16. 魔除けの境界・改!
やって来たのは、オーネンの町の東。森の奥にある、ゴブリンの巣の跡地だ。
11人もいると、狩りもあっという間で、ここまで来るのに意外と時間がかからなかった。
ゴブリンの巣は、2日前に討伐されたばかりのものだ。
俺とカイトで探索した時に、東の森でゴブリンが多かったのは、ゴブリンの巣ができ上がる前兆だったらしい。あの後、カイトが冒険者ギルドに報告に行ったら、同じような報告が寄せられ、討伐隊が組まれたのだ。それが、レイドボスイベントだった。
俺もカイトから誘われていたが、ギルさんから料理道具一式をもらうクエストの最中だったし、まだ戦力が足りないのでパスした。
イベントは冒険者ギルドの討伐成功として終わり、ゴブリンの巣は殲滅された。
ゴブリンの巣の跡地にわざわざ来たのは、イベントが終わったばかりで人が近づかず、更地で開けた場所なので、今回の話をするのにふさわしい場所だとカイトが勧めたからだ。
俺は、更地の一角に、魔除けの境界を撒いて行く。グリーンの土で一辺が6mほどの四角を描いた。
ふっふっふ、今日までに魔除けの境界に改良を加えていたのだ。始まる前から血が騒ぐぜ。
「よし、準備が完了したぞ。カイト、セキ、頼む!」
声をかけると、カイトとセキが動画を起動し、撮影開始だ。他のメンバーも話していたのを止めて、こちらに注目する。
俺は、この日のために用意した赤い覆面を被り、この場にいる全員に聞こえるように、ステータス画面のインターネットから引っ張ってきた、ある音楽を流す。
ぴくりと男性陣を中心に音楽に反応した。
「この曲は・・・!」とプロ助がつぶやく。
重厚で重々しい曲調から、アップテンポな曲に変わる。
観客のボルテージが上がり、男達の手拍子と歓声を抑えるように右手を振りながら、王者の風格を意識して堂々とした足取りで歩く。
魔除けの境界で描いた四角の真ん中まで進み、観客の方を向いた。
曲の見せ場のところで、右手の拳をグッと天に突き上げ、
「ヤったらーーーーーー!!!!」
と、「やってやる」の「ら行」を巻き舌になるぐらい強調して、叫んだ!
有名な覆面レスラーの決め台詞だ!!
同時に、魔除けの境界に着火。
パーンという乾いた爆発音が鳴り、火花が散り、煙が立ち上った!
煙が晴れた先には・・・、イバラの柵、いや、有刺鉄線のリングが出来上がっていた。
そして、このタイミングでなぜか、怖ネコが軽やかに跳躍を決めて、俺の頭に着地した。
クッ!こいつ、良い見せ場で割り込みやがった!
一瞬シーンとした後に、
「「「「「をおおおおおーーーー!!!!」」」」」
という、熱狂的な声が上がる。主に男達の野太い声だが。
・・・大成功だ!
そして、表示される「ホームに設定しますか?」のウィンドウ。
「一瞬で有刺鉄線のリングが出来上がるとか!!鳥肌立ったー!!」
「今のJPプロレスの覆面レスラーの登場シーンだろ?!やべー!!」
「有刺鉄線デスマッチ!!俺、このリングで技かけられたいっ!!」
「小さいお兄ちゃんがプロレスマネするの、可愛すぎる!」
「ちょ!何してん?!ホームやて?!!」
一部、予想と違う称賛が混じっているが、カイトの連れて来た格闘スキル持ちの3人組を中心に大盛り上がりしていた。虎獣人のガーとゴリラ獣人のシロウは早速、リング内に入って、プロレス技をかけて遊び始めた。プロ助なんか、ちょっと泣きそうだぞ。そうか、こいつのプロ助の「プロ」は・・・察し。
「何を準備しているかと思えば、わざわざこれを用意していたのか。」
カイトよ、苦笑いで言ってるけどな、わかってるぞ。お前もワクワクしちゃってんだろ?目は輝いてるぞ。
さっき再現したレスラーの登場シーンは、カイトも好きな選手なのだ。「ヤったらーーーー!」の決めゼリフは一部で流行している。
俺が魔除けの境界に改良を加えたのは、この決めゼリフを合図に、着火するようにしたことだった!
放火草と言う、ちぎると燃え上がる葉を発見したので、使い魔とセットで使ってみたら、成功したのだ。
俺がニヤニヤ笑っているところへ、ゆらりとアッキーが現れて、前からがっつり肩を掴まれ、びくっとする。
「・・・あんた、ルー、言うたね?」
座った目で、低いトーンで凄まれてる・・・?え、何この雰囲気・・・。
「めっちゃええやん!!」
さっきの雰囲気が一変。満面の笑みで、両手で肩をバシバシ叩かれる。
「これ、どこで見つけたん?!
魔除けの境界って、町の外にもホームを作れるっちゅうこと?!
あかん!めっちゃお金の匂いがするやん(笑)
怪しいと思っとったわぁ。
カイトさんの紹介する人が、大男の戦闘職なんかとちゃうし、こんな可愛い女の子やし?!
普通の子なわけないわなぁ。」
アッキーはご機嫌だ。
セキは動画を回したまま、笑っていた。
「いやーはっは!一杯食わされた!
俺もカイトの紹介だから、何も聞かずにここへ来たが、これは予想外だな。」
ロドリゲス達も興奮気味にやって来て、俺に詰め寄って来る。
「嬢ちゃんが俺らを誘ったのはこのためか!確かに、これなら、土地の確保ができる!!」
「君は天使か!?魔導機関車のために土地をなんとかしてくれるというのかい・・?!」
「ルーちゃん、すごい!宿がないことの解決策になるのって、これだったのね!」
喜んでもらえるかもと思って連れて来てはいたけど、予想以上の大興奮だった。
「じゃあ、魔除けの境界のお披露目をしたところで、ビジネスの話をしようか。」
カイトが、そのイケメンの顔の本領を発揮して、爽やかに微笑む。この笑顔、敵に回すと恐ろしいが、味方だとこんなに頼もしいものはないな・・・!
主人公は、にわかスポーツファンです。
この作品のレスラーは実在しません(笑)




