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姫様を幸せにするために恋愛フラグを回避しまくります!  作者: 夕闇蒼馬
『もっとドキ夢』の世界で奮闘します
37/50

32 私好みのドレス

 アステアの第二王子であるクラウディオと仲良くなってからというもの、クラジオの護衛兼メイド兼クラウディオの手合わせ相手という肩書きになってしまったわけだけれど。


「あー、これからどうしよ」


 クラウディオを毒殺してやる!と息巻いてヴェロールを追い返したところまでは良かった……はずだ。実際毒殺するための準備は整っていたし、実行もした。たがそれが失敗し、毒殺する予定だったターゲットと鍛錬仲間になってしまったのが想定外だっただけで……。

 ということで、私はリエールに帰るための(ヴェロール)を失い、代わりにこの国の権力者との仲を深めたわけだ。


 正直に告白しよう。

 リエールに帰りづらい。


 だってだって、私を迎えに来てくれた人を追い返したくせに敵国の第二王子と仲良く剣で語り合ってるんだよ!?非国民だっていって石投げられちゃうよね!?


「……ってことなんだけど、ルーノとノリアはどう思うよ?」

「うわぁ、急に態度変えたねぇ。まぁいいんだけどさぁ。……で、なんだっけ。リエールに帰りづらいって話だよね。もういっそ帰らずこっちで暮らしたら?今の職場に不満がないんだったらこのまま仕事続けてもいいだろうし」

「あぁ、おれもノリアの言う通りだと思う。帰りたくねぇなら帰らなきゃいいだろ。向こうとかこっちに未練があるなら強くおすすめは出来ないけどな」

「未練、未練ねぇ……」


 思い当たる節がないではない。

 私はまだ(クラウ)と本気でぶつかり合っていない。

 私はまだ姫様毒殺未遂事件を解決できていない。

 私はまだ――(ヴェロール)に想いを伝えていない。


「そんな顔しないでよねぇ、アイリスちゃん。そんなに帰りたくないならぁ、これからずーっとオレっちたちと暮らそうよぉ」

「帰りたくない理由も帰りたい理由もあるから困ってんの。あと私、この際だから言うけどノリアのその話し方ほんっとイライラするんだよね。あと50年くらい黙っててくれない?」

「うっわ辛辣。……あっ、そういえばクラジオ様がアイリスちゃんのこと呼んでたよぉ」

「それ先言ってよ!」

「すまねぇ、おれも言おうと思ってたんだけどな」

「あ、ルーノは全然いいよ、気にしてないから。私はノリアに言ってんの」

「まあまあ、ノリアもお前も落ち着け。ほら、クラジオ様が呼んでたんだ。行ってこい」

「はーい」


 私はクラジオの執務室に向かう。その途中、気まぐれでついてきてくれたノリアとルーノが、私に色々話を振ってくれたおかげで全身の力が抜けた。ここ最近、私はクラジオのことを起こすだけは起こしているけどメイドらしいことや護衛らしいことをしていない。その事についてチクチク言われるんだろうなあ、と考えていたので、いつの間にか全身に力が入っていたらしい。


 コンコン、と執務室の扉をノックすると「入れ」と短く許可が下りたので「失礼します」と一声かけて執務室の扉を開け――る寸前に、ここまでついてきてくれたふたりに笑顔を向けて手を振り、感謝の言葉を口パクで伝えた。ふたりは照れくさそうに笑った。



「急に呼び立ててすまない」


 執務室に入ると、クラジオは執務用の椅子から立ち上がり、部屋の中央にあるテーブルセットに近づいた。


「まぁ、とりあえず座ってくれ。茶はいらない」

「分かりました。それで、わざわざわたくしを呼ぶなんて、なんの御用でしょうか」

「……それが、少し厄介なことになってな。今度王宮主催の舞踏会があるんだが、当然俺も参加しなければいけない。ここまではいいんだが……その、エスコートする女性がいなくてな」

「それでわたくしが呼ばれたのですか?わたくしをエスコートしたいと?」

「話が早くて助かる。……アイリス、お前をエスコートさせてくれないか?」


 そう改めて言われると、なんだか少し照れくさい。全ては無駄に整った顔のせいだ。それに、名前を呼ばれた。その無駄に整った顔で。あぁ、カッコイイ。目の保養にピッタリだ。


「いいですよ。というかそもそも、わたくしに拒否権なんてないのでしょう。わたくしは貴方のメイド兼護衛なんですから。一言命じればいいのです。エスコートさせろ、と」

「……ま、まぁそうなんだけどな。ほら、色々あるんだよ」

「色々……ですか」

「あー、もうこの話はやめだ。で、お前はドレス持ってるのか?」

「……あ、」

「そんなことだろうと思った。……どんなデザインがいい?」

「特に好みはないですね」


 それもそうだ。私の前世にはドレスなんてなかったし、今もメイドだからドレスとは無縁の人生だ。人のドレスを着付けることはあっても、自分のドレスを着付けることも着付けられることもなかった。


「ふむ、それは困った。なら俺が勝手に決めてもいいのか?」

「えぇ、いいですよ。楽しみにしてます」

「……本当に君ってヤツは」

「え、なんですか?」

「いや、なんでもない」


 途端に顔を赤くしたクラジオを不審に思いつつも、ドレスが楽しみになる私であった。



 それから数日後、私の部屋に大きな箱が届いた。開けるとそこにはドレスが入っていた。

 私の髪と瞳――明るい水色の髪を高い位置でひとつに結び、瞳は深い青色だ――によく映える、エメラルドグリーンのドレス。

 精緻なレース飾り、ところどころには金糸で刺繍がしてあり、腰にはシルクのリボンが付いている。

 素人の私が一目見ただけでこれが良いものだと分かるほどに、このドレスは輝いていた。――完全に私好みのドレスだった。


「……なんで私の趣味が分かったんだろ」


 首を傾げるしかないが、しかし私好みのものを貰ったんだ。次会った時に素直に感謝を述べよう。そう心に誓った私だった。

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