てることが多くて。りんごやブドウや・・・」
同じ背丈のジャックとレンのやりとりは、皆に和みを提供した。
ジャックのペースに引っ張られ、レンがカタコトになっているが、農業トークは多いに盛り上がっているな。
E2はジャック派だった。
「僕は猛烈に感動している!同族にひどい扱いを受けながらも、己の意志を貫くなんて・・・!」
身の上話を聞いて、完全に絆されていた。そして、目の前のジャックの実直さに感動している。わかるぞ、E2!
「ほれ、ルー。例の物。」
カイトが笑って寄越したのは、今日のメイン!さつま芋だ!
この間、ミシェルのとこで、季節が変わっているという話を聞いて、思いついたのだ。
冬が来る前にぜひとも、たき火で焼き芋をやりたいと・・・!
そう、今日は焼き芋のために、皆を呼んだ。
“たき火で焼き芋”というのが、現実ではハードルが高いのだよ。
俺が東の森で枯れた落ち葉を大量に拾って来て、カイトがさつま芋を先の方のエリアから採取して来た。3個目と4個目の町の間あたりで採取できるらしい。
受け取った芋類を見てみると、ジャガイモもある!カイト、分かってるなぁ!
そこへ、レンが声をかけて来た。
「あの!これも持ってきました・・・!」
差し出されたのは・・・枝豆だ!葉付きで獲れたてなのが分かる。
「うぉーー!その発想はなかった!絶対うまいよな。
しかも、畑で取れたのを持って来てくれたのか?ありがとな!」
なるほどな、豆は出回っているから、枝豆も育てられるか。俺も今度、植えようかな。
それに、枝豆は実は茹でるよりも、ホイル焼きをした方が旨味が残るという話を聞いたことがある。おっと、ヨダレが!
皆で、芋類と枝豆を”謎袋”に詰めて焼き芋の準備をする。
謎袋は、現実のアルミホイルと同じような効果を得られる袋だ。材料は知らないけど、ミシェルにリクエストしたら、用意してくれた。ありがたいぜ!
そうして、袋詰めした芋類と枝豆を地面に置き、俺のインベントリから、茶色の枯れた落ち葉をそそぐ。
こんもり乗せたところで、放火草で着火。
あとは待つだけだな。




