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新たな力、そして襲撃?

虚無の回廊(ガレリー)はアボラスの縄張りではあるものの静かだった。普通に航行している分には奴らとここで遭遇することはそう多くは無いらしい。


安定航行に入り最低限の警戒を残し艦内が通常配置へと移った。その時俺に通信が入る。


『アキラ。エクスマキナだ、ヨシダ隊長と私のもとへ来てくれ』

俺はここに居るはずのないエクスマキナからの呼び出しに戸惑う。するとヨシダ隊長がこちらに手招きした。彼について艦内を移動する。


「一体どこへ向かうんですか?」

「お前の部屋だよ。ちょっとばかし曲者の同居人が居るけどな」


その同居人というのは十中八九エクスマキナの事だろう。しかし、どうして俺の部屋に彼が居るのだろうか…。その疑問はすぐに解決される事になった。


ヨシダ隊長に案内された部屋に入るとそこは一見普通の居住空間だった。一部を除いて。


その一部には基地で見た3Dプリンターとミニチュアの人工知能ユニットが存在したのだ。

『ようこそ、と言うべきかな? アキラ。ここが君の部屋であり、そして開発室だ』

開発室? 俺には兵器を開発する能力は無いはずだが...怪訝な顔をしていたのだろう。エクスマキナは続けた。


『君の新たな義肢を開発するのさ。今のその腕では少々戦うには心許ない。君の戦闘データを細かいスパンで入手し、様々な形で界境テクノロジーの形で生み出すには私自身がついてくる他ないだろう?』


なんという行動力のあるAIだ。というかあんた動けたのか。

『私も動けてるんですから! AI自体はそんなに大きくは無いんですよ。求められる能力に応じて大型するんです。基地の統括ともなれば大きなリソースが必要になりますけれどね』


エラの補足にエクスマキナが頷く。

『ここにいる私は君の装備の開発に特化した存在だ。隣にいるアーテジアよりはるかに小さく済んでいる。場合によっては彼女の演算リソースを借りることも出来るしね』

「そういうことか、以前聞いた俺の義肢をここで作るんだな」

そして彼は本題へと入る。

『ここに呼んだのは他でもない、その義肢の事だ。さっそく手足ひとつずつが完成したので引き渡そうと思ってね。その手足ではモンスターとの戦いでは手を焼くだろう』


新しい俺の義肢だそうだ。いったいどんなものだろうか。

「どこにあるんだ?」

俺は周囲を見回したがそれらしいものは見当たらなかった。すると目の前にコンソールが現れた。


『そこに手を置いてくれ』

言われた通りに手を置くと視界に「インストール中」の文字が現れ、「完了」へと変わった。視界の情報に新しく「EXTEND」の項目が追加された。


『これ以降君は好きなときにインストールした義肢を素早く交換することができる。君の持つ複数の手足は君の右手右足があるべき場所に「重なって」存在している』

得意げに説明されるが全く理解できない。

「つまり、どういう事だ?」

『少しだけ、本当に少しだけズレた場所に君の腕があるのだ。異世界では無い、全く同じ振る舞いを影のようにとる言わば亜空間の様な場所にね。それと顕界させている腕とを入れ替えることで義肢の交換を行う。これが界境テクノロジーのひとつだ。君にしか使えない特別な力。そして、君が元の世界に帰るための鍵であると私は考えている』

以外と俺が帰れる手がかりはそばにあったようだ。

「これについての研究が順調に進むことを祈ってるよ」


『任せたまえ。ではまず新しい義肢に換装してみてくれ』

その言葉を聞いたエラが視界の項目を操作する。「EXTEND」の項目から『電撃腕(ボルト)』と『探針脚(ソナー)』が選択されると俺の手足が「切り替わった」。銀の腕が端から青い腕へと変わっていくのだ。不思議な事に腕がなくなるような感触は無かった。


電撃腕(ボルト)は近距離ではスタンガンのように使ったり電撃を放てる。変形させると電磁加速で簡易的なレールガンとして機能する』

エラが腕を変形させると拳が握りこまれ固定され、腕部分から二本の誘導レールが出現した。

『あくまでも一機能で腕として完結させるため弾体をそれほど多くは装填出来ない。注意してくれ』

メインは銃になりそうだな。


『エネルギー管理は任せてください!』

俺の持つ動力炉の関係上、無制限に使うわけにはいかないそうだ。バッファのエネルギーが尽きれば再チャージが必要になる。


『脚は探査系の機能を有している。特殊な音波を発する事で周囲の地形と動体を探知する。エラが視界に反映してくれるだろうから直感的に使いこなせるはずだ』


こうして俺は新たな手足を手に入れた。


義肢の受け渡しが終わると俺の部屋のソファで居眠りをこいていたヨシダ隊長に連れられ、脱出ポッド区画に来ていた。使い方の説明を受けるのだ。レクチャーは順々に進んでいき、終わりに差し掛かろうとしたその時、警報が鳴り響き、アーテジアの焦ったような声がスピーカーから聞こえた。


『対空監視網に接近中の巨大存在を検知!本艦への衝突コースです!!』

直後艦隊が激しく揺れ、俺たちは壁に叩き付けられた。

『船体整合性危険域(レッドゾーン)に低下!ダメージコントロールプロトコルに従いクラスⅢ以下のスタッフは脱出して下さい。()()()()()()()()()()()()!()


「くそっ!一体なんだってんだ!?アキラ、聞いたな?お前はこのまま脱出しろ。幸い目的地には近い脱出ポッドはそこに向けて射出される。エラと協力して現地の基地まで辿り着くんだ。他のスタッフもあとから降りる」

「ハイ!」

俺は無我夢中でポッドに転がり込み、コンソールを操作した。脱出ポッドはアレクサンダー号から飛び出し、最も近かった目的地の世界に引き寄せられる。()()()()()機関部を大きく吹き飛ばされたアレクサンダー号がうつっていた。





『隊長、迫真の演技でしたね』

脱出ポッド区画にアーテジアの楽しげな声が響く。

「お前ほどじゃない」

ヨシダもにやりと笑った。

「エラが上手いことアキラに()()を見せられてるといいが。さぁ、ステルスでアキラにドローンをつけろ。みんなで見守ってやらないとな」


こうしてアキラの最終訓練が始まった。本人の預かり知らぬまま。

ライオンの親は子を崖から突き落とすそうですね

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