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姫様を幸せにするために恋愛フラグを回避しまくります!  作者: 夕闇蒼馬
『もっとドキ夢』の世界で奮闘します
38/50

番外編 ホワイトデー

自分で作り上げたキャラながら、書きながら彼のイケメンっぷりに悶えてしまった今回。

私と同じように、彼の言動にキュンキュンしてくれたら本望です。

 さてさて、今日は待ちに待ったホワイトデーの日だ。

 前世ではホワイトデーはおろか、バレンタインデーという絶好のチャンスを活用することなく(活用しようにもその相手すらいなかった)人生を終えてしまったが、なんとか2回目の人生ではチャンスを有効活用できそうだ。


 私はホワイトデーのお返しを貰うべく、バレンタインデーにチョコ(義理)をあげた相手のもとを訪れては「今日って何の日か知ってますか?」とニッコリ笑顔で尋ねるという暴挙に出た。

 結果は上々。


「ふんふふ〜ん♪」


 鼻歌交じりにスキップしながら、私は食べ物やらアクセサリーやらが入ったバスケットを振り回す。



 クロームからは「いつもお疲れ様」という言葉とともに、特製茶葉を貰った。

 曰く、「薬草の研究してたらたまたま良い味が出た。どんな疲れも一発で取れるけど、3日後くらいに取れた分の疲れが一気に押し寄せてくる。だから、使う時は気をつけて。濃く淹れすぎると、あとから来る疲れがもっと重くなるから」とのこと。……元気の前借りってやつですね。怖い。



 ドドリーとカルラ、他の料理人たちからはマカロンの詰め合わせ(軽く20個くらい入ってる気がする)を貰った。

「お返しはマカロンだ!約束してたからな!新しい味を開発したからついでに入れておいたぞ。あぁ、もちろんお前が一番好きなフランボワーズのもたくさん入れてあるから安心してくれ!」とドドリーに言われ、私はもうハッピーだ。……あれ、私この人に嫌われてたんじゃなかったっけ。まぁいいか。



 ディラスには、クローバー形の緑色の石がはめ込まれたヘアピンをもらった。

「姫様と街に行った時に見つけちゃったんだ。ほら、アイリスちゃんの瞳の色みたいじゃない?だからちょうどいいかなと思って買っておいたんだよね」と言われた。……いや待てよ。

「……え、姫様と一緒に街に行ったんですか?わたくし、そんなこと聞いておりませんけれど」

「…………あっ」

 あからさまに目を逸らしたディラスに、私は腹パンを3発お見舞いしておいた。ざまぁみやがれ!



 そしてそして。


「アイリスさん」


 私を呼ぶ、大好きな人――ヴェロールの声が。


「随分嬉しそうですね。なにがあったんですか?」


 ……とても、冷たい。


「き、今日はホワイトデーだったので」

「なるほど。それは良かったですね。私め、生憎と貴女からしか貰っていないんですよ」

「あら、それはお可哀相に。わたくし、たくさんの人にチョコを渡しましたの。ですから、お返しもそれなりの数を貰ったんですよね」


 この視線に負けるもんか!と対抗心を燃やして口論していたが、ヴェロールがスっと目を(すが)めた瞬間、今までの比ではないくらいに空気が冷えた。……が、彼はその空気を霧散させた。


「おっと、いけない。こんなことをしている場合ではありません。早く着替えてください」

「…………え?」

「言ったでしょう。他の方々よりもずっと思い出に残るホワイトデーにする、とね」

「……で、でもわたくし、仕事が」

「姫様に許可を頂きました。それではダメですか?」

「……うぐ」

「さ、着替えてください。メイド服のまま街に出かけては目立って仕方がありませんからね。あぁ、私めもこの神官服のままでは目立ちますね。着替えてきましょうか。思い出に残る今日にして差し上げますから、お楽しみに」


 今までの恐ろしい形相からこの甘い笑みに切り替わると、ギャップがすごすぎて対応しきれない。私の頭はパンク寸前だ。……ヤバい、顔が良い。惚れる。


「なにをボサっとしているんですか。早くしてください。集合場所は……そうですね、城門前にしましょうか。終わったらそこに来てください。ほら、行った行った」


 そう急かされ、私は首を傾げつつも着替えに行った。



 と、自室に帰ってくるなり私は気が付いた。


(ホワイトデーに出かけるってことは、もしかしてもしかするとこれってデートなんじゃ……!?)


