15. 東門で待合せ
ピーヒャラピーヒャラとコロボックル達が喜びの音色を出す中、「ゴハン、ウマイ」とゴブリンのジャックがつぶやいた。その隣では、怖ネコが「ニ”ャン"」と満足そうな鳴き声をあげている。
ギルさんからもらった調理道具で、さっそく朝食を作った。
料理のLv.1のアーツでスライスというのがあるのだけど、これが凄い・・・!
トマトを投げて、切ったトマトを思い浮かべて、包丁をかざすと・・・、あら、不思議!カットされたトマトが、目の前のボールの中に落ちてくるのだ!!
ギルさんの見てた時から、楽しみにしていたんだ!
実際にやると、やべー!凄腕剣豪になった気分だ!
ついつい必要な分よりも多くカットしてしまった。
今朝のメニューは、ソーセージ、豆、トマト、卵をそれぞれ炒めたもの。言うなれば、イングリッシュ・ブレックファストだな。シンプルな料理ほど、素材の味と調味料が効いてくると思う。まぁ、初めて作ったから、品質は3だけど。
ソーセージは’狼の晩餐’の名物だから、言わずもがな、美味しい。
トマトは、西洋のトマトを選んで使った。酸味が強くて水分が少ないタイプだから、炒めるのに向いていて旨味が濃くなるのだ。卵とトマトの相性は万国共通。
日本のトマトも見つけていて、そのトマトときゅうりを湧き水の小川にさらし、冷やしている。
真っ赤なトマトと鮮やかな緑のきゅうりがザルにおさまり、透明の水にサラサラ流れされている。
この見た目だけで美味そうだ・・・!
これはコロボックル向けの野菜だ。俺も塩だけ振って食べたけど、よく冷えて、水分たっぷりでウマイ!!
これだよ、これ!世界の食品が一気に味わえるなんて、最高だ!
朝食に満足した俺は、30分ほど、畑に水をやってから、東門へと向かった。カイト達との待合せだ。
拠点のホームから降りて、オーネンの町の北門から入る。
北側の地区を歩き、次の曲がり角を曲がろうとしたところで、向こうから来る人物に目が釘付けになる。気づいたら、そっちに気を取られ過ぎて、転んでいた・・・!ゲームの中で転ぶとか、恥ずかしいな、おい!
「大丈夫?」
と腰を下ろして、俺を助け起こす少女。
ミルクティーの色をした丸みのある獣の耳に、赤髪のポニーテール。肩にはリスを連れている。
間近で見ると、やはり、似ている。俺の知るアイツなのか・・・?
少女はハッとして、俺を見つめる。
バレたのか・・・?いや、俺はいま、幼女だ。
「痛いところはない?」
もう一度、聞いてくる少女に答えを返す。
「・・・はい。ありがとうございました!」
俺がルウトだとバレてないようだな。よし、早くここから去ろうっ!
・・・と思ったところで、引き止められる。
「ちょっと待って!!」
「え・・・?」
「あなた、なんて名前?!」
なんだ?バレたのか?
「・・・ルー。」
「そう、私の知っている子に似ていて。でも、違ったみたい。
本当にあなたそっくりで、すごく可愛いのよ!!」
・・・「可愛い」の圧がすごいっ・・・!!
「あなたの頭の上の猫もすごく可愛いわね! よかったら、あなた達を撮影させてもらえる?」
この怖ネコが、ネコだと、気づくとは!そして、カワイイのか。
俺の上で、怖ネコが「ニ”ャー」と鳴く。やはり俺にはわからん。鳴き声も邪悪にしか聞こえない。
とりあえず、写真ぐらいならいいかとOKを出す。
「これからどこへ行くの?」
早く逃げたいんだけど、まだ逃してくれない。嘘の行き先を言うか、いや、カイトとの約束の時間が・・・。ええい!
「・・・東門・・・。」
「そう、私もちょうど東門の方に用事があるのよ。一緒に行ってもいいかしら?」
おい!!なんだ、これ?!バレてるのか?バレてるのか?
「・・・知らない人に着いて行っちゃいけないって、パパとママから言われてるから・・・!」
もうこの場から逃げるために、幼児がしそうな言い訳をして、逃げる!脱兎のごとく、東門へ走る!!
東門には、カイトとその友人と、ミント、E2、ロドリゲスが待っていた。ゼーゼー息を切らして、カイトに近寄る。
「おお、ルー!って、どうした?そんなに息を切らして。」
「・・・ゼーハー、・・・カイト・・・、すぐに移動を・・・」
言いかけたところで、カイトが俺の後ろを見て、声をかけた。
「お、りんちゃん。」
その一言に俺は固まる。
「カイトさん!こんにちわ〜」
さっきの赤髪の獣人の声だ。現実を認めたくない気持ちから、ギギギっと錆びたように動かない首をひねり、後ろを振り返った。
「ハロー、おにいちゃん!」
口元に弧を描いて、ニンマリと笑った鈴がいた・・・。
やられた・・・。やっぱり妹だった・・・。
名前を"りん"にして、ねずみっ娘になっていたようだ。
「ジャンガリアンハムスターよ!」と言ってるが、ハムスターもネズミだろ?
