『死の祝福』の規則
『運命共同体』にはいくつかの規則がある。
一つ、契りを結んだ者同士は契約を死ぬまで破棄できない。
一つ、契りを結ぶ時は互いの身体の一部を喰らう。
一つ、互いの能力を一時的に交換することが出来る。ただし、その度に、●●●●――――――――。
『死の祝福』を受けた者は、生まれながらにこの規則を知っている。誰に教えられたわけでもなく、能力と共に生涯、記憶から消え去ることは無い。
「ねぇ、マコトくんったら、いつになったら起きてくれるの?」
サクラは、年齢に似合わない色っぽい仕草と口調で彼に語りかける。だが、その姿すら様になってしまう。それほど、彼女は美しいのだ。
「あと、……5分。」
「もう、つれないなぁ。」
サクラはちょっと拗ねた顔した。年相応に可愛らしい表情。マコトはそんなサクラの言動に一切動じず、またスヤスヤと寝始めた。だって、それがサクラの本質ではないと知っているから。
本当のサクラは喜怒哀楽のはっきりした、まだ幼い子供なのだ。同い年の子らと比べても、稚拙である。しかし、本当の自分を隠し、大人っぽい少女を演じている。人々を騙すために…………。
「ねぇねぇ、5分たったよ。起きてよー。」
サクラは暫し、マコトの前だと本質が見え隠れする。
「はいはい。」
マコトは眠い体を起こし、ゆっくりと伸びをした。足元では白猫のクゥが丸くなってくる。彼は猫を恨めしそうに睨んでから、渋々起き上がった。
「マコトくん、今日は町に行こう!」
「なんで……。」
「今日は市の日なの。活気づいた町を見たいわ。」
「どうせ、その町だって、お前が壊すんだろ。」
サクラは不敵な笑みを浮かべた。そして、静かに告げた。
「えぇ、そうよ。」