9. チート野郎はどっち?(前編)〜カイト視点
レッドコングとの一戦の後、休憩がてら、お昼を食べようという話になった。
ルウトが自作したという、1つのアイテムを取り出す。
魔除け薬:品質6 レア度1 撒くと魔物が寄ってこない。効果範囲 3m。効果時間 6時間。
「品質高っ!」
思わず、声を上げた。店で売ってるのは、せいぜい1〜3だ。それに、効果時間が長い。何時間休憩するつもりだ?
「ここまで良い物じゃなくても、店で500Gで売ってるぞ。」
「俺にとっては、500Gは高いんだよ!材料もあったし、作ってみただけだから、効果時間は別にいいんだ。」
まぁ、昨日ログインしたばかりだ。所持金も少ないだろう。
お昼は、ルウトが用意したホットドックを食べた。
「美味い・・・!」
一口食べて、自然と感想が言葉に出た。
’狼の晩餐’のソーセージとマッシュポテトを使って作ったらしい。あそこの料理はNPCにしては美味しいよな。森の中で食べると、さらに美味しく感じた。
ルウトは、頬袋一杯に頬張って食べている。今は幼児だから、仕方ないかと思ったんだが、現実でも同じ顔して食べていたなぁと思い出すと、可笑しくなった。
しかし、調合やら料理やら、相変わらず、器用なことをする。
食事中にさっきのライトニングアローについて聞かれた。
騎士職を選択して、スキルをランダムにしたら、レアスキルの光魔法が取れたという話をしたら、「このチート野郎め!」と文句を言われた。
こっちからすると、ルウトの言うグリーンフィンガーも十分チートだと思うけどな。
さっきのターザンには爆笑したけど、あのスキルは、栽培スキルと戦闘アシストスキルを兼ねているということだぞ?もしかしたら、今後、攻撃手段にもなるかもしれない。そういうポテンシャルが俺はあると思うんだけどな。
それに現実世界でも、俺のことを「ずるい」だの「チート」だの言うけどな。俺からすれば、ルウトこそ、チートだ。
去年の夏休みに「二十歳になって、許可が下りた!」と意気揚々と、バックパック一つ背負って、世界へ旅に出た。無事に帰ってきたけど、なぜ無事に帰って来れたか分からないような話のオンパレードだった。
俺のアメリカ人の友達を紹介した時にも思ったんだけど、ルウトは、言葉が通じるとかそういう次元じゃないところで、人との付き合いができるんだ。その上、直感としか言いようが無い不思議とベストな選択をする。
努力や機転で覆せる気が全然しないこの感じ。これこそ、チートだろ?
食べながら、ルウトに聞かれて、最近の攻略の話をした。
「え、カイト、クランに入ったのか?」
「ああ、攻略がメインのクランで、’カレドヴルフ’って言うんだ。ほとんどのメンバーは自分の部屋をもらうことも目的だけどな。」
俺の在籍するクランは、攻略の最前線のクランと言っていい。
ワールド・フロンティアはプレイヤーキラーを禁止してるから、攻略前線のクラン同士も過激な競争にはなっていない。その点は、攻略に集中できて楽だな。
最近は、同じ前線のライバルクランを出し抜き、最新の迷宮を攻略した。ライバルクランと言っても、実は姉がクラマスだ。姉の動きを予測して出し抜くのは、そこまで難しくない。とはいえ、他のクランよりかは厄介だが。
攻略に限ったことじゃないんだが、目標に向かって効率を追求してやってると、良くも悪くもそこに集中してしまう。攻略以外のこともやってるけど、何か物足りないんだ。
ルウトは高校からの付き合いで、クラスも同じになったことがないんだが、気付けば、つるむことが多かった。付き合いやすいのもあるけど、ルウトが引き起こす色々には、たまに呆れるけど、面白く感じる自分がいた。なんと言うか、自分1人じゃ見えなかった景色が見える・・・、そういう感覚。だから、ルウトがワールド・フロンティアを始めるのも、正直、楽しみにしてた。一緒にやったら、何が起こるのか?ってな。
「ルウトも装備を揃えられないなら、うちのクランに入るか?」
「まだ、いいかな。クランに入るにしても、俺は生産系だし、戦闘スタイルも模索中だしな。」
ルウトが何か話を続けようとしたが、茂みの向こうにゴブリンが数匹やってきたのが見えた。
話を中断して、そちらに注意を向ける。
魔除け薬の効果で向こうからこちらが見えることはないが、せっかく向こうが気づいていないので、先制攻撃を狙おうと小声でルウトと打ち合わせる。石ころを取り出し、握りしめながら、様子を窺う。
一番手前のゴブリンは、錆びた剣を振り回していた。別のゴブリンは盾を頭にかぶってみたり、また別のはその盾に石を当てて、ゲキャゲキャ笑い声をあげている。
その様子をルウトはひそかに笑って見ていたが、俺が合図を出して飛び出したので、同時に投擲を開始した。あっという間に戦闘が終わり、ルウトと合流するが、またゴブリンが5匹ほどやってきた。
あれから、さらにいくつかのゴブリングループとやりあった。戦いまくって、ルウトの投擲スキルがLv.2になり、急所への的中率が上がる命中を覚えたようだ。クリティカル系のアーツだな。
今は、10匹のゴブリンと交戦中だ。とうとうゴブリンメイジが2匹出てきた。
レベル差という余裕があった俺も、さすがに、ゴブリンメイジのファイヤーボールで初ダメージを負う。
「ルウト、ポーション頼む!」
リクエストに応じて、HPポーションが放り投げられた。俺の肩に当たり、砕け散って、HPが回復する。しかし、回復率が少ない。不思議に思っていると、もう1本のHPポーションが当たって砕け散った・・・!HPは満タンになった。
「は?2連続使用?!クールタイムは?」
俺はクールタイムなしで2回連続HPポーションを使うことができたことに驚きながらも、スラッシュという剣術のアーツで2匹のゴブリンを一気に切り裂き、10匹のゴブリンとの戦闘を終えた。
「さっきのポーションだけど、回復率は低いけど、クールタイムが必要なかったな。どういうポーションなんだ?」
ルウトは、クールタイムの推測も含めて、濃度の違うポーションについて説明した。濃度の薄い2本を1本の容器で持ってきたかったらしいが、今日は間に合わなかったらしい。そして、敵がいない今、ルウト自身も回復するためにポーションを飲んだ。
美味しそうだ。考えていることは顔を見れば分かる。
「本当に普通のポーションとは違う色してるな。味も、悪くないんだな?」
「ああ、美味しいぞ。
だけど、ポーションって、飲まなくても、当てても回復できるんだな。」
「知らなかったのか?」
「あぁ。」
まぁ、つい昨日、このゲームを始めたばかりだから、仕方ないか・・・。それにしても、早速、こんなものを作ってしまうと思わなかった・・・。さっき、ルウトのポーションを鑑定で見てみたが、後々、話題になりそうなものに思えた。空腹を回復するポーションて、なんだよ?聞いたことないんだが。
・・・ははは、これは早速やらかしたな?
それから、俺たちはしばらく進むも、ゴブリンに遭遇し続けた。
カイトは、ゲーム内の名前で呼ぶルールは分かっているのですが、主人公とは5年来の友達なので、ついつい慣れた「ルウト」呼びをしてしまいます。他の人がいる前では、だんだんと「ルー」呼びになっていくので、安心してください。主人公は、"短くなるから、名前をルーにした"というぐらい無頓着なので、本名で呼ばれても気にしません。
普段は要領がいいのに、こういうところで不器用なカイトくん。どうですか?萌えポイントになりませんかね?!