「カイトさん、教えてくれて、ありがとう!」
「おい!カイト!りんには知らせないって約束だったよな・・・?!」
「え〜、俺、りんちゃんには教えてないよ。」
「じゃあ、なんでりんが知ってるんだよ!!」
「おにいちゃん、もっと怒って。
その姿でぷんぷん怒るの、本当に可愛い!!
私、カイトさんから聞いたわけじゃないよ。ツカサさんから聞いたの。」
そう言ったりんとカイトが示し合わせたように、ニンマリ笑う。
諮ったな!!
ツカサさんというのは、カイトの姉さんでりんとも仲がいいのだ。つまり、カイトは、姉のツカサさんに伝えて、ツカサさんからりんへ連絡が行ったらしい。
「ゲームやってること、私にすぐ教えてくれたら、よかったのに!
小さい頃のお兄ちゃんが見れるなんて、嬉しいっ!!
ほら!動画でもこんなに可愛い!!」
笑って見せてくるのは、さっき撮られた・・・動画だと・・・!?撮影って、静止画じゃなかったのか!?
動画はまさに「知らない人に着いて行っちゃいけないって、パパとママから言われてるから・・・!」という俺のセリフを再生してる・・・!
あ”ーーーーーっ!!!
恥ずかしい!痛い!!
5分前に戻ってやり直したい!!
「ぶりっ子のおにいちゃんも可愛いかったよー。」
ニンマリと笑う妹とカイト。
もう、こいつらのが兄妹だろ?!
「きゃー、可愛い!あなた、ルーちゃんのお姉ちゃん?そっくりね。私は画家のミント、よろしく。」
そこへ羊獣人のミントが話に入ってきた。
「そうなんです。姉のりんです。よろしくお願いします。」
しれっと順応するりん。・・・もうやだ。昔からこいつには勝てん。
肩のリスも、りんと一緒に軽く頭を下げた。リスはテイムモンスターで、ベンジャミンというらしい。
「へー、姉ちゃんもしっかりしてるな!俺は大工のロドリゲス。」
「これはこれは!僕は魔導技士のE2。赤ずきんちゃんとは昨日知り合ったばかりなんだけど、お世話になりっぱなしでね。」
牛獣人のロドリゲスとエルフのE2も加わった。
りんとの挨拶が終わった頃合いで、カイトが話かけてくる。
「そうだ、ルーに紹介してなかった。
こっちにいるのが、今日、俺からお願いして来てもらった、アッキーとセキだ。」
カイトから紹介された1人は、青い巻き髪に赤いバンダナをして、切れ長の目をした女性だった。ドワーフのようで、少し背が低い。
「アッキー言うねん。商人クラン’ゴールドラッシュ’のマスターやってる。よろしくな!」
アッキーはニカッと笑った。関西弁で頼れる姉さんな感じだ。
もう1人、現れたのは、落ち着いた色のオリーブブラウンの髪とグレーの目をした無精髭の兄さん。30代ぐらいか?渋ぃ〜!
アバターの年齢を上めにすれば良かったぜ!あ、ブラウニーなら、何歳になっても、このままか…。
「俺は、セキ。WFタイムズの記者だ。よろしく頼む。」
人好きする笑顔だ。
WFタイムズは、俺でも知ってるぜ!動画を交えたニュースで、WFの中でも信頼性が高い。
「それから、ルーに言われた通り、うちのクランから格闘スキルを持ってるやつらを連れて来ておいた。」
カイトはそう言って、残り3人の男たちを紹介する。
ゴリラ獣人のシロウと虎獣人のガー、それにヒト属のプロ助だ。全員2m超え!
今まで会った獣人は人間寄りのアバターなので、耳と尻尾だけ獣型だったのだが、このシロウとガーは、獣そのものが二足歩行している姿なのだ。顔もゴリラや虎そのもので、2m超えは圧巻!
獣人は、獣の姿に近いほど、身体能力が上がるようになっている。前線の攻略組には、戦闘特化のプレイヤーも多く、このタイプの獣人が割といるんだと。かっけーーー!!
「自己紹介も終わったことだし、そろそろ行こうか。」
カイトに率いられ、俺たちは東門を出る。総勢11名。りんも付いてくることになった。
関西人の友人や有名人の喋りを思い出しながら書いたけど、方言を書くの難しかったです。アッキーは関西弁に憧れる東京人プレイヤーということで、よろしくお願いします!