 そう思った途端、服が選びにくくなった。

 変に気合いを入れてオシャレ着にするのは何か違うし、かと言って仮にも好きな相手の前に普段着で出るのも、それはそれで違う気がする。


「……あーもう、なんでこんなこと気づいちゃったかなぁ」


 部屋でひとり呟き、私は急いで服選びを再開した。



「お待たせしました」


 結局私が選んだのは、オシャレ着と普段着の間くらい――どちらかと言えばオシャレ着に近い、膝下までのワンピース。

 淡い黄色がベースになっていて、袖口と首元、裾にレースがあしらわれたそれは、いつも通りに高い位置で結い上げた水色の髪によく映えている……と思う。


「いえ、私めもつい今しがた来たところですから。……それにしても、よく似合っていますね、その服。黙っていれば男が何人も寄ってきそうですよ」

「なっ、それって地味に失礼な……」


 失礼なんじゃないかと言おうとしたが、彼の姿に目を奪われてしまい、それは叶わなかった。

 いつもの神官服――金色の刺繍が入った、足首くらいまで隠れそうな白いワンピースのようなものの上に、黄色っぽい外套(がいとう)を羽織っている――を脱ぎ、清楚な白シャツと黒いパンツ、深い緑色の上着を身に纏っている。

 ……死ぬほどイケメン。ヴェロールってこんなにカッコよかったっけ?


「では行きましょうか」

「……あの、」

「はい、なんでしょう」


 せっかく彼も着替えてきてくれたんだ。せめて一言くらいは言っておこう。


「あなたこそ、似合ってるんじゃないですか。いつもみたいな堅苦しさがないので、柔らかく微笑んでいればモテますよ」


 そう言うと、彼は一瞬だけ驚いたように目を開き、「ありがとうございます」と微笑んだ。……そうそれ!イケメンの微笑み!ご馳走様です!



 ともあれ。

 私たちは街に出て、まずお昼ご飯を食べに行くことにした。


「何か食べたいものはありますか?」

「いえ、特には。……あ、マカロン様の香りが……」

「あとで行きましょう。食後に」

「チッ」

「……アイリスさん、今舌打ちしましたよね」

「気のせいじゃないですか?」


 なんて軽口を叩きながら、辿り着いたのは洋食屋だった。


「おっと、私めとしたことが。いつもの店に来てしまいました。ここでもよろしいですか」

「はい。というか、街のことはわたくしよりも詳しいでしょう」

「それもそうですね。さ、入りましょう」


 私は洋食屋でオムライスを食べた。

 手を洗いに行っている間に、いつの間にか会計が終わっていた。イケメンは手際が良いらしい。


「お返しその1、ですからね」


 その時に彼が見せた、イタズラが成功したときの子供のような無邪気な笑みを、私は一生忘れられそうになかった。

 ――途中、店主らしき元気なおばさんに「あらアンタ、ついに女の子連れてきたのね!」と茶化されていたが、私たちは声を揃えて「「違います!」」と否定しておいた。



 それから私たちは街を練り歩き――もちろんマカロン様が売っていた店には立ち寄り、5個くらい買った――気づけば日が沈みかけていた。


「そろそろ帰りましょうか」

「そうですね」


 私たちは城に向け歩き始め――


「あぁそうだ、アイリスさん。少しこちらに来てもらえますか」

「?はい、いいですけ、ど……ひゃあ!」


 ――彼の少し冷たい手と、それ以上に冷たいものが私の首に触れた。


「な、ななな…………!」

「動かないでください」


 抱きしめるように、私の首の後ろに顔を寄せる彼。息が首に、耳の後ろにかかる。


「ああああの、」

「……できましたよ」


 彼は私からすんなり離れ……今まで温もりがあった部分が寂しく、寒く感じてしまう自分がいた。

 と、それよりも。


「これ……」


 淡い水色の石の欠片が散りばめられた、六角形の星をモチーフにしたネックレスが私の首元で輝いていた。


「貴女らしいデザインだったのでね。お気に召しましたか?」

「……はい。すごく好きなデザインです」


 派手すぎず、しかし確かな主張をしているネックレスは、私の好みどストライクのデザインだった。


「ありがとうございます、ヴェロール様」

「いえ、お返しその2ですからお気になさらず」

「……ってことは、その3が?」

「さすがアイリスさん、(さと)いですね。お返しその3は……」


 彼は再び私と距離を縮めると、私の顔に手を滑らせる。顎、頬をスっと撫で、その手は私の唇をなぞり……


「ここはまだ取っておきましょう」


 そう言って彼はさらに手を滑らせ、私の目を覆った。そして、額に柔らかな温もりを感じた。――キス、されたのだ。


「……さ、帰りましょう。あまり遅くては、私めが姫様に怒られてしまいますからね」


 なんでもなかったように離れ、そう言った彼の顔は、いつもよりも心なしか赤く見えた。

 夕日のせいか、それとも――。

 私は熱い頬に手を当て、頬の赤さを隠してくれる夕日に感謝しながら城に帰った。

アイリスが貰ったネックレスのデザインは、必死になってインターネットで探し、気に入ったものを使いました。

詳しく知りたい方は、『ダビデ ネックレス』あるいは『FPS918-W』で調べてみてください。最高にエモいネックレスでした。

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